フォースカップルの理解と肩甲帯の動作に関与する筋肉の把握

こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。

解剖学の基本的な知識は、すべての運動指導者にとって必要な科目です。

少しでも参考になればと思いますので、是非ご覧ください。

鎖骨

鎖骨には僧帽筋上部繊維、大胸筋上部繊維、三角筋前部繊維、鎖骨下筋、胸鎖乳突筋などの筋肉が付着している骨になります。

胸鎖関節を中心に僧帽筋上部が活動し、鎖骨の運動をコントロールしているのです。

鎖骨が単独で動作することはできません。肩甲骨と連動して鎖骨は動いてくれます。

肩甲骨

肩甲骨には、僧帽筋中部繊維、僧帽筋下部繊維、前鋸筋、小胸筋、肩甲挙筋、小菱形筋、大菱形筋、三角筋中部繊維、三角筋後部繊維、大円筋、広背筋、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋、上腕二頭筋、烏口腕筋、上腕三頭筋長頭などの筋肉が付着している骨になります。

たくさんの筋肉が付着していることから、肩甲骨の動きは非常に重要なことだと言えるでしょう。

これらの筋肉が連動しながら働き、鎖骨、肩甲骨を安定させています。

肩甲帯の動作が可能な筋肉たち

①挙上

僧帽筋上部繊維
起始:後頭骨、項靭帯を介するすべての頸椎棘突起
停止:鎖骨外側1/3
作用:挙上、上方回旋

肩甲挙筋
起始:頸椎1~4の横突起
停止:肩甲骨の上角
作用:挙上、下方回旋

菱形筋
起始:頸椎6~胸椎4
停止:肩甲骨内側縁下部2/3
作用:挙上、外旋、下方回旋

②下制

鎖骨下筋
起始:第一肋骨
停止:鎖骨中央下面
作用:下制

小胸筋
起始:第3~5肋骨前面
停止:烏口突起
作用:下制、内旋、前傾

僧帽筋下部繊維
起始:胸椎5~12の棘突起
停止:肩甲棘
作用:下制

③内旋

小胸筋・前鋸筋が内旋に関係しています。

前鋸筋
起始:第1~8肋骨
停止:肩甲骨内側縁

④外旋

菱形筋・僧帽筋中部繊維に関係しています。

僧帽筋中部繊維
起始:胸椎1~4棘突起の腱膜
停止:肩峰

⑤前傾

小胸筋が収縮行動を起こすと、烏口突起を内下方へけん引することにより、肩甲骨を前傾させます。

烏口突起に起始している烏口腕筋・上腕二頭筋短頭も同様。

⑥後傾

僧帽筋と前鋸筋による下角の前方引き出しが同時に起こることでで肩甲骨は後傾する。

⑦上方回旋

僧帽筋と前鋸筋が同時に働くことで肩甲骨を上方回旋させてくれます。
※複数の筋の協調した収縮により関節の運動を可能にしていることをフォースカップルと呼びます。

正常な上方回旋が実現するには、このフォースカップルが重要になります。

僧帽筋と前鋸筋がどちらも正常な状態であることがベストです。

⑧下方回旋

小胸筋、肩甲挙筋、菱形筋が活動すると、下方回旋させてくれますが、

ここで注目したいのが、三角筋です。

三角筋中部繊維の収縮により肩甲骨は下方回旋する。

三角筋中部繊維
起始:肩峰
停止:三角筋粗面

三角筋中部線維が単独収縮を行った場合、肩峰と三角筋粗面を近づけるため、上腕骨挙上とともに肩峰の下制が起きます。つまり肩甲骨の下方回旋が生まれる
※静的姿勢で通常よりも上方回旋しているアライメントの場合、三角筋中繊維を鍛えることで修正される可能性あり

また、肩甲骨周囲筋の機能低下により肩甲骨の固定機能が低下していると、腕を上げた時に翼状肩甲骨状態になりますが、

実はこれには三角筋の作用も要因の一つ。

小胸筋スパズムによるインピンジメント

小胸筋の筋スパズム(筋の緊張)により、静的姿勢時に肩甲骨が前傾していることがよくあります。

正常な状態と、小胸筋短縮位とを比較して、挙上角度90°以上で肩甲骨内旋角度の増加と後傾角度の減少が起きています。

これは、肩峰下スペースの減少が起きることで、肩峰と上腕骨頭によるインピンジメントのリスクを増大させることになります。

よって、小胸筋の筋スパズムが起こらないよう、普段から小胸筋を動かす、短縮位になるような姿勢にならない等、注意が必要です。

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