こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
運動をしていると、次第に筋肉の力が弱まってくる感覚を覚えることはありませんか?
この「筋力の低下=疲労」の原因のひとつが、体内でのエネルギー物質の変化によるものです。
特に注目すべきは、「ADP(アデノシン二リン酸)」と「無機リン酸(Pi)」の蓄積。
今回は、それらの背景にあるATP(エネルギー)とクレアチンリン酸の関係について、分かりやすく解説していきます。

■ ATPは“貯めておけない”エネルギー
ATP(アデノシン三リン酸)は、運動時の筋収縮に必要不可欠なエネルギー源です。
しかし、実は筋肉内に貯蔵できる量は非常に少ないのです。
具体的には、筋肉1kgあたり10mmol程度しか存在しません。
にもかかわらず、激しい運動時には大量に必要になる。
つまり、ATPは貯めておくものではなく「作りながら使うもの」なのです。
■ すぐにエネルギーを作れるクレアチンリン酸
ここで登場するのが、「クレアチンリン酸(PCr)」というエネルギー源。
・筋肉内には、ATPの約4倍(約40mmol/kg)の量が存在
・ATPが足りないとき、すぐにATPを再合成できる
・クレアチンリン酸 + ADP → ATP + クレアチン
この反応により、運動開始直後など瞬発的なエネルギー供給が可能になります。
■ クレアチンリン酸は“酸素を貯めた形”?
クレアチンリン酸は、どのように作られているのでしょうか?
流れはこうです:
- ミトコンドリアでATPが作られる
- そのATPを使ってクレアチンリン酸が生成される
- クレアチンリン酸として筋肉内に貯蔵
つまり、
酸素 → ATP → クレアチンリン酸
という形で、酸素や栄養を“間接的に”蓄えているとも言えるのです。
■ クレアチンリン酸は酸素がなくても使える
重要なのは、クレアチンリン酸からATPを再合成するときに酸素がいらないということ。
これにより、私たちは
・ダッシュ
・ウェイトリフティング
・ジャンプ
など、無酸素的な高強度運動を瞬時に行うことができるのです。
■ 疲労のメカニズムと無機リン酸
運動を続けると、以下のような流れで疲労感が生まれます。
- 高強度運動でクレアチンリン酸が枯渇
- ATPの再合成が追いつかなくなる
- ADPと無機リン酸(Pi)が蓄積
- 筋収縮がスムーズにいかなくなり、力が出にくくなる=疲労
この「無機リン酸の蓄積」が、筋力の低下や動作の鈍りに関係しているのです。
■ まとめ:クレアチンリン酸は「即効型バッテリー」
・ATPはすぐ使えるが、貯蔵量が少ない
・クレアチンリン酸はその補助バッテリー
・酸素がなくてもATPを生み出せる
・クレアチンリン酸が枯渇し、無機リン酸がたまると筋疲労が起こる
だからこそ、高強度運動時のパフォーマンス維持には、クレアチンリン酸の再合成や効率的な使用が鍵になります。
トレーニングやリカバリー戦略においても、このエネルギーの流れを知っておくことは非常に有効ですよ。
※本記事は、健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断・治療を目的としたものではありません。
症状や体調に不安がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。
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