こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
~糖質とは何か?~
「糖質」という言葉は、私たちの身の回りではとてもよく使われています。
本来、糖質にはグルコース(ブドウ糖)だけでなく、果糖・ショ糖・乳糖など多くの種類があります。
しかし、運動時のエネルギー代謝において注目すべき糖質は、主に以下の2つです。
✅ グルコース(血液中の糖)
✅ グリコーゲン(筋肉や肝臓に貯蔵されている糖)
この2つを理解すれば、運動時の糖代謝のほとんどを説明できるといっても過言ではありません。

血液中のグルコースと「血糖値」
血液中のグルコース濃度のことを、私たちは「血糖値」と呼びます。
この血糖は、脳にとっての主要なエネルギー源であり、脳は常に血液からグルコースを受け取って活動しています。
そのため、血糖値が低下すると脳の働きに大きな影響が出るため、血糖値の安定は生命維持に直結します。
食事を摂ると血糖値は上昇しますが、それが元に戻りにくくなった状態がいわゆる糖尿病です。
正常な血糖値を保つことは、健康管理・スポーツパフォーマンスの両方において極めて重要です。
グリコーゲンとは?:グルコースが集まった“貯蔵糖”
グリコーゲンは、多数のグルコースが枝分かれして結合した構造を持つ、体内の糖の貯蔵形態です。
主に筋肉と肝臓に蓄えられており、
・肝グリコーゲン:主に血糖値の維持に関与
・筋グリコーゲン:主に筋活動(運動時)のエネルギー供給源
という役割があります。
グリコーゲンが代謝されると、最終的にはグルコースとほぼ同じ代謝経路に乗ってエネルギーになります。
エネルギーを生み出すには酵素が必要
糖質・脂質・たんぱく質を分解してATP(エネルギー通貨)を生み出すには、必ず「酵素」の働きが必要です。
酵素とは、ある物質(基質)を別の物質に変換するタンパク質のこと。
例えば、ある酵素は基質にリン酸(P)を1つ付けるといった“微細な変化”を引き起こします。
このような小さな変化を何段階も繰り返すことで、糖質は最終的に二酸化炭素と水にまで分解され、ATPが生み出されていきます。
「鍵酵素」とは?:代謝のスピードを決める“律速段階”
一連の酵素反応の中には、反応がスムーズに進む段階(=流れが太い)と、
制限が多くスピードが遅くなる段階(=流れが細い)があります。
この「流れが細い」部分が、代謝全体のスピードを決める=律速段階です。
その律速段階を担う酵素のことを「鍵酵素(キーレート・エンザイム)」と呼びます。
糖代謝における重要な鍵酵素とリン酸の関係
エネルギー(ATP)は、リン酸(P)の付け外しによって“貯める・使う”が決まります。
そのため、糖代謝の中でもリン酸の出入りが関係する段階は特に重要であり、以下のような酵素が鍵酵素として知られています:
✅ ヘキソキナーゼ:グルコースにリン酸を付けて、グルコース6リン酸を作る(解糖の第一歩)
✅ グリコーゲンホスホリラーゼ:グリコーゲンからグルコース1リン酸を取り出す
✅ ホスホフルクトキナーゼ(PFK):解糖系の“中心”で、代謝スピードを大きく左右する酵素
これらはいずれもリン酸を使う・付加する段階を担っており、代謝のコントロールに直結します。
また、これらの酵素の一部はATPを消費して反応を進めるため、エネルギー状態によって活性が変化します。
そのため「ATPを使う=エネルギーのかかる反応=律速段階」となるケースも多いのです。
まとめ|グルコースとグリコーゲンの違いと、代謝を動かす“鍵”
✅ 運動時の糖代謝では、グルコースとグリコーゲンが中心
✅ 血糖値の安定は脳の働き・健康維持に必須
✅ グリコーゲンはグルコースの“貯蔵形”で、肝臓と筋肉に蓄えられる
✅ 酵素反応を通じて少しずつ代謝が進む
✅ 律速段階で代謝スピードが決まり、鍵酵素がエネルギー供給の要となる
✅ 糖代謝における代表的な鍵酵素は、ヘキソキナーゼ・グリコーゲンホスホリラーゼ・PFKなど
糖代謝を正しく理解することは、運動のパフォーマンスを高めるだけでなく、健康維持や体調管理の土台にもなります。
基礎的な流れとキーワードを押さえて、代謝の仕組みを自分のものにしていきましょう。
※本記事は、健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断・治療を目的としたものではありません。
症状や体調に不安がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。
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