こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
「乳酸」と聞くと、「疲労のもと」といったネガティブなイメージを持たれる方も多いかもしれません。
しかし実は、乳酸は体内でエネルギーとして再利用されている、非常に重要な物質です。
今回は、「乳酸が筋肉の中をどう移動し、どのように使われるのか」についてお伝えします。

乳酸脱水素酵素には2つの型がある
乳酸は、「乳酸脱水素酵素(LDH)」という酵素の働きによって産生されます。
この酵素には主に M型(Muscle型)と H型(Heart型)の2種類があり、それぞれ役割に違いがあります。
M型:主に速筋(瞬発的な力を発揮する筋肉)に多く存在。
乳酸の産生を得意としますが、実は乳酸の再利用(酸化)にも関与しています。
H型:心筋や遅筋(持久力のある筋肉)に多く存在。
乳酸を酸化してエネルギーとして再利用する働きが強いのが特徴です。
乳酸は「行きっぱなし」ではない
高強度の運動を行うと、筋グリコーゲンの分解が進み、乳酸が多く産生されます。
このとき、筋肉内では乳酸とピルビン酸の濃度のバランスが崩れます。
通常は、ピルビン酸 → 乳酸の方向に変換が進みますが、
乳酸 → ピルビン酸への逆方向の反応も、同じ酵素(M型LDH)によって起こります。
つまり、乳酸は“その場で終わり”ではなく、再びエネルギー源として使われているのです。
エネルギーのバトン:乳酸の受け渡し
速筋はミトコンドリアの数が少なく、乳酸をたくさん作るタイプの筋肉です。
一方、遅筋や心筋はミトコンドリアが豊富で、乳酸を再利用する能力が高い筋肉です。
このため、運動中に速筋で作られた乳酸は筋肉の外へ放出され、
遅筋や心筋に取り込まれてエネルギーとして再活用されるのです。
このように、乳酸が筋肉間を移動してエネルギーとして受け渡される仕組みを
🔄 「細胞間乳酸シャトル」
と呼びます。
まとめ
・乳酸は「疲労物質」ではなく、再利用されるエネルギー源。
・M型・H型の乳酸脱水素酵素がそれぞれの筋肉で働いている。
・速筋で作られた乳酸は、遅筋や心筋に送られて再利用される。
・この仕組みを「細胞間乳酸シャトル」と呼ぶ。
乳酸は、体の中で「エネルギーのバトン」をつなぐ大切な存在。
うまく使えば、疲労を感じにくく、持久力を高める鍵にもなります。
※本記事は、健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断・治療を目的としたものではありません。
症状や体調に不安がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。
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