肩関節の動きに筋肉はどう貢献している?トルク寄与率から見る筋の働き
こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。
筋肉が関節を動かすとき、「どの筋肉がどれだけ頑張っているのか?」って気になりませんか?
今回は、肩関節の屈曲・伸展・外転・内転において、各筋肉がどれくらいその動きに貢献しているかを「トルク寄与率」という視点から解説していきます。

◆ トルク寄与率とは?
関節を動かす力(関節トルク)は、筋肉が発揮する「張力」と「モーメントアーム(力点までの距離)」の掛け算で決まります。
さらに、筋肉の張力は生理学的断面積(PCSA)に比例します。つまり、
各筋肉の貢献度 = PCSA × モーメントアーム
この値をもとに、関節を動かす力(トルク)全体のうち、どの筋肉が何%の力を出しているかを「トルク寄与率」として算出しています。
※注意:ここでは、すべての筋肉が最大収縮している前提で、関節角度による張力の変化(筋長-張力関係)は考慮していません。
◆ 肩関節【屈曲】時のトルク寄与率
▶ 下垂位(腕が下にある状態)
この姿勢では、棘上筋と肩甲下筋のモーメントアームが大きいです。
しかし、肩甲下筋はPCSA(筋量)が大きいため、実際の貢献度は以下のようになります。
【トルク寄与率】
肩甲下筋 48%
棘上筋 30%
三角筋前部線維 7%
📝 肩甲下筋と棘上筋が、腕を上げ始める初動で特に重要ということです。
▶ 90°屈曲位(腕が水平の状態)
この位置になると、三角筋と大胸筋のモーメントアームが増加し、以下のように貢献筋が変わります。
【トルク寄与率】
三角筋(前部・中部) 47%
大胸筋(上部・中部) 37%
棘上筋 8%
肩甲下筋 2%
📝 肩を水平まで上げる動きでは、三角筋と大胸筋が主役に交代します。
◆ 肩関節【伸展】時のトルク寄与率
▶ 下垂位
この姿勢では、大円筋と三角筋後部線維のモーメントアームが大きいですが、大円筋のPCSAは小さめ。
【トルク寄与率】
三角筋後部線維 34%
広背筋 28%
大円筋 20%
📝 三角筋後部と広背筋が背中側から伸展を支えています。
▶ 90°屈曲位(腕が前にある状態)
この角度では、大円筋のモーメントアームが増加し、主役に。
【トルク寄与率】
大円筋 30%
三角筋後部線維 28%
広背筋 24%
📝 肩を引く動作では、大円筋の役割が大きくなるのが特徴です。
◆ 肩関節【外転】時のトルク寄与率
▶ 下垂位
この位置では棘上筋のモーメントアームが最大ですが、三角筋中部線維のPCSAが大きいため、全体としては以下の通り。
【トルク寄与率】
三角筋中部線維・前部線維合計 42%
棘上筋 36%
📝 三角筋と棘上筋のコンビが重要です。
▶ 90°外転位(腕を真横に広げた状態)
この角度では、棘上筋のモーメントアームが小さくなり、三角筋が主役に。
【トルク寄与率】
三角筋 72%
棘上筋 8%
📝 三角筋のパワーが際立つポジションです。
◆ 肩関節【内転】時のトルク寄与率
▶ 下垂位
【トルク寄与率】
大胸筋 48%
広背筋 27%
📝 胸筋と背筋が連携して腕を内側に引く力を作っています。
▶ 90°外転位(腕が横に開いた状態)
この位置では、広背筋のモーメントアームが増加します。
【トルク寄与率】
広背筋 40%
大胸筋 30%
📝 腕を横から引き下げる動きでは、広背筋がより活躍します。
◆ まとめ:角度によって主働筋は変わる!
肩関節では、同じ「屈曲」「伸展」でも角度によって活躍する筋肉が大きく変わります。
これは、
モーメントアーム(力のかかり方)が変わる
筋肉の構造(PCSA)がそれぞれ異なる
といった要因によるものです。
筋トレやリハビリ、パフォーマンス改善においても、
「どの角度で、どの筋肉に効かせたいか?」を理解しておくことが重要
です。