ピールバックメカニズムとは?インターナルインピンジメントや投球障害との関係を解説
こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。
解剖学の基本的な知識は、すべての運動指導者にとって必要な科目です。
少しでも参考になればと思いますので、是非ご覧ください。

ピールバックメカニズムとは?
ピールバックメカニズムとは、投球動作中に上腕二頭筋長頭腱が上方関節唇(じょうほうかんせつしん)を後方に引きはがすような力を加えることで、関節唇が損傷するメカニズムのことをいいます。
特に、投球動作の「コッキング後期から最大外旋(がいせん)位」にかけて、上腕二頭筋長頭腱はねじれながら後方に引っ張られます。この牽引(けんいん)ストレスが繰り返されることで、関節唇が損傷していきます。
このような関節唇の損傷は「SLAP損傷」とも呼ばれ、野球やハンドボールなどオーバーヘッドスポーツ選手によく見られます。
インターナルインピンジメントとその関係
インターナルインピンジメントとは、肩の外転・外旋(セカンドポジション)時に、棘上筋や棘下筋といった腱板が、肩関節の後上方で関節唇と接触し挟まれる状態をいいます。
これは正常な現象でもありますが、反復動作により肩の前方の関節包が伸びて前方不安定性が起きると、接触が強まり損傷へとつながります。
具体的には、投球動作中の90〜150°の外転位で、関節窩(かんせつか)後上方(時計でいう9時〜11時方向)と上腕骨大結節の間に腱板が挟まれることで生じます。
投球障害に関わる肩後方タイトネス
投球障害の要因の一つとして、肩関節後方のタイトネス(硬さ)が挙げられます。
フォロースルー期(投げ終わり)では、肩甲骨が上腕骨の動きにうまく追従しないと、肩の水平屈曲の動きが大きくなり、後方の関節包や棘下筋に過剰な負担がかかります。
この繰り返しのストレスにより、
・後方関節包が短縮
・棘下筋が硬くなる
・肩の内旋可動域が低下
といった変化が起き、結果として関節のアライメントが乱れ、障害が進行します。
下関節上腕靭帯の後方線維と肩関節の不安定性
肩を外転・外旋したとき、本来は靭帯がバランスよく伸びて上腕骨頭を関節内に安定させます。
しかし、下関節上腕靭帯の後方線維が短縮していると、前方線維だけが伸ばされ、後方が緩まないため、骨頭が後上方へずれてしまいます。
これが、肩後方へのズレ(後上方変位)の原因となり、関節唇との衝突が強くなって損傷が進行する可能性があります。
ベネット病変とは?
ベネット病変とは、肩甲骨の関節窩後下方に骨の増殖(骨化)が起こる障害です。
これには以下の2つの原因が考えられています:
- コッキング期に肩関節が強く外旋することで、上腕骨頭が後方にずれて関節窩後方が損傷する
- フォロースルー期に後方関節包(特に下関節上腕靭帯後方線維)に牽引ストレスがかかる
以前は「上腕三頭筋長頭腱の牽引によって起こる」とされていましたが、現在では関節のズレや靭帯の緊張も関与しているとされています。
まとめ
・ピールバックメカニズムは、投球時のねじれ+牽引によって上方関節唇を損傷するプロセス。
・インターナルインピンジメントは後上方の腱板が関節唇と接触して損傷する現象で、前方不安定性が関与。
・肩関節後方のタイトネスがあると、内旋制限や関節のズレが生じやすくなり、障害を引き起こす。
・ベネット病変は後方関節の繰り返しストレスにより骨が増殖したもの。
💡こんな人に読んでほしい
・投球動作で肩に痛みを感じる方
・野球・バレーボール・ハンドボールなどの競技者
・肩の構造や障害について学びたい理学療法士・学生の方