運動連鎖とは?骨盤の前傾・後傾と身体の動きの関係を徹底解説

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こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。

私たちの身体は、筋肉や関節がそれぞれ独立して動いているわけではありません。

例えば、歩く、走る、しゃがむ、立ち上がるといった日常動作では、足関節・膝関節・股関節・骨盤・脊柱など、複数の関節が互いに影響し合いながら動いています。

このように、身体の各部位が連動して動く仕組みを「運動連鎖(キネティックチェーン)」と呼びます。

特に重要なのが、身体の中心に位置する骨盤の動きです。

骨盤は、上半身と下半身をつなぐ役割を担っており、股関節や腰椎の動きとも密接に関係しています。

今回は、運動連鎖の基本から、骨盤の前傾・後傾、股関節や腰椎との関係まで、トレーニング指導にも役立つ知識を解説していきます。

運動連鎖(キネティックチェーン)とは?

運動連鎖とは、ある関節や身体部位の動きが、隣接する関節や離れた身体部位の動きに影響を与え、全身の動作が連動して生じる仕組みです。

例えば、歩行動作を考えてみましょう。

足が地面に接地すると、足関節や膝関節、股関節がそれぞれ動き、骨盤や体幹も姿勢を保つために調整されます。

反対側の脚が前方へ振り出される際にも、骨盤や体幹の回旋などが関係します。

このように、一つの関節だけで動作が完結するのではなく、複数の関節や筋肉が協調して働くことで、効率的な身体運動が可能になります。

運動連鎖を理解するうえで重要なのが、開放性運動連鎖(OKC)と閉鎖性運動連鎖(CKC)という考え方です。

OKCは、手や足などの身体の末端部分が自由に動く運動です。例えば、椅子に座って行うレッグエクステンションが挙げられます。

一方、CKCは、手や足などの末端部分が床や固定された支持面に接している運動です。スクワットや腕立て伏せなどが代表例です。

OKCとCKCでは、関節の動きや筋肉の活動、身体の安定性に違いが生じる傾向があります。

ただし、OKCだから単関節運動、CKCだから多関節運動と完全に区別できるわけではありません。あくまで末端部分の固定・非固定が基本的な分類のポイントです。

⇩OKC、CKCについて詳しくはこちら
OKCとCKCとは?違いや特徴、トレーニング・リハビリへの活用を徹底解説

骨盤の構造と役割

骨盤は、左右の寛骨、仙骨、尾骨などから構成される骨格です。

上方では腰椎とつながり、下方では股関節を介して大腿骨と連結しています。

つまり、骨盤は上半身と下半身をつなぐ重要な中継地点です。

骨盤には、主に次のような役割があります。

  • 上半身の重量を下肢へ伝える
  • 股関節の土台となる
  • 体幹の安定性に関与する
  • 歩行や走行時の身体の動きを調整する
  • 骨盤内臓器を保護する

また、骨盤は固定された構造ではありません。

股関節や腰椎の動き、姿勢の変化などに応じて、前後・左右・回旋方向へ動きます。

この骨盤の動きを理解することは、スクワットやデッドリフトなどのトレーニング動作を評価するうえでも重要です。

骨盤の前傾と後傾とは?

