こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
今回は、「運動の基本」「ニュートンの法則」「回転運動とモーメント」など、私たちのカラダの動きに関係する物理の知識を、できるだけやさしく解説していきます。
運動指導やリハビリ、スポーツ現場にもつながる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

■ 運動の種類とは?
「運動」とは、物体が位置や向きを変えることを指します。
この運動は、大きく2つに分けられます。
● 並進運動(へいしんうんどう)
位置が変わるけど、向きは変わらない運動
例:電車の座席に座ってまっすぐ移動する
→ 移動距離で運動の大きさを表せます。
● 回転運動
位置は変わらないが、向きが変わる運動
例:ドアの開閉、肩を軸にした腕の振り
→ 回転の角度や回転軸を中心にした動きになります。
多くの動きはこの並進運動と回転運動が合わさったものです。歩く・投げる・走るといった動作も同様です。
■ 運動の向きと大きさを表す「ベクトル」
運動や力には、大きさと向きがあります。
この2つの要素を持った量のことを「ベクトル」と呼びます。
矢印で表現し、どこに・どれくらいの力が働いているかを視覚的に示すのに便利です。
■ ニュートンの運動の3法則
イギリスの物理学者アイザック・ニュートンが発見した「運動の法則」は、現代の運動学やバイオメカニクスの基礎になっています。
① 慣性の法則(運動の第一法則)
「外から力が加わらない限り、物体は今の状態を保ち続ける」
止まっている物体は止まったまま
動いている物体は同じ速さ・向きで動き続ける
● 身近な例:
電車が急停止すると、体が前に倒れそうになる現象。
これは体が慣性で前に進み続けようとするからです。

② 運動の法則(第二法則)
「加速度は、力に比例し、質量に反比例する」
数式で表すと:
F = ma(F:力、m:質量、a:加速度)
● 身近な例:
同じ力でダンベルを持ち上げる場合、
重いダンベル(質量が大きい)ほど、動かす速さ(加速度)は小さくなります。

③ 作用・反作用の法則(第三法則)
「物体Aが物体Bに力を加えると、BもAに同じ大きさで反対向きの力を返す」
● 身近な例:
人が床に立っているとき
地球が人を下向きに引っ張る(重力)
床は同じだけ上向きに押し返す(床反力)
このときに生じる上向きの力を床反力(ground reaction force)と呼びます。

■ モーメント(回転させる力)と人体の関係
● モーメントとは?
物体を回そうとする力を「モーメント(力のモーメント)」といいます。
式で表すと:
モーメント = 力 × モーメントアーム
モーメントアーム:回転軸から力の作用線までの垂直距離
この距離が長いほど、小さな力でも大きなモーメントを生みます。
● 人体におけるモーメント
私たちの関節運動は、ほとんどが「回転運動」です。
例えば、肘を曲げる・膝を伸ばすといった動きです。
このとき発生している力のことを「関節モーメント」と呼びます。
● 筋力測定は「関節モーメント」を見ている
実は、筋力を測定するとき(器具や徒手抵抗など)、直接筋肉の張力を測っているわけではありません。
測っているのは「関節に生じるモーメント」
つまり、「どれだけ回す力が出せているか?」を評価しています。
● 関節モーメントを使った動作分析
運動分析では、姿勢や動作によって関節モーメントがどう変化するかを考えることが重要です。
例えば:
・前傾姿勢でスクワットすると、股関節に大きなモーメントがかかる
・膝を深く曲げると、膝関節モーメントが増える
また、荷重位置(体重がかかる位置)と床反力ベクトルの関係を見れば、
どの筋肉にどれだけの力が求められるかが推定できます。
■ まとめ
・運動には並進運動と回転運動があり、私たちのカラダはその組み合わせで動いている
・ニュートンの3法則は、私たちが動く仕組みや、バランスを理解する鍵になる
・筋力とは、単なる力ではなく「関節に生じるモーメント(回転力)」として捉えるべき
・姿勢やフォームを少し変えるだけで、関節モーメントは大きく変化する
スポーツ指導やリハビリ、筋トレ指導でも、こうした「物理の目線」を持つことで、より根拠ある動きの分析や指導ができるようになります!
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