〜妊娠期だけじゃない、全世代に重要なビタミンB群~
こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
「葉酸は妊娠中に必要な栄養素」
多くの人が、葉酸に対してこのようなイメージを持っているかもしれません。
確かに、葉酸は妊娠初期における胎児の発育、とくに神経管形成に関わる重要な栄養素として知られています。しかし、葉酸の役割はそれだけにとどまりません。実際には、私たちの体の中で毎日繰り返されている“細胞の生まれ変わり”を根本から支える栄養素であり、年齢や性別を問わず必要とされています。
赤血球の形成、DNAの合成、アミノ酸代謝、さらには心血管系の健康にまで関与する葉酸は、まさに「生命活動の土台」を担う存在です。それにもかかわらず、野菜摂取量の減少や食生活の変化によって、知らないうちに不足しているケースも少なくありません。
一方で、サプリメントの普及により「とりあえず飲んでおけば良い」「多く摂るほど健康に良い」といった誤解も広がっています。葉酸は水溶性ビタミンであるものの、摂り方を間違えるとリスクが指摘される栄養素でもあります。
本記事では、葉酸について
- 体内での働き
- 不足すると何が起こるのか
- 食事からの摂取方法
- サプリメントとの正しい付き合い方
を、科学的根拠に基づきながら、専門知識がない方にも理解できるよう丁寧に解説していきます。
「妊娠期のための栄養素」という枠を超えて、葉酸を“一生付き合う基礎栄養素”として正しく理解することが、健康への第一歩になるはずです。

葉酸とは何か?基本をわかりやすく解説
葉酸(ようさん)は、ビタミンB群の一種で、正式にはビタミンB9と呼ばれます。水溶性ビタミンに分類され、体内に大量に蓄えることができないため、日々の食事から継続的に摂取する必要がある栄養素です。
葉酸という名前は、ラテン語で「葉」を意味する folium に由来しており、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれることから名付けられました。
近年では「妊娠期に重要な栄養素」というイメージが強いですが、実際には細胞分裂・DNA合成・赤血球の形成などに関わり、子どもから高齢者まで幅広い世代に重要な栄養素です。
葉酸の主な働き|なぜ体に必要なのか?
① DNA合成と細胞分裂を支える
葉酸は、体内で核酸(DNA・RNA)の合成に関与します。これは、細胞が新しく生まれ変わる際に不可欠なプロセスです。
特に影響を受けやすいのが、
- 骨髄で作られる赤血球
- 腸粘膜の細胞
- 胎児の細胞
など、分裂・増殖が活発な細胞です。
葉酸が不足すると、細胞分裂がうまく進まず、後述する巨赤芽球性貧血などの問題につながる可能性があります。
② 赤血球の形成を助ける
葉酸は、ビタミンB12と協力して正常な赤血球の形成をサポートします。
不足すると、赤血球が成熟できずに大きくなってしまい、酸素を十分に運べない状態になります。これが巨赤芽球性貧血です。
症状としては、
- 倦怠感
- 動悸
- 息切れ
- 集中力の低下
などが見られることがあります。
③ ホモシステイン代謝と心血管リスク
葉酸は、アミノ酸の一種であるホモシステインの代謝にも関与します。ホモシステインは血中濃度が高くなると、動脈硬化や心血管疾患のリスクと関連すると報告されています。
葉酸・ビタミンB6・B12が不足すると、この代謝が滞り、ホモシステインが蓄積しやすくなります。
妊娠と葉酸|なぜ重要視されるのか?
葉酸が特に注目される理由の一つが、妊娠初期における胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減です。
神経管は、将来の脳や脊髄になる重要な組織で、妊娠4週前後という非常に早い段階で形成されます。そのため、
- 妊娠に気づく前
- 妊娠を計画している段階
からの葉酸摂取が重要とされています。
日本や海外の多くの公的機関では、妊娠を希望する女性に対して葉酸摂取を推奨しています。
葉酸が不足するとどうなる?
葉酸不足によって起こり得る影響には、以下のようなものがあります。
- 巨赤芽球性貧血
- 口内炎・舌炎
- 食欲不振
- 疲労感
- 胎児の神経管閉鎖障害リスク増加(妊娠期)
特に、以下の人は不足しやすいとされています。
- 野菜摂取が少ない人
- アルコール摂取量が多い人
- 高齢者
- 妊娠・授乳期の女性
- 吸収障害を伴う消化管疾患がある人
葉酸を多く含む食品
天然葉酸(ポリグルタミン酸型)を含む食品
- ほうれん草
- ブロッコリー
- アスパラガス
- 枝豆
- レンズ豆
- アボカド
- 春菊
ただし、葉酸は熱に弱く水に溶けやすいという特徴があります。茹で調理では損失が大きくなるため、
- 蒸す
- 電子レンジ調理
- スープごと摂取
などがおすすめです。
サプリメントの葉酸は必要?
サプリメントに含まれる葉酸は、合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)と呼ばれ、食品中の葉酸よりも吸収率が高いとされています。
そのため、
- 妊娠を希望している
- 食事量が少ない
- 明らかに不足リスクが高い
場合には、医師や専門家の指導のもとで活用されることがあります。
一方で、過剰摂取には注意が必要です。
葉酸の過剰摂取リスク
葉酸は水溶性ビタミンですが、サプリメントによる長期的な過剰摂取には注意が必要とされています。
特に問題となるのが、
- ビタミンB12欠乏症の診断を遅らせる可能性
- 一部で報告されている神経症状のマスキング
日本では、サプリメントなどからの摂取について**耐容上限量(UL)**が設定されています。
葉酸は「食事+状況に応じた補助」が基本
葉酸は、
- 基本は食事から
- 不足リスクが高い場合にサプリを補助的に
という考え方が現実的です。
「多ければ多いほど良い」栄養素ではなく、バランスが重要であり、他のビタミンB群やタンパク質との相互作用も無視できません。
まとめ|葉酸を正しく理解し、日常に活かす
- 葉酸はDNA合成・細胞分裂に不可欠な栄養素
- 妊娠期だけでなく、全年代に重要
- 不足すると貧血や体調不良の原因になる
- 食事からの摂取を基本に、必要に応じて補助
- サプリの過剰摂取には注意が必要
葉酸を「妊婦さんだけの栄養素」と捉えるのではなく、日々の健康を支える基礎栄養素の一つとして理解することが大切です。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
参考文献・引用論文
- Bailey LB. Folate in Health and Disease. CRC Press.
- World Health Organization. Guideline: Optimal serum and red blood cell folate concentrations.
- NIH Office of Dietary Supplements. Folate Fact Sheet for Health Professionals.
- EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies. Tolerable upper intake level for folic acid.
- Molloy AM et al. Folate and neural tube defects. Am J Clin Nutr.


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