骨盤の動きの中でも、トレーニング指導でよく話題になるのが前傾と後傾です。

骨盤の前傾

骨盤の前傾とは、骨盤が前方へ傾く動きです。

一般的には、骨盤の前側が下方へ傾き、後側が上方へ動くような状態を指します。

骨盤が前傾すると、腰椎の前弯が大きくなる傾向があります。

この動きには、股関節屈筋群や脊柱起立筋群などが関与します。

ただし、骨盤前傾は必ずしも悪い姿勢ではありません。

例えば、股関節を屈曲させる動作や、身体を前傾させる動作では、骨盤の前傾が自然に生じることがあります。

骨盤の後傾

骨盤の後傾とは、骨盤が後方へ傾く動きです。

一般的には、骨盤の前側が上方へ傾き、後側が下方へ動くような状態を指します。

骨盤が後傾すると、腰椎の前弯が小さくなる傾向があります。

この動きには、腹筋群や大殿筋、ハムストリングスなどが関与します。

例えば、仰向けで腰を床に近づけるように骨盤を動かす運動では、骨盤の後傾が生じます。

こちらも、後傾そのものが悪いわけではありません。

重要なのは、動作の目的や状況に応じて、骨盤を適切にコントロールできることです。

骨盤と腰椎の運動連鎖

骨盤の動きは、腰椎の動きと密接に関係しています。

骨盤と腰椎は仙腸関節や腰仙関節などを介して連結しているため、骨盤の傾きが変化すると、腰椎の配列や動きにも影響が生じます。

一般的に、骨盤が前傾すると腰椎の前弯が増加しやすく、骨盤が後傾すると腰椎の前弯が減少しやすくなります。

ただし、骨盤と腰椎の動きは常に一対一で連動するわけではありません。

個人の身体的特徴や動作の条件によって、腰椎と骨盤の動き方は変わります。

例えば、立位で身体を前方へ倒す動作では、股関節の屈曲と骨盤の前傾、腰椎の屈曲などが組み合わさります。

一方、腰椎の動きを抑えながら股関節を中心に身体を前傾させる動作も可能です。

この違いは、トレーニングでよく使われるヒップヒンジを理解するうえでも重要です。

ヒップヒンジとは?

ヒップヒンジとは、股関節を中心に身体を折りたたむように動かす動作です。

膝関節の過度な屈曲を抑えながら、股関節を屈曲させて上半身を前傾させます。

代表的な運動には、ルーマニアンデッドリフトやグッドモーニングがあります。

ヒップヒンジでは、股関節の動きと骨盤の前傾が関係します。

一方で、腰椎を過度に屈曲・伸展させず、体幹の安定性を保つことも重要です。

つまり、股関節を中心とした動作を行うためには、股関節の可動性だけでなく、骨盤と腰椎を適切にコントロールする能力も必要になります。

骨盤と股関節の運動連鎖

骨盤は股関節と直接つながっているため、骨盤の位置や動きは股関節の運動にも影響します。

例えば、股関節を屈曲させるときには、大腿骨が骨盤に対して動きます。

一方、股関節の可動域が大きくなるにつれて、骨盤の動きも加わる場合があります。

このように、股関節の動きと骨盤の動きは互いに関係しています。

股関節屈曲と骨盤の動き

股関節屈曲とは、大腿骨を体幹に近づける動きです。

例えば、膝を胸に近づける動作や、スクワットでしゃがみ込む動作が該当します。

股関節を深く屈曲させると、身体の構造や個人差によって、骨盤の後傾が加わることがあります。

スクワットの深い位置で骨盤が後傾し、腰椎の屈曲が生じる現象は、一般に「バットウィンク」と呼ばれています。

ただし、バットウィンクが見られることだけで、直ちに腰痛やケガの原因になると判断することはできません。

股関節の形状、可動域、足幅、つま先の向き、スクワットの深さなど、さまざまな要素が関係するためです。

股関節伸展と骨盤の動き

股関節伸展とは、大腿骨を身体の後方へ動かす動きです。

例えば、立位で脚を後ろへ引く動作や、ヒップリフトなどが挙げられます。

股関節伸展では、大殿筋やハムストリングスなどが働きます。

ただし、股関節の伸展可動域が不足している場合、身体は別の部位を動かして不足分を補おうとすることがあります。

例えば、股関節を十分に伸展できない状態で脚を後方へ大きく動かそうとすると、腰椎の伸展が過剰に加わる場合があります。

このような動作では、股関節だけでなく骨盤や腰椎の動きも観察することが大切です。

骨盤の動きは下肢にも影響する

骨盤の動きは、股関節だけでなく、膝関節や足関節などの下肢全体にも関係しています。

例えば、歩行やスクワットでは、足部が床に接地した状態で下肢の各関節が連動します。

足部の動きや下腿の回旋、大腿骨の回旋、股関節の動きなどが互いに影響し、骨盤や体幹の姿勢にも関係します。

ただし、これらの動きは単純に一方向へ連鎖するものではありません。

足部の接地状況、関節の可動域、筋力、動作速度、外部からの負荷などによって、運動連鎖の現れ方は変化します。

例えば、スクワットで膝が内側へ入る動きが見られた場合、股関節周囲の筋力や運動制御、足部の状態、動作の難易度など、複数の要素を確認する必要があります。

膝が内側へ入る原因を、単純に「骨盤の歪み」や「お尻の筋力不足」だけで説明することはできません。

身体の動きは複数の要素が関係しているため、一つの部位だけで判断しないことが重要です。

トレーニング指導で運動連鎖を理解する重要性

運動連鎖を理解すると、トレーニング中の動作をより多角的に評価できるようになります。

例えば、スクワットで十分にしゃがめない場合、単純に筋力不足と判断するのではなく、足関節の背屈可動域、股関節の可動域、骨盤の動き、体幹の安定性などを確認することができます。

