こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
沈黙の臓器「腎臓」が壊れる前に知っておくべきこと
腎臓病は“自覚症状がないまま進行する”ことから、「沈黙の臓器の病気」と呼ばれています。
現在、日本国内で慢性腎臓病(CKD)患者は1300万人以上。これは成人のおよそ8人に1人が腎臓の機能低下を抱えている計算です。
腎臓は単に尿を作るだけの器官ではありません。血圧調整、体液のバランス、老廃物の排泄、ホルモン分泌など、私たちの生命維持に欠かせない“マルチな臓器”なのです。
本記事では、腎臓の働き・壊れるメカニズム・腎臓に優しい食生活や栄養素について、専門的かつ一般の方にも分かりやすく解説していきます。

腎臓の基本的な構造と位置
腎臓(kidney)は左右1対の臓器で、腰のやや上、背中側に位置しています。大きさは握りこぶし程度で、1つ約120〜150gほどの重さです。
主な構造:
腎皮質・腎髄質:尿を生成する部分(ネフロンが多数存在)
腎盂(じんう):作られた尿が集まる場所
尿管:腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管
腎臓の内部には、ネフロン(糸球体+尿細管)という微細な構造が100万個以上あり、ここで血液をろ過して尿がつくられます。
腎臓の5つの主要な役割
① 血液のろ過と老廃物の排泄
腎臓の最大の機能は「血液をろ過し、体内の老廃物や毒素を尿として排泄する」こと。
1日で約150Lの血液をろ過し、1.5L程度の尿を生成します。
排泄される主な物質:
・尿素窒素(BUN)
・クレアチニン
・尿酸
・カリウム、ナトリウムなどの電解質
② 体内の水分・電解質バランスを調整
腎臓はナトリウム・カリウム・カルシウム・リンなどの電解質濃度を調整することで、細胞の正常な働きを支えています。水分過多や脱水にも即座に反応し、尿量を調整します。
③ 血圧の調整
腎臓はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)というホルモン系を介して、血圧のコントロールにも深く関与しています。腎機能が低下すると、高血圧の原因にもなり得ます。
④ 赤血球の産生を促すホルモン(エリスロポエチン)分泌
腎臓は、骨髄に赤血球を作るよう促すエリスロポエチン(EPO)を分泌します。腎臓病が進行すると、このホルモンが減り、腎性貧血が起こることがあります。
⑤ ビタミンDの活性化(カルシウム代謝調整)
腎臓は、肝臓で作られたビタミンDを活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD)に変換します。これにより、カルシウムの吸収が促され、骨の健康維持に寄与します。
腎機能が低下すると何が起こるか?
腎臓は70〜80%の機能が失われるまで自覚症状が出にくいため、気づいたときにはすでに末期腎不全…というケースも。
代表的な症状:
・浮腫(むくみ)
・尿量の減少、泡立ち
・倦怠感、貧血
・高血圧
・骨の脆弱化(カルシウム代謝異常)
・かゆみ、吐き気、尿毒症症状
腎不全が進行すると
最終的には、透析(人工的に血液をろ過)や腎移植が必要になります。だからこそ、早期からの生活習慣改善と栄養管理が鍵になります。
腎臓を守るための栄養・食事のポイント
腎臓を酷使しないためには、食事の内容が非常に重要です。
① 過剰なタンパク質を避ける
タンパク質の代謝産物(尿素窒素など)は腎臓で排泄されるため、過剰な摂取は腎臓に負担がかかります。
ただし、制限しすぎると筋肉量が減りすぎるため、「適量+質の良いタンパク質」が理想です。
・腎機能正常:体重1kgあたり1.0〜1.2g/日
・腎機能低下:体重1kgあたり0.6〜0.8g/日(医師指導下)
② 塩分(ナトリウム)の摂取制限
塩分過多は血圧を上げ、腎臓の血管を傷つける要因となります。
目安:1日6g未満(高血圧予防ならさらに減塩)
加工食品・外食・汁物の「隠れ塩分」にも注意。
③ カリウムとリンの調整
腎機能が低下すると、カリウムやリンが体外に排出されにくくなり、高カリウム血症や骨疾患を招きます。
カリウムが高い食品:バナナ、ほうれん草、アボカド、芋類
リンが高い食品:加工肉、インスタント食品、炭酸飲料
※腎機能に応じて、制限の必要性が変わります(医師・管理栄養士の指導が必要)
④ 良質な脂質の摂取
腎臓の血管を守るためには、オメガ3脂肪酸(青魚や亜麻仁油)など抗炎症性の脂質の摂取が効果的。中性脂肪やLDLコレステロールを下げる効果もあります。
腎臓に優しい生活習慣5選
腎臓を守るためには、食事とともに生活全体を見直す必要があります。
① 定期的な健康診断(尿検査・血液検査)
尿タンパク・血清クレアチニン・eGFRを定期的にチェック
高血圧・糖尿病のある方はとくに重要
② 血圧と血糖値のコントロール
高血圧・高血糖は腎機能の大敵
薬物治療とあわせて食事・運動療法が必須
③ 適度な運動
有酸素運動は血流を改善し、腎臓のろ過効率アップ
週150分を目安にウォーキングや自転車を
④ 水分摂取のバランス
適度な水分補給(1.5〜2L/日)で尿量を確保
ただし、心不全や腎不全末期では制限が必要
⑤ 禁煙・節酒
タバコは腎臓の毛細血管を破壊する
アルコールは脱水や高血圧を招くため適量を守る
まとめ:腎臓をいたわる習慣が未来の健康を守る
腎臓は、私たちが思っている以上に“多機能で重要な臓器”です。
壊れてからでは取り返しがつかないからこそ、今からできる食事・運動・生活習慣の見直しが大切です。
特に、高血圧・糖尿病・肥満・喫煙歴のある方は要注意。小さな積み重ねが、将来の透析リスクを大きく減らしてくれます。
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