インスリンとは?体の中での働きと健康への影響をわかりやすく解説

内臓
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インスリンは、私たちの体の中で血糖値(血液中の糖の濃度)を調整するために大切なホルモンです。膵臓(すいぞう)という臓器から分泌され、エネルギーを作るための糖を体の細胞に届ける役割があります。

この記事では、インスリンがどのように作られ、どんな働きをするのか、またインスリンの働きが悪くなるとどうなるのかを、専門的な研究をもとにやさしく説明していきます。

1. インスリンはどうやって作られるの?

インスリンは膵臓の中にある「β(ベータ)細胞」という特別な細胞で作られています。まず、インスリンのもととなる物質が作られ、体内で加工されて、活発に働くインスリンになります(Steiner, 1998)。

私たちがご飯やパンを食べると、血液中の糖(グルコース)の濃度が上がります。その糖が膵臓のβ細胞に入ると、細胞の中でエネルギーが生まれて、インスリンを作り出すスイッチが入ります(Ashcroft & Rorsman, 2012)。

2. インスリンは体の中でどうやって働くの?

インスリンは「鍵」と「鍵穴」のような関係の「受容体」という体の細胞の表面にある部分にくっつきます。受容体がインスリンを受け取ると、体の中に「糖を取り込んで使ってね!」という指令を送ります(White, 1998)。

この信号が届くと、筋肉や脂肪の細胞の中で「グルコースを取り込む扉(GLUT4)」が開き、糖が細胞の中に入りやすくなります。これにより、血糖値が下がり、細胞はエネルギーとして糖を使えるようになります(Taniguchi et al., 2006)。

3. インスリンが働く場所と役割

骨格筋(筋肉)

筋肉は体の中で糖を多く使う場所です。インスリンのおかげで糖が筋肉に取り込まれ、動くためのエネルギーや貯蔵されるグリコーゲンになります(Zierath & Wallberg-Henriksson, 2002)。

肝臓(かんぞう)

肝臓は糖の貯蔵庫のような役割を持っています。インスリンがあると、肝臓は血液中の糖を取り込んでグリコーゲンに変えたり、脂肪に変えたりしてエネルギーを蓄えます(Saltiel & Kahn, 2001)。

脂肪組織(体の脂肪)

脂肪も糖を取り込んでエネルギーとして使ったり、脂肪の分解を抑えたりしています。インスリンは脂肪を増やすような働きをするので、過剰になると体脂肪が増えやすくなります(Guilherme et al., 2008)。

4. インスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」とは?

インスリン抵抗性とは、体の細胞がインスリンの指令にうまく反応できなくなる状態を言います。肥満や運動不足、ストレスが原因で起こりやすいです(Kahn et al., 2006)。

この状態が続くと、膵臓はもっとたくさんインスリンを作ろうと頑張りますが、限界がきてインスリンの量が不足したり、血糖値が高いままになったりします。これが「2型糖尿病」につながります(DeFronzo, 2009)。

5. インスリンが体に与える影響と最新の研究

インスリンは糖の代謝だけでなく、たんぱく質の合成や細胞の成長にも関わっています(Cross et al., 1995)。また、最近の研究ではインスリンが血管を健康に保つ働きや、免疫の調整にも影響していることが分かってきました(Muniyappa et al., 2007)。

さらに、糖尿病の治療ではインスリンを自動で調整する「人工膵臓」などの技術が発展しています。これにより、血糖値の管理がより簡単で正確になってきています(Kovatchev et al., 2017)。

まとめ

インスリンは血糖値をコントロールし、エネルギーを体に届ける重要なホルモンです。インスリンの働きが悪くなると、血糖値が高くなり健康に悪影響が出ることもあります。

健康を保つためには、適度な運動やバランスの良い食事でインスリンの働きを良くすることが大切です。また、最新の医療技術も進歩しており、糖尿病などの予防・治療に役立っています。

※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。

参考文献

  • Ashcroft, F. M., & Rorsman, P. (2012). Diabetes mellitus and the β cell: the last ten years. Cell, 148(6), 1160-1171.
  • Guilherme, A., et al. (2008). Adipocyte dysfunctions linking obesity to insulin resistance and type 2 diabetes. Nature Reviews Molecular Cell Biology, 9(5), 367-377.
  • Kahn, S. E., et al. (2006). Mechanisms linking obesity to insulin resistance and type 2 diabetes. Nature, 444(7121), 840-846.
  • Muniyappa, R., et al. (2007). Cardiovascular actions of insulin. Endocrine Reviews, 28(5), 463-491.
  • Taniguchi, C. M., et al. (2006). Critical nodes in signalling pathways: insights into insulin action. Nature Reviews Molecular Cell Biology, 7(2), 85-96.
  • Zierath, J. R., & Wallberg-Henriksson, H. (2002). From receptor to effector: insulin signal transduction in skeletal muscle from type II diabetic patients. Annals of the New York Academy of Sciences, 967, 120-134.

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著者
トレーナー育成講師

運動 × 栄養 × 体づくりの専門家
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・Core&Calm(コアカーム)パーソナルジム経営
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