こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
スポーツで起こるケガは、筋力不足や柔軟性の低下、フォームの乱れだけが原因だと思われがちです。
しかし近年では、「心理状態」もスポーツ外傷・障害の発生に関わる重要な要素であることが分かってきました。
実際、試合前の強い緊張や日常生活のストレス、不安やイライラなどが、ケガのリスクを高める可能性が報告されています。
今回は最新の文献レビューをもとに、「心理」と「スポーツ障害」の関係について分かりやすく解説します。

スポーツ外傷とスポーツ障害の違い
まず知っておきたいのが、「スポーツ外傷」と「スポーツ障害」は同じではありません。
スポーツ外傷
転倒や接触など、一度の強い外力によって起こるケガです。
例
- 前十字靭帯損傷
- 足関節捻挫
- 骨折
- 肉離れ
スポーツ障害
繰り返される負荷によって少しずつ発生するケガです。
例
- シンスプリント
- テニス肘
- 野球肩
- 疲労骨折
これらをまとめて「スポーツ傷害」と呼びます。
ケガは身体だけで決まるわけではない
スポーツ傷害は、
- 筋力
- 柔軟性
- 年齢
- 技術
だけで決まるわけではありません。
現在広く支持されている「包括的傷害発生モデル」では、
内的要因
- 年齢
- 性別
- 身体能力
- 心理状態
外的要因
- 練習内容
- 用具
- グラウンド環境
- 天候
この2つの要因が重なり合うことで傷害が起こると考えられています。
つまり、身体だけでなく「心の状態」も重要なのです。
ストレスがケガを招く理由
ストレスが強い状態では、
- 集中力の低下
- 判断ミス
- 注意力の低下
- 筋肉の過緊張
が起こりやすくなります。その結果、
- 着地が乱れる
- 相手との接触を避けられない
- フォームが崩れる
などが起こり、ケガにつながる可能性があります。
これは心理学でも長年研究されているテーマです。
ネガティブな感情は傷害リスクを高める可能性
研究では、傷害発生前に
- 不安
- イライラ
- 抑うつ
- 怒り
- 混乱
などの感情が高まっている選手が多いことが報告されています。
また大学生アスリートを対象とした研究では、
- 競技成績へのプレッシャー
- 他者からの期待
- クラブ活動のストレス
がケガの発生と関連していました。
特に大会前やレギュラー争いなど、精神的な負担が大きい時期ほど注意が必要です。
「性格」とケガは関係するの?
昔から
「気が強い人はケガをしやすい」
「真面目な人ほど無理をする」
と言われることがあります。しかし実際の研究結果は一致していません。ある研究では
- 攻撃性が高い
- 刺激を求めやすい
選手ほど受傷しやすいと報告されています。一方で、「性格とケガには関係がない」という研究も数多くあります。
その理由として、
- 競技が異なる
- 対象年齢が違う
- 評価方法が統一されていない
ことが挙げられています。
現時点では、「特定の性格だからケガをしやすい」と断定できる科学的根拠は十分ではありません。
ケガをした後も心理状態は大きく変化する
心理状態はケガの原因になるだけではありません。
受傷後には
- 自信喪失
- 焦り
- 怒り
- 抑うつ
- 無気力
などを経験する選手が多いことも報告されています。
特に復帰時期が見えない場合、「もう元のようにプレーできないのではないか」という不安を抱えるケースも少なくありません。
そのため、リハビリでは身体機能だけでなく、メンタルサポートも重要と考えられています。
ケガ予防にはメンタルケアも重要
ケガ予防というと
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- フォーム改善
ばかり注目されます。
もちろんこれらは非常に重要ですが、さらに
- 睡眠を十分に取る
- 過度なストレスを溜めない
- 不安や悩みを抱え込まない
- リラクゼーションを取り入れる
- チーム内で相談しやすい環境を作る
ことも傷害予防につながる可能性があります。
身体と心は密接につながっているため、どちらか一方だけでは十分とは言えません。
まとめ
スポーツ傷害は身体だけの問題ではなく、心理状態も重要な要因の一つです。
現在の研究では、
- 不安
- 怒り
- 抑うつ
- イライラ
- プレッシャー
などのネガティブな心理状態は、傷害リスクを高める可能性が示されています。
一方で、「性格」と傷害との関係については研究結果が一致しておらず、今後さらなる検証が必要とされています。
ケガを防ぐためには、筋力や柔軟性だけでなく、心のコンディションにも目を向けることが重要です。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
引用文献
- 岡田誠, 中澤史. スポーツ傷害発生と心理的要因についての文献的考察. 法政大学スポーツ研究センター紀要. 2025;43:23-31. DOI
- Andersen MB, Williams JM. A model of stress and athletic injury: prediction and prevention. Journal of Sport and Exercise Psychology. 1988;10(3):294-306.
- Bahr R, Krosshaug T. Understanding injury mechanisms: a key component of preventing injuries in sport. Br J Sports Med. 2005;39:324-329.
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