GLUT4とは?糖の取り込みと運動・糖尿病との関係をわかりやすく解説

生理学
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こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。

糖質を食べたら、すぐ脂肪になると思っていませんか?

実は、糖質(グルコース)はまず血液を流れ、必要な細胞に取り込まれます。
このとき重要な役割を果たすのが「GLUT4(グルット4)」という輸送たんぱく質。

とくに筋肉へのグルコースの取り込みは、血糖値のコントロールや糖尿病の予防・改善においても非常に大きな鍵を握っています。

この記事では、GLUT4の働きや運動との関係、そして糖尿病との関わりまでを、専門的だけどわかりやすく解説していきます。

■ グルコースとは何か?

グルコースは糖質の最小単位であり、血液中を流れる糖の正体です。
食事で摂取された炭水化物(でんぷんなど)は、消化酵素によりグルコースへと分解され、小腸から吸収されて血液に入ります。

このグルコースは肝臓を経由して全身に送られ、筋肉などでエネルギー源として使われたり、グリコーゲンとして貯蔵されたりします。

■ 筋肉にとってのグルコース

筋肉は体重の約40%を占める大きな組織。
この筋肉にグルコースが取り込まれるかどうかは、血糖値を正常に保つうえで非常に重要です。

食後など血糖値が上がっているときに、筋肉がグルコースを取り込むことで血糖値が下がります。
しかし、逆に血糖値が下がっているときにグルコースを取り込んでしまうと、脳のエネルギー供給が不足する可能性も。

そのため、筋肉がグルコースを取り込むタイミングには、精巧な調節機構が存在しています。

■ GLUT4の登場:糖を取り込む「門番」

筋肉細胞のグルコースの取り込みに関わるのが、「GLUT4(グルットフォー)」と呼ばれるグルコース輸送体です。

GLUT4は普段は細胞の中にひっこんでおり、グルコースを取り込む働きをしていません。
血糖値が上がると、GLUT4が細胞膜の表面へ移動して、グルコースを細胞内に取り込みます。
この移動のことを「トランスロケーション」と呼びます。

■ GLUT4を動かす鍵:インスリンとシグナル伝達

血糖値が上がると、膵臓から「インスリン」が分泌されます。
インスリンは筋肉細胞の受容体(IRS)と結合し、細胞内に信号を伝えます。

この一連のシグナル伝達の流れは以下の通りです:

  1. インスリンがIRS(インスリン受容体基質)と結合
  2. PI3K経路が活性化され、イノシトール3リン酸が働く
  3. Akt(プロテインキナーゼB)が活性化される
  4. GLUT4がトランスロケーションを起こし、グルコースを取り込む

この機構がうまく働かないと、インスリンが出ていても血糖値が下がらない=2型糖尿病の一因となります。

■ インスリンが効かない?糖尿病との関係

2型糖尿病とは、インスリンは分泌されているのに、筋肉でGLUT4が反応しない状態のこと。
これを「インスリン抵抗性」と呼び、生活習慣病の一部として分類されています。

・食べ過ぎ

・運動不足

・食間をあけない生活


などが続くと、インスリンの効きが悪くなり、GLUT4のトランスロケーションも起きにくくなります。

放置すれば、インスリンの分泌自体が減少し、血糖値は高止まりします。

■ 運動はGLUT4を動かす“もう一つの鍵”

実は、運動によってもGLUT4のトランスロケーションは起こります。
これにはインスリンを必要としません。

ここで働くのが「AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)」という酵素です。

▶ AMPKとは?

運動によりATP(エネルギー通貨)が使われると、ADPやAMPが増えます。
AMPが増加すると、AMPKが活性化され、GLUT4が細胞表面に移動するのです。

この仕組みがあるおかげで、糖尿病の方でも運動療法によって血糖値をコントロールできる可能性があります。

■ 注意点:運動強度との関係

ただし、運動強度が高すぎると、肝臓が糖を分解しグルコースを放出してしまうため、かえって血糖値が上がることがあります。
糖尿病対策の運動では、中〜低強度の運動を継続的に行うことが効果的です。

■ GLUT4を動かす他の経路も

AMPK以外にも、カルモジュリンキナーゼなど他の酵素経路がGLUT4の移動に関与していることがわかってきています。
研究は進んでいますが、全容はまだ解明されていません。

GLUT4は単なる糖の通路ではなく、代謝の調整役・トレーニングへの適応にも関わる存在として注目されています。

✅【まとめ】

・GLUT4は、筋肉がグルコースを取り込むための“扉”のような存在。

・血糖値の調整や糖尿病の予防・改善において極めて重要。

・インスリンだけでなく、運動によってもGLUT4は活性化される。

・AMPKの働きが、糖代謝と運動の橋渡し役になっている。

・運動習慣はGLUT4の機能を維持し、糖尿病予防にもつながる。

※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。

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著者
トレーナー育成講師

運動 × 栄養 × 体づくりの専門家
ブログ記事200本以上を執筆し、
正しい知識をわかりやすく発信中。

保有資格
・NESTA-PFT
・NSCA-CPT

経歴・活動
・パーソナルトレーナー
・リラクゼーションセラピスト
・トレーナー養成スクール講師
・トレーナーアカデミー講師
(年間500回以上の講義)
・転職キャリアアドバイザー

実績
・トレーナー300名以上育成
・SNS総フォロワー数 20,000人以上
・新R25に掲載実績あり
https://r25.jp/articles/928885030159646720

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