こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
マラソンの後半、足が重くなって思うようにスピードが出ない…。
そんな経験をしたことはありませんか?
その一因と考えられているのが「筋グリコーゲンの枯渇」です。
エネルギー源であるグリコーゲンが底をつくと、どれだけ脂肪を蓄えていても力が出ません。
この課題に対する対策として注目されているのが「グリコーゲンローディング」。
今回はその仕組みや注意点、日本人アスリートとの相性について解説していきます。

■ マラソンで失速する理由とは?
フルマラソンを走るには、体重60kgのランナーでおよそ2500kcalのエネルギーが必要になります。
しかし、体内に蓄えられる糖質(グリコーゲン)はせいぜい2000kcal程度。
この不足分を補うためには脂肪も使われますが、糖質が足りなくなるとエネルギー効率が落ち、運動強度を維持できなくなってしまいます。
実際、筋グリコーゲンが減ると、筋収縮の質が落ちることがわかっており、スピードやパフォーマンスの低下につながります。
■ グリコーゲンローディングとは?
そこで考案されたのが、「グリコーゲンローディング」という手法です。
これは、試合の数日前から糖質を多く摂取することで、筋グリコーゲンの貯蔵量を最大化しようとする栄養戦略です。
■ 古典的なグリコーゲンローディングの流れ
- レースの3〜4日前まで:
糖質摂取を意図的に減らし、筋グリコーゲンを枯渇させる。 - 3日前から当日まで:
糖質の摂取量を一気に増やし、通常より多くのグリコーゲンを貯蔵させる。
この「一度減らしてから一気に補給する」方法は、“超回復”のような反応を狙っているとも言えます。
■ 注意点:グリコーゲンは水も抱え込む
グリコーゲンは1gあたり約3gの水分を一緒に蓄えるため、体重が増加する可能性があります。
競技によっては、体が重くなることで逆にパフォーマンスが下がるケースも。
また、胃腸が弱い人にとっては急激な糖質摂取が負担になることもあり、体調を崩すリスクもあります。
■ 日本人には適していない?
日本人の食生活は、もともと糖質の摂取量が多く、欧米に比べて日常的にグリコーゲンローディング状態とも言えるかもしれません。
そのため、さらに糖質摂取を増やそうとしても、
・胃腸の負担が大きい
・実際に筋グリコーゲンが増える保証はない
という点から、欧米の研究をそのまま当てはめるのは慎重になるべきでしょう。
■ ローディングで筋収縮力が向上するのか?
筋グリコーゲンが極端に減ると、筋収縮は低下します。
では、逆にグリコーゲンを通常以上に増やせば、筋収縮はさらに良くなるのか?
現在のところ、“グリコーゲンの上限を超えて増やしても、筋機能がさらに向上するわけではない”という見方が一般的です。
✅まとめ
・マラソン後半の失速の一因は、筋グリコーゲンの枯渇。
・グリコーゲンローディングは、糖質を戦略的に増やし筋グリコーゲンを蓄える方法。
・ただし、体重増や胃腸の負担などのリスクもある。
・日本人は元々糖質摂取量が多いため、欧米式のローディングがそのまま通用するとは限らない。
・重要なのは、グリコーゲンを枯渇させない範囲で維持すること。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
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