こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
「乳酸=疲労物質」
そう思っていませんか?
実は、乳酸は体内でエネルギーとしても活躍している物質です。
今回は「細胞内乳酸シャトル」と呼ばれる、乳酸とミトコンドリアの密接な関係についてご紹介します。

乳酸はエネルギーにもなる!
運動中、グルコース(糖質)が分解されてピルビン酸になり、そこから一時的に乳酸が生成されます。
このとき活躍するのが「乳酸脱水素酵素(LDH)」という酵素です。
LDHには2種類あり、
H型(心筋型):乳酸 → ピルビン酸 に変換
M型(骨格筋型):ピルビン酸 → 乳酸 に変換
H型は、乳酸を再びピルビン酸に戻して、ミトコンドリアでエネルギーとして使うために必要な酵素です。
ミトコンドリアと乳酸脱水素酵素の関係
最近の研究では、H型の乳酸脱水素酵素はミトコンドリアの近くに存在していることがわかってきています。
これまでは「乳酸は一度ピルビン酸に戻ってからでないとミトコンドリアに入れない」と考えられていました。
しかし今では、
「乳酸のままミトコンドリアに入り、そこでピルビン酸に変わる可能性がある」
という新たな仮説が注目されています。
乳酸はどうやってミトコンドリアに入るのか?
ここで登場するのが「MCT1(モノカルボン酸トランスポーター1)」という輸送体です。
MCT1は、乳酸やピルビン酸などをミトコンドリアの内側へ運ぶ役割を担っています。
つまり、
細胞内でできた乳酸
↓
MCT1を通ってミトコンドリアへ
↓
ピルビン酸に変換され、TCA回路(クエン酸回路)でエネルギーとして活用
この一連の流れを 「細胞内乳酸シャトル」と呼びます。
ただし、まだ“仮説”です
このメカニズムは非常に魅力的で、乳酸がエネルギーとして再利用される可能性を示しています。
しかし、ひとつ注意点があります。
「ミトコンドリア内に乳酸脱水素酵素(H型)が本当に存在しているのか?」
という点については、現時点ではまだ明確な証明がされていません。
したがって、これはあくまで仮説段階の理論だということを押さえておきましょう。
まとめ:乳酸は“ただの疲労物質”じゃない!
運動中、一時的に乳酸が作られるのは、
・糖質を分解する過程でNADを再生するため
・そしてその乳酸が再びエネルギー源として使われている可能性がある
というように、乳酸は体内で重要な役割を果たしていると考えられています。
これが、細胞内で乳酸がミトコンドリアに取り込まれ、エネルギーとして再利用される
= 細胞内乳酸シャトルという仕組みなのです。
おわりに
乳酸は「疲労の元」どころか、むしろ「再利用できるエネルギー源」かもしれません。
こうした新しい視点は、運動生理学やスポーツ栄養の分野において、今後ますます注目されていくことでしょう。
「乳酸は燃える!」
そんな可能性に、ぜひ注目してみてください。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
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