こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
~バタフライは筋力と技術の総合競技~
バタフライは、泳法の中でも「全身を最もパワフルに使う泳ぎ方」です。
100mや200mのレースを想像してみてください。
序盤は勢いよく進めても、後半になると腕が重くなり、キックの力も弱まり、フォームが崩れてしまう…。
これは単なる持久力不足ではなく、必要な筋力と体幹の安定性が足りないことが原因の場合が多いのです。水中練習だけで速くなるのには限界があります。
陸上で筋肉を強化することで、スタートの瞬発力、プルのパワー、キックの推進力、そして最後まで崩れないフォームを手に入れることができます。この記事では、バタフライのパフォーマンスを引き上げる筋トレのポイントを、一般スイマーにもわかりやすく解説します。

バタフライで使われる主な筋肉と役割
バタフライは全身運動ですが、特に重要な筋肉を知っておくと、筋トレの目的が明確になります。
- 広背筋(背中の羽のような筋肉)
水を引き寄せるプル動作の主役。水をしっかりキャッチできるかどうかはこの筋肉にかかっています。 - 大胸筋(胸の大きな筋肉)
プルの後半で水を押し切る力を生み出します。ベンチプレスの動きに近い役割です。 - 三角筋(肩の丸い筋肉)
腕を前にリカバリーする時に活躍。肩の柔軟性もここに関わります。 - 体幹(腹直筋・腹斜筋・脊柱起立筋)
全身のうねりを安定させる“軸”。体幹が弱いと、キックやプルの力が水にうまく伝わりません。 - 大臀筋・ハムストリングス(お尻と太もも裏の筋肉)
ドルフィンキックの推進力を支えるエンジン。水中での「蹴り出し」はほぼここから生まれます。 - 下腿三頭筋(ふくらはぎ)
足首のバネを作り、キックの効率を上げます。
筋トレがバタフライに与える効果
筋トレを取り入れることで、バタフライには次のような効果があります。
- スプリント力アップ
スタートやターン後の加速が鋭くなります。陸上の短距離走と同じで、爆発的な筋力は最初の数メートルに大きな差を生みます。 - 後半の失速防止
筋持久力が向上し、最後の一掻きまでフォームを維持できます。特に200mバタフライの後半で差が出ます。 - 水のキャッチ力向上
水を「掴む」感覚が強まり、無駄な力を使わず効率よく推進力を得られます。 - 体幹安定性アップ
うねりの軸が安定し、抵抗を減らせます。これはスピードにも疲労軽減にも直結します。
バタフライ選手向け筋トレ種目一覧(部位別)
上半身
- 懸垂(チンアップ)
水を引き寄せる動作を陸上で再現できます。肩幅よりやや広めで行うのがおすすめ。 - ベンチプレス/腕立て伏せ
大胸筋と三角筋前部を鍛え、プルの押し切り動作を強化します。 - ダンベルプルオーバー
肩関節の可動域を広げつつ、背中と胸の連動を高めます。
体幹
- プランク(前・横)
波打つような体幹動作の安定性を作ります。 - Vシットアップ
ドルフィンキック時の腹筋収縮力を向上。 - バックエクステンション
脊柱起立筋を強化し、腰の安定性を高めます。
下半身
- スクワット/ジャンプスクワット
キックの推進力を底上げします。ジャンプ動作は瞬発力にも効果的。 - ヒップスラスト
大臀筋を鍛え、蹴り出しの爆発力を強化。 - カーフレイズ
足首のバネを作り、キック効率を上げます。
シーズン別・期間別の筋トレプラン
筋トレはシーズンのタイミングによって目的を変えると効果的です。
- オフシーズン(基礎筋力アップ)
高重量・低回数(5〜8回×3セット)で筋力を底上げ。 - シーズン前(パワーとスピード強化)
中重量・中回数(8〜12回)+ジャンプやメディシンボール投げなど爆発的動作を追加。 - シーズン中(維持と疲労軽減)
低重量・低回数で筋肉の張りを保ちつつ、神経系を刺激。
筋トレと水中練習のバランス
筋トレ後にすぐ水中で全力を出すのは難しいため、練習順序が重要です。
おすすめは午前に水中練習・午後に筋トレ、または別日に行う方法。週3〜4回の筋トレが理想です。
怪我予防と柔軟性
筋力があっても、肩や股関節の柔軟性が低いとフォームが崩れ、怪我のリスクが高まります。
特に肩の前面、胸椎の伸展、股関節の伸展は毎日ストレッチを行いましょう。
まとめ
バタフライは「水の上の筋肉の舞」とも呼べるほど、筋力と技術が密接に結びついた泳法です。
適切な筋トレを取り入れることで、爆発的なスタート、力強いプル、鋭いドルフィンキック、そして最後まで崩れないフォームを手に入れることができます。
水中練習と陸上トレーニングをバランス良く組み合わせ、自己ベスト更新を狙いましょう。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
コメント