羽状筋と紡錘状筋の違いを構造から徹底解説

解剖学
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こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。

~筋力と筋線維の関係性を正しく理解しよう~

「筋力=筋線維の発揮している力」…実は、これは完全には正しくありません。

筋力とは、個々の筋線維が発揮した力の合計が“張力”となり、腱を介して骨に伝わり、関節まわりで生じるトルク(回転力)のことを指します。

つまり、筋線維そのものの力だけではなく、それがどうやって骨に伝わるかという“構造”も重要なのです。

筋収縮力に影響する要因

筋力(=トルクの量)には、次のような構造的要素が関わっています。

・筋線維の断面積

・筋線維の長さ

・羽状角

モーメントアーム(てこの支点と作用点との距離)

ここで特に注目したいのが、「筋断面積の種類」です。

解剖学的断面積(ACSA)と生理学的断面積(PCSA)

筋肉の断面積には、以下の2つがあります。

① ACSA(解剖学的断面積)
筋肉の長軸方向に対して直角に切った断面。

② PCSA(生理学的断面積)
筋線維に垂直に切った断面。

この違いが、筋肉の構造によって大きく影響してきます。

紡錘状筋(平行筋)と羽状筋の違い

紡錘状筋(平行筋)

筋肉の走行と筋線維の走行が同じ。
👉 ACSA=PCSA

羽状筋

筋肉の走行と筋線維の走行が異なる(斜め)。
👉 ACSAよりもPCSAのほうが大きくなる

筋力は、筋線維に垂直な断面積(PCSA)に比例すると言われています。

つまり、羽状筋は紡錘状筋よりも高い筋収縮力を発揮できる構造なのです。

※羽状角の増加によって最大張力が増すのは、角度が約45°までとされています。

筋収縮速度に影響する要素

筋収縮速度には、筋線維の長さが関わっています。

・筋線維が長い筋肉ほど、収縮速度が速い

・筋線維が短い筋肉ほど、収縮速度は遅い

これは、以下のような筋肉構造の違いに現れます。

・紡錘状筋(平行筋)

筋肉の長さと筋線維の長さがほぼ同じ。
👉 収縮速度に優れ、可動域も広い

・羽状筋

筋線維は筋肉全体より短くなる。
👉 高い力を出せるが、収縮速度は遅く、可動域も狭い

代表的な筋肉の特徴

下半身でPCSAが最大:ヒラメ筋

強い力を出すが、動作スピードは遅く、可動域も狭い。

下半身で筋線維が長い:縫工筋

速い動作に対応しやすく、広い可動域でも力を出せる。

上半身でPCSAが大きい:上腕三頭筋

高い筋力を発揮。

上半身で筋線維が長い:上腕二頭筋

素早い動作や広い可動域に対応。

筋線維の長さは可動域にも影響する

筋収縮速度だけでなく、関節角度と筋力の関係にも、筋線維の長さは影響します。

筋線維が長い筋肉
👉 広い可動域で力を発揮できる

筋線維が短い筋肉
👉 筋力を発揮できる範囲が狭くなる

例えば、ヒラメ筋や大腿四頭筋は収縮力は高いですが、スピードや可動域に制限があります。

一方、半腱様筋などの平行筋は、力はそれほどでもありませんが、速く・大きく動く場面で活躍してくれる筋肉です。

まとめ

・筋力とは、筋線維の合力が腱を介して骨に伝わるトルクである

・筋断面積は「ACSA」よりも「PCSA」が筋力に影響

・羽状筋は高い収縮力、平行筋は速い収縮速度と広い可動域に優れる

・用途に応じて、筋肉の構造的特徴を理解することが大切

筋トレを効果的に行うためにも、筋肉の「形」に注目してみると、より深いトレーニングができるはずです。

※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。

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著者
トレーナー育成講師

運動 × 栄養 × 体づくりの専門家
ブログ記事200本以上を執筆し、
正しい知識をわかりやすく発信中。

保有資格
・NESTA-PFT
・NSCA-CPT

経歴・活動
・パーソナルトレーナー
・リラクゼーションセラピスト
・トレーナー養成スクール講師
・トレーナーアカデミー講師
(年間500回以上の講義)
・転職キャリアアドバイザー

実績
・トレーナー300名以上育成
・SNS総フォロワー数 20,000人以上
・新R25に掲載実績あり
https://r25.jp/articles/928885030159646720

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コメント

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