【肩の動きの秘密】「肩甲上腕リズム」とは? 肩を評価・トレーニングする前に知っておくべきこと

こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上裕司です。

肩を上げたり、腕を動かしたりする動作は、一見シンプルに見えますが、実は複数の骨と関節が連動して動く、非常に複雑な運動です。

そのため、肩の動き=肩関節だけを見ていては、本当の動作や不調の原因は見えてきません。

肩の動きに関わる主な関節と骨の連携

肩の動きを正しく評価するには、次の3つの構造すべてを理解することが重要です。

① 肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)

上腕骨と肩甲骨の関節=一般的に言う「肩関節」。

② 肩甲胸郭関節(けんこうきょうかくかんせつ)

肩甲骨が胸郭(肋骨の上)を滑るように動く仮想的な関節。

この動きは、以下の関節によって構成されます:

胸鎖関節:胸骨と鎖骨の関節

肩鎖関節:肩甲骨と鎖骨の関節

つまり、肩甲骨の動きは「鎖骨の動き」も含めて成り立っているのです。

鎖骨・肩甲骨・上腕骨はどう動く?

● 鎖骨の動き

腕を上げる(上肢挙上)と、鎖骨は上がって後ろに回転(後方回旋)します。

● 肩甲骨の動き

上肢を上げるとき、肩甲骨は以下のように動きます:

上方回旋(外側が上がる)

後傾(後ろに倒れる)

内旋・外旋は、動作の種類によって変化

前方挙上(屈曲)では内旋方向へ

側方挙上(外転)では外旋方向へ

さらに、肩甲骨は上腕骨頭を関節窩へ引きつけて安定させる役割もあります。

● 上腕骨の動き

上肢を上げるほど、外旋(外向きに回る)の角度が増していきます。

初期~中期:前額面(外側)からの挙上の方が外旋が大きい

120°付近(最終域):逆に矢状面(前方向)からの挙上の方が外旋が大きくなる傾向があります。

「肩甲上腕リズム」:肩の動きの黄金比

肩の挙上(腕を上げる)動作において、

肩甲上腕関節(上腕骨)

肩甲胸郭関節(肩甲骨)

がどのくらいの割合で動いているのかを示すのが「肩甲上腕リズム」です。

基本:2対1のリズム

健康な成人では、腕を上げる際に
上腕骨:肩甲骨 = およそ2:1
の割合で動いているとされています。

つまり、腕を3°上げるとき、

上腕骨が2°

肩甲骨が1°
動いているということになります。

リズムは状況によって変化する

🔹角度による変化

0~30°程度の外転(横への挙上)では、ほぼ上腕骨の動きだけ

それ以降から肩甲骨も徐々に動き出す

🔹小児 vs 成人

小児(4~9歳):リズムは1.3:1 → 肩甲骨の動きが大きい

成人:リズムは2.4:1 → 上腕骨の動きが優位

🔹挙上初期~最終域での変化

挙上初期:上腕骨の動きが優位(7.9:1)

最終域:肩甲骨の割合が増加し、2.1:1へ

🔹重り(負荷)を持つと?

逆のパターンが起こります:

初期:1.9:1

最終域:4.5:1(=上腕骨の動きが優位)

🔹疲労の影響

疲労すると、上腕骨の動きが減り、肩甲骨の動きが代償的に増える傾向があります。
これは肩甲骨の過剰な挙動 → 疲労・痛み・不安定性につながる恐れがあります。

🔹動作のスピードによる変化

ゆっくり動かすと、リズムに大きな変化は出ない

素早い動作では、肩甲骨の動きが増加

まとめ:リズムの崩れ=肩トラブルのサインかも

「肩甲上腕リズム」は、肩の正常な動きを理解するための大切な指標です。
このリズムが崩れると、肩関節疾患(インピンジメント症候群・腱板損傷など)の兆候であることも少なくありません。

リハビリ・トレーニング・投球フォーム改善などでは、このリズムの観察が重要です。

✅ 肩の痛みが出やすい人は…

・肩甲骨の動きすぎ(代償動作)

・上腕骨の外旋不足

・鎖骨・肩甲骨の協調性の乱れ

こうした“リズムの乱れ”が起こっている可能性があるので、ただ筋トレをするのではなく、評価→修正→強化というステップが大切です。

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