こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
なぜバレーボール選手に筋トレが必要なのか?
バレーボールは、ジャンプ、ダッシュ、ストップ&ゴーといった高強度な動きを繰り返す爆発的な競技です。レシーブやスパイク、ブロック動作では全身の連動が求められ、特に瞬発力とコアの安定性が勝敗を分けます。
「スパイクの威力が足りない」「ジャンプ力をもっと伸ばしたい」「ケガを減らしたい」と悩む選手や指導者にとって、競技特性に合った筋力トレーニングの導入は欠かせません。
しかし、バレーボールに必要な筋力とは「ただ重いものを持ち上げる力」ではなく、「スピード×力(=パワー)」です。筋トレのやり方を間違えると、パフォーマンスの向上どころか、動きのキレを失うこともあります。
本記事では、バレーボールに特化した筋トレの考え方と実践方法を、スポーツ科学の視点から詳しく解説していきます。

①バレーボールで重要な筋肉と動作の理解
バレーボールでは、以下のような筋肉群が特に活躍します。
下半身:大腿四頭筋・ハムストリングス・殿筋群(ジャンプ・切り返し)
体幹部:腹斜筋・脊柱起立筋・腹横筋(姿勢保持・安定性)
上半身:三角筋・広背筋・上腕三頭筋(サーブ・スパイク)
さらに、スパイクやジャンプでは「地面反力」=床を強く押す力がパワーに直結します。つまり、下半身の出力と体幹の連動性がパフォーマンスを支える基盤になります。
②バレーボール選手に必要な筋トレの原則
キーワードは「パワー」「敏捷性」「連動性」
ただ筋肥大を狙うのではなく、以下のような要素を重視します。
・筋力×スピード=パワー:爆発的な動作に必須
・神経系の活性化:動作のスピードと正確性を向上
・可動域と安定性のバランス:怪我予防と力の伝達効率
筋トレの原則(SAIDの法則)
Specific Adaptation to Imposed Demands(課せられた刺激に対して身体は特異的に適応する)
つまり、「ジャンプ力を高めたいなら、ジャンプ動作に近い刺激を与えるべき」という考え方です。
ポジション別:筋トレ戦略の違い
アタッカー(スパイカー)
必須要素:ジャンプ力、上半身の爆発力、体幹の安定
推奨種目:スクワット、ハングクリーン、メディシンボールスロー
セッター
必須要素:瞬時の判断力と俊敏性、肩の安定性
推奨種目:ランジバリエーション、バンド系肩トレ、コーディネーションドリル
リベロ
必須要素:低姿勢の維持、横移動の敏捷性、体幹力
推奨種目:プランク系トレーニング、サイドシャッフル、ジャンプスクワット
ジャンプ力を高めるには?筋トレとプライオメトリクスの融合
ジャンプ力向上のカギは、地面に力を素早く伝える能力(RFD:Rate of Force Development)です。
有効なトレーニング例:
・スクワット(90%1RM前後の高重量)
・ボックスジャンプ(瞬発力系)
・ハングパワークリーン(筋力とスピードの融合)
これらを週2回、4〜6週間でサイクル化し、段階的に強度を上げることで、競技力に直結する「競技動作の出力」が高まります。
ケガ予防に必須の安定性トレーニング
バレーボールは膝や足首、肩のケガが多い競技です。筋力アップと並行してスタビリティ(安定性)トレを行うことで、パフォーマンスも安全性も高まります。
・片足スクワット(バランスと股関節安定)
・ショルダースタビリティ(バンドエクササイズ)
・スパイダープランク・デッドバグ(体幹連動)
シーズン中とオフシーズンでの使い分け
オフシーズン:筋力・筋量アップ(基礎構築期)
プレシーズン:動作スピード・パワー(移行期)
インシーズン:維持・神経系刺激(メンテナンス期)
年間を通してプログラムをピリオダイゼーション(期分け)することで、試合期に最適なパフォーマンスを発揮できます。
栄養と回復もパフォーマンスの一部
トレーニング効果を最大化するには、たんぱく質摂取(体重1kgあたり1.6〜2.2g/日)と睡眠(7時間以上)が不可欠です。
クレアチンやプロテインも、摂取タイミングと量を守れば有効な補助になります。
まとめ:筋トレは「動ける身体」をつくる武器
バレーボールにおける筋トレは、「パワーとキレを高める」だけでなく、「ケガを防ぎ、長く競技を続ける」ためにも不可欠な戦略です。
適切なプログラムを、継続的かつ段階的に実施することで、確実に競技力は伸びていきます。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
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