高い強度による脂肪輸送の低下の原因5選!
こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。
生理学の基本的な知識は、すべての運動指導者にとって必要な科目です。
少しでも参考になればと思いますので、是非ご覧ください。
マロニルCoAとの関係性
脂肪を使ってエネルギーを作る。
これを理想としている方は多くいるでしょう。
そのためには、脂肪が分解され、脂肪酸として血液に送り出されること。そしてその脂肪酸が筋肉内のミトコンドリアに運ばれなければなりません。
この脂肪酸のミトコンドリアへの輸送が、脂肪利用のカギとしてよくいわれているのです。
とくに筋肉とミトコンドリアへの脂肪酸取り込みにかかわる脂肪酸輸送体が発見されてから、関心を持った方たちが増えてきた印象を受けます。
注目したいのは、この脂肪酸輸送体が、グルコース輸送体であるGLUT4のように細胞膜へ移動する特性があること。
運動すると脂肪酸輸送体の働きが良くなるので、筋肉への脂肪酸取り込みが高まり、脂肪の利用が促進されるのです。
ただし、強度が高い運動時(筋トレやダッシュなど)には、逆に脂肪輸送体の働きが落ちてしまうのです💦。
ここからわかるように、強度が高ければ高くなる程。しんどければしんどいほど。体脂肪が運動時に燃えているという表現は間違いだということが分かるかと思います。
ではここで、脂肪の利用が低下してしまう原因について考えていきましょう!
①輸送に関係するたんぱく質の低下
脂肪酸の輸送に関しては、脂肪酸の筋肉への取り込みにかかわるFAT/CD36だけではなく、脂肪酸のミトコンドリアへの輸送には別のたんぱく質であるCPT1とCPT2が関係してきます。
強度の高い運動になるとCPT1というたんぱく質の働きが落ちることが予想されており、これにより脂肪輸送の低下が考えられるということです。
②pH値の低下
強度の高い運動時におけるpH低下も理由の一つとして考えられています。
人間の正常のpH値は7.35~7.45です。
運動をして筋肉のpHが6.7へと下がっていくことにより、CPT1の働きが低下するということですね。
③糖質の利用の上昇
なぜ脂肪の利用が下がるのかについては、糖質の利用が上がるからともいえるのではないでしょうか?
糖質は脂肪と違って、エネルギーに変換しやすいのが特徴です。
ミトコンドリアは体内の糖質が多ければ糖質の方を利用してしまいます。強度が上がることでさらに糖質の利用が増えれば、ミトコンドリアは手間がかかる脂肪よりも糖質の方を利用するようになるのは自然なことではないでしょうか?
④マロニルCoAの産生
ピルビン酸の産生が増えてしまうことにあります。
糖質はやがてピルビン酸になるため、糖質の利用が増えればピルビン酸も増えますね。
脂肪を利用してくれる酸化機構では、ピルビン酸がアセチルCoAとなり酸化されなければならないのですが、完全に酸化されず、マロニルCoAの産生が上がってしまいます。
このマロニルCoAの濃度上昇は、カルニチンをアセチルカルニチンにすることで、カルニチン濃度を下げることが考えられており、このことが脂肪酸のミトコンドリアへの取り込みを阻害してしまうということです。
結果、阻害されることで脂肪のが利用が低下するという説が実際に存在します。
ただし、強度が高い運動をしたからといって必ずしもマロニルCoAが増えるとも限りませんし、
マロニルCoA量の変化と脂肪利用の変化は必ず一致するとも断言できません。
⑤乳酸の産生
強度が上がれば乳酸が多くできると思います。
この乳酸が脂肪の利用を抑制してしまうという可能性もあるらしいのです。
おそらくではありますが、脂肪より乳酸の方が使いやすいです。ですので糖質と同じ考え方にはなるのですが、優先的に使いやすい乳酸を利用することで、脂肪の利用が低下するということになります。
このように強度の高い運動時には糖質や乳酸の方が脂肪より利用しやすく、強度が上がると脂肪の利用が低下することは明らかになってはいるのですが、原因として考えてはみたものの仮説の部分が多いです。
正直これだ!と言えるものはないので断定できるものではないですね。