こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
~筋肉分解と糖新生の意外なつながり~
アミノ酸といえば「筋肉を作る材料」というイメージが強いかもしれません。
たしかにその通りですが、実はアミノ酸にはエネルギー源としての役割もあるのです。
ただし、エネルギー源としての使われ方にはいくつかの条件と制約があります。
今回は、アミノ酸のエネルギー代謝への関与について解説していきます。

アミノ酸の基本構造と特徴
アミノ酸は、炭素・水素・酸素・窒素で構成されています。
特に注目すべきは、窒素を含むこと。ブドウ糖や脂肪酸にはこの窒素が含まれていません。
この「窒素」の存在が、アミノ酸をエネルギーとして利用する際に、少し厄介になります。
アミノ酸はどうやってエネルギーになる?
アミノ酸は、筋肉や臓器などを構成するたんぱく質の材料です。
しかし、体内でエネルギーが足りなくなったとき、アミノ酸は糖新生という仕組みで肝臓でブドウ糖に変えられ、エネルギーとして使われることがあります。
このとき、アミノ酸からまず窒素を外す必要があります。
その過程で生じるのが、「アンモニア」。アンモニアは神経毒性があり、体内に増えると有害です。
そのため、アミノ酸のエネルギー利用は体にとってコストが高く、限定的なのです。
なぜアミノ酸は“緊急用のエネルギー”なのか?
アミノ酸の炭素部分はエネルギーにできますが、同じく炭素を含むブドウ糖や脂肪酸の方が効率よくエネルギーを生み出せます。
つまり、アミノ酸はあくまで予備のエネルギー源。
本来の役割である「身体の構成材料」として使うのが優先されるのです。
長時間運動中はアミノ酸がエネルギー源になる
特にアミノ酸がエネルギー源として使われやすいのは、長時間の有酸素運動です。
運動初期は糖質や脂質が優先的に使われますが、徐々に糖が枯渇してくると、アミノ酸からもエネルギーが引き出され始めます。
このとき関わるのが、グルコース-アラニン回路です。
グルコース-アラニン回路とは?
- 筋肉のたんぱく質が分解されてアラニンが作られる
- アラニンが血液を通って肝臓へ運ばれる
- 肝臓で窒素が取り除かれ、糖新生が起きる
- グルコースが再び筋肉に運ばれ、エネルギーとして使われる
このサイクルによって、アラニンは血糖値の維持に一役買っているのです。
(※同様に「グルコース-グルタミン回路」というものも存在します)
アミノ酸がエネルギーになりにくい場面
アミノ酸がエネルギーとして使われにくい状況もあります。
たとえば、高強度のトレーニング時。
このときは筋肉への血流が増加し、肝臓への血流が減少します。
すると糖新生のプロセスが回りにくくなり、アミノ酸からのエネルギー供給が効率的に行われなくなります。
飢餓時(絶食時)のアミノ酸利用
安静状態でも糖が不足している(=飢餓状態)の場合、
肝臓には血液がしっかり流れているため、アミノ酸が糖へと変換されやすくなります。
ただしこの場合、筋肉を構成するたんぱく質が分解され、筋肉量が減ってしまうリスクがあります。
つまり、アミノ酸をエネルギーとして使うことは、筋肉を削って燃やす行為でもあるのです。
結論:アミノ酸は“非常用の燃料”
アミノ酸は本来、筋肉や臓器などの構成に使われる重要な材料です。
それがエネルギーとして使われるのは、
・糖質が足りなくなったとき(長時間の運動、飢餓時など)
・肝臓への血流が確保されているとき
・身体がどうにかしてエネルギーを確保しようとしているとき
といった“非常時”だけ。
逆に言えば、アミノ酸がエネルギー源として頻繁に使われるということは、筋肉が削られているサインでもあるということです。
※本記事は、健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断・治療を目的としたものではありません。
症状や体調に不安がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。
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