肘関節に関わる筋肉の働きと加齢による変化|モーメントアームも解説
こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。
今回は、肘関節の動きに関係する筋肉の特徴や加齢による変化、そして「モーメントアーム」と呼ばれる力学的な特徴について、わかりやすく解説します。

肘関節の周囲にある主な筋肉
肘関節は、屈曲(曲げる)と伸展(伸ばす)を主な動きとし、複数の筋肉によって支えられています。
主な屈曲筋群(肘を曲げる)
・上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)
・上腕筋(じょうわんきん)
・腕橈骨筋(わんとうこつきん)
・円回内筋(えんかいないきん)
これらの筋肉の中でも、腕橈骨筋は筋繊維が長く、収縮速度が速いという特徴があります。すばやい動きに関わる筋肉です。
主な伸展筋群(肘を伸ばす)
・上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)
・肘筋(ちゅうきん)
・回外筋(かいがいきん)
この中でも、上腕三頭筋は筋肉の容量(大きさ)と断面積が最も大きい筋肉です。つまり、最もパワフルに肘を伸ばす筋肉ということです。
年齢と筋肉量の関係:上肢はどのように変化する?
年を重ねると筋肉量は自然に減っていきますが、上肢(腕)よりも下肢(脚)のほうが減少の割合は大きいことがわかっています。
とはいえ、腕の筋肉も無関係ではありません。
若年者と高齢者の筋肉容量の比較
上肢の筋肉全体では、高齢者は約16.5%筋容量が減少。
特に減少が顕著なのは:
・肩の外転筋群(三角筋・棘上筋)
・肘の屈曲筋群(上腕二頭筋など)
・肘の伸展筋群(上腕三頭筋など)
筋肉の減少により、動作のパワーやスピードが低下しやすくなります。運動やトレーニングで予防・改善が可能です。
モーメントアームとは?筋肉の効率を決める力学的要素
モーメントアームとは?
簡単に言うと、「てこの原理」でいう力のかかる距離のこと。
モーメントアームが大きいほど、少ない力で大きな動きやトルク(回転力)を生み出せます。
肘関節でのモーメントアームの特徴
肘を伸ばす動作
上腕三頭筋のモーメントアームが最大
→ 肘を伸ばす際に最も効率的に力を発揮できます。
→ 特に肘が約44°曲がっているときに最大となります。
肘を曲げる動作
腕橈骨筋や上腕二頭筋のモーメントアームが大きい
→ 効率よく肘を曲げられる
→ 上腕二頭筋と上腕筋は、肘が88°曲がったときに最大となります
前腕の回内・回外に関わる筋肉とモーメントアーム
前腕の動きには、「回内(手のひらを下に向ける)」「回外(手のひらを上に向ける)」があります。
回外(手のひらを上に向ける)動作
主な筋肉:回外筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋
モーメントアームが大きくなるのは:
前腕が40~50°回内しているとき
肘を90°曲げた状態では上腕二頭筋の回外力が最大
回内(手のひらを下に向ける)動作
主な筋肉:円回内筋、方形回内筋、橈側手根屈筋
回内モーメントアームは:
回内・回外の中間位で最大
特に肘を90°曲げた状態で回内筋が強く働く
まとめ:効率的な動きには筋肉とモーメントアームの理解がカギ
肘関節の動きには、複数の筋肉が連携しており、それぞれの筋肉が発揮する効率(モーメントアーム)も肢位によって変化します。
加齢により筋肉量は減少しますが、筋トレやリハビリによって機能を維持・向上させることが可能です。
関節の動きや筋肉の力学的特性を理解することで、より効率的で安全なトレーニングやリハビリにつなげられます。