こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
健康診断の血液検査項目で「BUN」という項目を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
これは腎機能を評価する重要な数値の一つです。
今回は、このBUNについて、分かりやすく、でも専門的な視点から解説していきます。

BUNとは?
BUN(Blood Urea Nitrogen)は、「血中尿素窒素」のことを指します。
たんぱく質が体内で代謝される過程で発生するアンモニアは、肝臓で無害な尿素へと変換されます。この尿素に含まれる窒素の濃度がBUNです。
BUNの正常値
一般的な基準値:8~21mg/dl
この数値が基準を超えても下回っても、身体に何らかの異常がある可能性があります。
BUNが高いときに考えられる原因
BUNが高いということは、血中に尿素が多く残っている状態です。これは以下のような原因で起こります。
① 腎機能の低下
腎臓の「糸球体」でのろ過機能が低下すると、老廃物が尿中へ排出されず、血液中に溜まってしまいます。結果としてBUNが上昇します。
② たんぱく質の過剰摂取
プロテインなどでたんぱく質を多く摂ると、代謝過程でアンモニアが増加 → 尿素も増加 → BUNが高くなります。
「プロテインで腎臓に負担がかかる」という話は、こうした仕組みによるものです。
③ 消化管出血
胃や十二指腸などの出血で、体内でたんぱく質が分解・吸収され、尿素が増加します。
④ 脱水
水分が不足していると、腎臓が尿の排出を抑えようと再吸収を促進します。
結果、尿素が体内に留まり、BUNが上昇します。
⑤ 甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンの過剰分泌により新陳代謝が活性化し、たんぱく質が過剰に分解されるため、BUNが高くなります。
BUNが低いときに考えられる原因
一方で、BUNが低い場合は、体内で尿素があまり作られていないことを示します。
① たんぱく質の不足
食事からのたんぱく質が不足すると、アミノ酸も少なく、代謝で生成されるアンモニアも減少。結果、尿素も少なくなり、BUNが低下します。
② 肝不全
肝臓が機能していないと、アンモニアを尿素へ変換できません。
BUNは低くなりますが、アンモニアは血中に残ったままとなり、肝性脳症(高アンモニア血症)を引き起こすリスクがあります。
主な症状には、意識障害や「羽ばたき振戦(手の震え)」などがあり、非常に危険です。
③ 尿崩症
尿量が異常に多くなる病態で、血中の尿素がどんどん排出されてしまい、BUNが低下します。
たんぱく質とBUNの関係を深掘り
日常の食事から摂取したたんぱく質は、胃や小腸で消化吸収され、アミノ酸として体内に取り込まれます。
これらは以下のような働きを持ちます。
・筋肉・骨・皮膚・内臓の構成
・酵素やホルモンの材料
・赤血球のヘモグロビンの材料
しかし、使いきれなかったアミノ酸は分解され、有害なアンモニアが生じます。
肝臓がこれを無害な尿素に変え、それが腎臓でろ過されて尿として排出されるという流れが、たんぱく質代謝の本質です。
この一連の過程のどこかに異常があれば、BUN値は変動します。
健康診断でBUNが高かったらどうする?
もし健康診断でBUNが高かった場合、以下のようなチェックが必要です。
・水分が足りているか?(脱水状態かどうか)
・プロテインや肉を過剰摂取していないか?
・消化管に異常はないか?
・甲状腺の異常はないか?
・腎機能に問題がないか?(eGFRやクレアチニン値も確認)
反対に、BUNが低すぎる場合は…
・極端なたんぱく質制限や偏食がないか?
・肝臓機能に問題はないか?
・尿の量が多すぎないか?
なども見直す必要があります。
まとめ:BUNはたんぱく質と腎臓・肝臓の連携のバロメーター
BUNという数値は、単なる「腎機能」だけでなく、たんぱく質の摂取量・肝臓の解毒能力・水分バランスなど、全身の栄養・代謝状態を反映しています。
特に、健康志向の方やプロテインを習慣的に摂っている方は、自分のBUN値を定期的にチェックしておくと良いでしょう。
※本記事は、健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断・治療を目的としたものではありません。
症状や体調に不安がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。
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