また、デッドリフトで腰椎の動きが大きくなっている場合には、股関節の可動性やヒップヒンジの習得状況、負荷設定などを確認する必要があります。

大切なのは、見た目の姿勢だけで良し悪しを決めないことです。

同じ動作でも、身体の構造や柔軟性、筋力、運動経験によって適切な動き方は異なります。

そのため、トレーニング指導では次のような視点が重要になります。

  • どの関節が動いているのか
  • どの関節の動きが制限されているのか
  • 骨盤と腰椎がどのように連動しているのか
  • 動作中に身体の安定性を保てているか
  • 負荷や動作範囲が適切か
  • 痛みや違和感が生じていないか

これらを総合的に評価することで、より適切な運動指導につなげることができます。

まとめ|骨盤の動きと運動連鎖を理解しよう

運動連鎖とは、身体の各関節や筋肉が互いに影響し合いながら動く仕組みです。

骨盤は上半身と下半身をつなぐ重要な部位であり、腰椎や股関節、下肢の動きと密接に関係しています。

骨盤の前傾・後傾は、姿勢や動作に応じて自然に生じる動きであり、どちらか一方が常に良い、あるいは悪いというものではありません。

また、スクワットやデッドリフトなどのトレーニングでは、股関節・骨盤・腰椎の協調した動きが重要になります。

身体の一部分だけを見るのではなく、全身のつながりを考えることが、運動指導の質を高めるうえで大切です。

ぜひ、日々のトレーニングでも、筋肉の働きだけでなく、関節や骨盤の動きにも注目してみてください。

参考文献

1.運動連鎖(キネティックチェーン)の基本

Karandikar N, Vargas OO. (2011). Kinetic chains: a review of the concept and its clinical applications. PM&R. 3(8):739–745.

PubMedで論文を読む

運動連鎖の概念と、リハビリテーションにおける臨床応用を解説したレビュー論文です。記事前半の運動連鎖の説明に適しています。

2.股関節屈曲と骨盤後傾の連動

Bohannon RW, Bass A. (2017). Research describing pelvifemoral rhythm: a systematic review. Journal of Physical Therapy Science. 29(11):2039–2043.

PubMedで論文を読む

股関節屈曲に伴って骨盤が後傾する「骨盤大腿リズム(Pelvifemoral rhythm)」についてまとめたシステマティックレビューです。

9つの研究を検討し、股関節屈曲時には骨盤の後傾も生じ、その寄与は股関節屈曲全体の13.1〜37.5%と報告されています。今回の記事の股関節と骨盤の関係を説明するうえで、特に重要な文献です。

3.腰椎と骨盤の協調運動

Vazirian M, Van Dillen LR, Bazrgari B. (2016). Lumbopelvic rhythm in the sagittal plane: A review of the effects of participants and task characteristics. International Musculoskeletal Medicine. 38(2):51–58.

PubMedで論文を読む

体幹を前屈・伸展させる際の腰椎と骨盤の協調運動について検討したレビュー論文です。

年齢、性別、腰痛の有無、動作速度、外部負荷、筋疲労などによって運動パターンが変化することを示しています。

4.スクワットと骨盤後傾(バットウィンク)

(2021). Hip Flexion Angles During Supine Range of Motion and Bodyweight Squats.

PubMedで論文を読む

スクワット中に骨盤後傾が生じるタイミングと股関節屈曲角度などを調べた研究です。

28名を対象とした研究であり、スクワットの深さや足部の条件によって動作が変化することを考えるうえで参考になります。

5.スクワット動作における股関節可動域と腰椎の関係

(2022). The influence of hip flexion mobility and lumbar spine extensor strength on lumbar spine flexion during a squat lift.

PubMedで論文を読む

股関節屈曲の可動域や腰部伸筋群の筋力と、スクワット動作中の腰椎屈曲との関係を調べた研究です。

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著者
トレーナー育成講師

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・Core&Calm(コアカーム)パーソナルジム経営
・パーソナルトレーナー
・リラクゼーションセラピスト
・トレーナー養成スクール講師
・トレーナーアカデミー講師
(年間500回以上の講義)
・転職キャリアアドバイザー

実績
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