腱のバネの力とSSC(ストレッチショートニングサイクル)とは?

解剖学
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こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。

「ジャンプするときに反動をつけた方が高く跳べる」
そんな経験、誰しもありますよね。

この「反動」の正体には、腱(けん)のバネのような働きと、筋肉と神経の高度な連携が関係しています。
その代表的な仕組みが「SSC(ストレッチショートニングサイクル)」です。

今回は、そのメカニズムをわかりやすく解説していきます。

筋肉が力を発揮する仕組み

筋肉が力を出すときには、いくつかの要素が関わっています。

収縮要素:筋肉自体が縮む力を発揮する部分

直列弾性要素:腱など、筋肉と骨をつなぎながら引っ張られることでバネのように力を蓄える部分

並列弾性要素:筋膜や結合組織など、筋肉と並行して存在し、筋肉全体の弾力性を生むもの

特に、腱には筋肉のように自ら収縮する力はありませんが、伸ばされることで弾力を蓄える“バネ”としての役割があります。

腱の弾性エネルギーとは?

腱は、筋肉が縮む力を骨に伝える役割を持っています。
同時に、ジャンプや歩行などの動作では、腱自体が一時的に伸ばされてエネルギーを蓄えることがあります。

これは、ゴムを引っ張ったときにエネルギーが蓄えられ、その後離すと一気に縮むようなイメージです。

腱が伸ばされて「弾性エネルギー」が蓄えられ、その反動で一気に力を出せるのです。

SSC(ストレッチショートニングサイクル)とは?

SSC(Stretch-Shortening Cycle:伸張ー短縮サイクル)とは、
筋肉と腱が連動して、瞬間的に大きな力を出すメカニズムのことです。

たとえばジャンプ動作。

▶️ しゃがむ(伸張性収縮)
ジャンプ前にしゃがみ込むと、大腿四頭筋などの筋肉が伸ばされながらも力を出して体を支えます。

▶️ 腱が伸びる(弾性エネルギーの蓄積)
筋肉が伸びている間に腱も一緒に引き伸ばされ、バネのようにエネルギーをため込むのです。

▶️ ジャンプ(短縮性収縮+エネルギー解放)
しゃがみから一気にジャンプする時、筋肉の縮む力に加えて、腱が縮む反動エネルギーも加わり、より大きな力を発揮できます。

SSCの力を生み出す4つの要素

SSCで瞬間的に強い力を出すためには、以下の4つの要素が関わっています。

① 伸張反射(しんちょうはんしゃ)

筋肉が急に伸ばされたとき、「筋紡錘(きんぼうすい)」というセンサーが伸びる速さと長さを感知します。

その情報が神経を通じて脊髄へ伝わり、すぐに筋肉が縮もうと反応します。
これが「伸張反射」で、筋肉の守備反応のようなもの。

反応の速さと強さは、伸ばされるスピードに比例して高くなります。
「急に伸ばされたら、すぐに縮む」仕組みが、SSCでの力発揮を助けています。

② 弾性エネルギー(腱のバネの力)

腱はバネのように引き伸ばされ、弾力を蓄える能力があります。
筋肉が強く収縮すると、腱が伸ばされてその中にエネルギーが蓄積されます。

その後、腱が元に戻る(縮む)ときに、そのエネルギーが解放され、筋力と合わさって大きな力を生み出します。

③ 予備緊張(よびきんちょう)

動き出す直前に、筋肉がわずかに緊張状態になっていることがあります。これを「予備緊張」といいます。

この状態だと、筋肉の伸びすぎを防ぎつつ、すぐに最大の力を出せるようになります。
経験豊富なアスリートなどは、無意識のうちにこの予備緊張を使いこなしていると考えられています。

④ ゴルジ腱反射(けんの守り機能)

腱の中には、「ゴルジ腱器官」というセンサーもあります。これは、腱が引っ張られる強さを感じ取って、筋肉に力を抜くように指示を出します。

これを「ゴルジ腱反射」といい、腱の損傷を防ぐブレーキのような機能です。

例えばジャンプの着地で「膝がガクッと抜ける」ような現象は、ゴルジ腱反射が急に働いて筋力が抑えられるためです。

しかし、SSCではこの反射が強く働きすぎないように、脳や神経がうまく調整しています。
だからこそ、伸びた勢いを生かしてすぐに強く動くことができるのです。

SSCを活用したトレーニング:プライオメトリクス

SSCの力を活用して、瞬発力やパワーを高めるトレーニングが「プライオメトリクストレーニング」です。

たとえば、

ジャンプスクワット

ボックスジャンプ

ホップ系のドリル など

こうした動作では、筋肉と腱の連携を最大限に引き出し、「跳ねる力」「走る力」「止まる力」を高めることができます。

まとめ:反動の力には理由がある!

反動を使った動きが強くなるのは、単なる「勢い」ではなく、

・腱のバネのような力(弾性エネルギー)

・筋肉のセンサーによる伸張反射

・脳と神経の制御によるタイミング調整

これらが連携して働く、「ストレッチショートニングサイクル(SSC)」という仕組みがあるからなのです。

運動やトレーニングにおいて、効率よく力を出すためには、このメカニズムを知っておくことがとても重要です。

パフォーマンス向上にも、ケガ予防にも役立つ知識。
ぜひ意識してみてください!

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著者
トレーナー育成講師

運動 × 栄養 × 体づくりの専門家
ブログ記事200本以上を執筆し、
正しい知識をわかりやすく発信中。

保有資格
・NESTA-PFT
・NSCA-CPT

経歴・活動
・Core&Calm(コアカーム)パーソナルジム経営
・パーソナルトレーナー
・リラクゼーションセラピスト
・トレーナー養成スクール講師
・トレーナーアカデミー講師
(年間500回以上の講義)
・転職キャリアアドバイザー

実績
・トレーナー300名以上育成
・SNS総フォロワー数 20,000人以上
・新R25に掲載実績あり
https://r25.jp/articles/928885030159646720

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