こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状が少ないまま動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞などの重大な病気につながることがあります。日本では約4,000万人が高血圧と推定されており、健康寿命を延ばすためにも血圧管理は非常に重要な課題です。
高血圧対策と聞くと、「塩分を減らすこと(減塩)」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、近年の研究では「塩分を減らすこと」と同じくらい「カリウムを十分に摂取すること」が重要であることが明らかになっています。
特に果物は、カリウムを手軽に補給できる食品として注目されています。
今回は、最新の研究をもとに、果物と血圧の関係についてわかりやすく解説します。

高血圧の原因は「塩分」だけではない
私たちの体では、ナトリウム(塩分)とカリウムがバランスを取りながら働いています。
ナトリウムには
- 水分を体内に保持する
- 神経や筋肉の働きを維持する
という重要な役割があります。
しかし、摂りすぎると体内の水分量が増え、血液量が増加するため血圧が上昇します。
一方でカリウムには、
- 余分なナトリウムを尿として排泄する
- 血管を広げやすくする
- 血圧を下げる方向へ働く
という作用があります。
つまり、「塩分を減らす」だけではなく、「カリウムを増やす」ことも高血圧予防には欠かせないのです。
日本人はカリウム不足
厚生労働省では
男性:約3,000mg/日
女性:約2,600mg/日
のカリウム摂取を目標としています。
しかし実際には、
男性:約2,493mg
女性:約2,273mg
と、多くの人が不足しています。
その背景には、
- 野菜不足
- 果物不足
があります。
最近注目される「尿ナトリウム/カリウム比」
近年、高血圧研究で注目されている指標があります。
それが尿Na/K比(ナトリウム・カリウム比)です。
これは尿に含まれる
- ナトリウム
- カリウム
の割合を調べることで、普段どのような食生活を送っているかを客観的に評価できる指標です。
Na/K比が高いほど
- 塩分が多い
- 野菜・果物が少ない
食生活である可能性が高くなります。
尿Na/K比が高い人ほど心血管疾患リスクが高い
約1万人を対象とした研究では、尿Na/K比が1上昇するごとに
心血管疾患リスクが24%増加することが報告されました。
さらに、ナトリウム排泄量が増えるほどリスクは上昇し、カリウム排泄量が増えるほどリスクは低下していました。
つまり、「減塩」と「カリウム摂取」を両方行うことが最も重要ということです。
果物が血圧改善に役立つ理由
果物には
- カリウム
- ビタミンC
- ポリフェノール
- 食物繊維
などが豊富です。
特にカリウムは余分なナトリウムを排泄するため、
塩分を完全に減らせなくても血圧改善に役立つ可能性があります。
例えば、
- バナナ
- キウイ
- メロン
- オレンジ
- アボカド
- 桃
- 柿
などはカリウムが豊富です。
また果物には抗酸化作用を持つ成分も含まれ、
血管内皮機能の改善にも役立つことが期待されています。
DASH食でも果物は重要な役割
高血圧改善のため世界中で推奨されている食事法にDASH食があります。
DASH食では
- 野菜
- 果物
- 全粒穀物
- ナッツ
- 豆類
を積極的に摂ることが推奨されています。
この食事法では、尿Na/K比が低くなるほど収縮期血圧も低くなることが確認されています。
果物だけ食べればいいわけではない
もちろん、
果物だけ大量に食べればよいわけではありません。
果糖の摂り過ぎは
- エネルギー過多
- 体重増加
につながる可能性があります。
適量としては1日200g程度が目安です。
例えば
- バナナ1本
- キウイ2個
- みかん2個
- りんご1個
程度になります。
野菜と組み合わせることで、より多くのカリウムを摂取できます。
腎臓病の方は注意
カリウムは健康な人には有益ですが、
慢性腎臓病や透析中の方では排泄能力が低下していることがあります。
その場合、
高カリウム血症を起こす危険があるため、
医師や管理栄養士の指導を受けながら摂取する必要があります。
今日からできる血圧対策
実践しやすい方法として、
- 毎食野菜を1品追加する
- 朝食に果物を取り入れる
- 塩分の多い加工食品を減らす
- 外食時はサラダや果物を追加する
- お菓子ではなく果物を選ぶ
などが挙げられます。
減塩だけを意識すると食事が味気なく感じることがありますが、カリウムを多く含む食品を意識して取り入れることで、無理なく健康的な食生活を続けやすくなります。
まとめ
高血圧予防では「塩分を減らす」ことばかりが注目されがちですが、近年の研究ではカリウムを十分に摂ることも同じくらい重要であることが分かっています。
果物はカリウムを豊富に含み、余分なナトリウムの排泄を促すことで血圧管理をサポートします。また、ビタミンや食物繊維、ポリフェノールなども同時に摂取できるため、循環器疾患の予防にも役立つ可能性があります。
毎日の食事で「減塩」と「果物・野菜を増やす」という2つの習慣を意識することが、将来の健康への大きな投資になるでしょう。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
参考文献
- Ma Y, et al. New England Journal of Medicine. 2022;386:252-263.
- Sacks FM, et al. New England Journal of Medicine. 2001;344:3-10.
- Jackson SL, et al. Circulation. 2018;137:237-246.
- Dyer AR, Elliott P, Shipley M. American Journal of Epidemiology. 1994;139:940-951.
- 牛田悠介. 塩と野菜・果物の摂取バランスの可視化と、それに基づく食事指導の可能性. 化学と生物. 2024;62(9):455-458.
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