GLUT4のグルコース輸送のメカニズム。

こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。

生理学の基本的な知識は、すべての運動指導者にとって必要な科目です。

少しでも参考になればと思いますので、是非ご覧ください。

GLUT4 グルコースを取り込む

グルコースは糖質の最小単位である。

血液の糖質をグルコースと呼び、グリコーゲンの素となる。

食事で摂取したグルコースは、吸収されると肝臓を経て血液中に送られる。

運動に関連してグルコースの筋肉での代謝を考えるには、まず血液から筋肉への取り込みが重要である。

これはグルコース輸送体を介している。

グルコース輸送体であるGLUTは、グルコースを取り込みを行うたんぱく質である。

GLUTにはいくつか種類があるが、筋肉にはGLUT1GLUT4があり、もっとも重要なのがGLUT4である。

ここで血中グルコース濃度が上がった場合には、それをどうやって下げるのかが重要である。

グルコース取り込みにかかわる組織の中でも、筋肉は体重の40%程度を占める身体でもっとも多い組織である。

そこで筋肉へのグルコースの取り込みは、食後などに上がった血糖値を下げるには最も重要と考えている。

血糖値が上がっている時は良いのだが、低い時にも筋肉がグルコースを取り込み続けると、血糖値が必要以上に下がってしまうことになる。

血中のグルコースは基本的には脳の主要エネルギーであるので、血糖値が下がりすぎては困る。

そこで、筋肉は必要な時。血糖値が上がった時はグルコースを取り込み、低い時にはグルコースを取り込まない仕組みがある。

そしてこれにはGLUT4が大きく関与している。

GLUT4は普段は中に引っ込んでいて働かない。働くときは血糖値が上がった時だけ細胞膜表面に現れてグルコースを取り込む。

このようにGLUT4が細胞内から膜表面に移動することをトランスロケーションという。

またこの仕組みがうまくいかなくなることが糖尿病の1つの原因である。

グルコース輸送体のメカニズム

食事によって血中グルコース濃度があがると、膵臓からインスリンが分泌される。

インスリンが筋肉に届くと、IRSと結合する。

そしてそれを受けてGLUT4のトランスロケーションが起こるまでのシグナル伝達経路については、不明な点が多い。

IRSの次にイノシトール3リン酸があり、さらにAktの活性化がある。

インスリンが筋肉に届くと、GLUT4のトランスロケーションが起こり、そこでグルコースが筋肉に取り込まれて血中のグルコース濃度が低下する。

ところが、栄養過多・食間期をおかない食生活・運動不足などの原因により、インスリンは出ていても筋肉でGLUT4のトランスロケーションが起こらない状態になると、2型糖尿病の1つの原因となる。

そうなると、インスリン分泌やグルコース輸送体の量自体が低下していくようである。

糖尿病には2つのタイプがあり、1型糖尿病はインスリンを分泌できない膵臓の病気である。2型糖尿病はインスリンは分泌できるが、GLUT4が働かない状態がひとつのきっかけとなる病気で、生活習慣病とも呼ばれる。望まない生活習慣の結果として起こると考えられている。

インスリン関係なく運動時にはGLUT4のトランスロケーションが起こることが分かっている。

つまり、インスリンを介さないでGLUT4を移動させる経路がある。

これにはまず、AMPKという酵素の働きが関係していることが明らかになっている。AMPKはAMPによって活性化される。

AMPとはアデノシン一リン酸で、エネルギーの基本であるATPからリン酸が2つとれたものである。

ATPがエネルギー放出によりADPになり、その2つのADPがATPとAMPを生み出す。

このことからADPが多くできるような状態。つまり運動時にはAMPも多くできることになる。

AMPが増えれば、それによってAMPKがよく働くようになるため、運動時にはインスリンなしでGLUT4のトランスロケーションが起こせることになる。

糖尿病の運動療法というように、糖尿病の状態でも運動すればグルコースの筋肉への取り込みを増加させることができる。

ただし、運動強度を上げると、肝臓の糖質分解とグルコースの放出が起こり、血中グルコース濃度を上げるようになってしまうので、運動強度を上げないことも重要である。

AMPKによるグルコース取り込みはインスリンと相加的ではない。

AMPKの経路だけでなく、カルモジュリンキナーゼを介する経路が働いていることがわかっており、またこの他の仕組みも働いているとも考えられている。

このようにグルコース輸送体のトランスロケーションに関しては多くの研究が行われているが、まだまだ不明な点が多い。

AMPKはGLUT4のトランスロケーションだけではなく、トレーニングなどにおける代謝変化と適応をつなぐ因子であると考えられている。

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