こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
― なぜマグロは「最強の魚」と呼ばれるのか ―
マグロは、日本人の食文化に深く根付いた魚の代表格です。寿司、刺身、丼、ツナ缶など、私たちの食卓に極めて身近な存在でありながら、「なぜ体に良いのか」「どの部位が栄養的に優れているのか」「毎日食べても問題ないのか」といった疑問に、科学的根拠をもとに答えられる人は意外と少ないかもしれません。
本記事では、マグロの栄養成分、生理学的作用、健康効果、注意点までを、専門的な視点と一般にもわかりやすい言葉の両立を意識して解説します。

マグロとはどんな魚か
マグロはスズキ目サバ科マグロ属に属する回遊魚で、代表的な種類には以下があります。
- クロマグロ(本マグロ)
- ミナミマグロ(インドマグロ)
- メバチマグロ
- キハダマグロ
- ビンナガマグロ(ツナ缶の原料)
共通する特徴は、高速で泳ぎ続けるために発達した赤身筋肉を持つことです。この生理的特性こそが、マグロを「栄養の塊」にしている最大の理由です。
マグロの最大の特徴:赤身に豊富な栄養
赤身が多い=ミトコンドリアが多い
マグロの筋肉は赤身が中心で、これはミオグロビンという酸素を貯蔵するタンパク質が豊富な証拠です。ミオグロビンが多い筋肉には、エネルギー産生を担うミトコンドリアも多く存在します。
その結果、マグロの赤身には以下のような栄養素が集中します。
- 高品質なタンパク質
- 鉄(特にヘム鉄)
- ビタミンB群
- タウリン
マグロのタンパク質の質
消化吸収に優れた動物性タンパク質
マグロは100gあたり約23〜26gのタンパク質を含み、脂質の少ない赤身では非常に高タンパク・低脂質です。
マグロのタンパク質の特徴は、
- 必須アミノ酸バランスが良い
- ロイシンを含み、筋タンパク合成を促進
- 消化吸収率が高い
という点にあります。
これは、筋肉量の維持・増加を目指す人、加齢によるサルコペニア対策、ダイエット中のタンパク源として非常に優秀であることを意味します。
DHA・EPAだけではないマグロの脂質
赤身とトロでは役割が異なる
マグロの健康効果としてよく知られているのが、DHA・EPAです。これらは主にトロ(脂身)に多く含まれます。
DHA・EPAの主な働きは、
- 炎症反応の調整
- 血中中性脂肪の低下
- 血流改善
- 脳神経機能のサポート
一方で、赤身は脂質が少なく、血糖値や総摂取カロリーを気にする人には赤身中心の摂取が適しています。
マグロと脳・神経の関係
DHAは脳の構造そのもの
DHAは脳や網膜のリン脂質の構成成分であり、特に胎児期・乳幼児期・高齢期に重要な脂肪酸です。
近年の研究では、DHA摂取量と、
- 認知機能
- 記憶力
- 神経可塑性
との関連が示唆されています。マグロは、日常的にDHAを摂取できる数少ない食品の一つです。
マグロに含まれる鉄と貧血予防
ヘム鉄の吸収率の高さ
マグロの赤身にはヘム鉄が含まれます。植物性食品に多い非ヘム鉄と比べて、ヘム鉄は吸収率が高く、食事の影響を受けにくいのが特徴です。
特に、
- 女性
- 運動量の多い人
- 成長期
- 高齢者
にとって、マグロは貧血予防に有用な食品と考えられます。
ビタミンB群とエネルギー代謝
マグロには、
- ビタミンB1
- ビタミンB6
- ナイアシン(B3)
- ビタミンB12
などのビタミンB群が豊富です。
これらはすべて、
- 糖質
- 脂質
- タンパク質
をエネルギーに変換する過程で不可欠な栄養素であり、疲労感の軽減や代謝の維持に関与します。
マグロとタウリン
タウリンはアミノ酸様物質で、以下の作用が知られています。
- 胆汁酸の合成促進
- 肝機能サポート
- 血圧調整
- 交感神経の過剰興奮抑制
マグロは魚介類の中でもタウリン含有量が比較的多く、肝臓を酷使しやすい現代人にとって理にかなった食品と言えます。
水銀の問題は大丈夫か?
マグロに関してよく話題になるのがメチル水銀です。確かに大型の回遊魚であるマグロは、水銀を蓄積しやすい傾向があります。
ただし、
- 通常の食生活での摂取量
- 厚生労働省の摂取目安
- 妊娠中の注意喚起
を守っていれば、一般成人が過度に恐れる必要はありません。
重要なのは「毎日大量に食べ続けない」「種類を分散する」ことです。
マグロを健康的に食べるコツ
- 赤身とトロを目的に応じて使い分ける
- 刺身・漬け・加熱など調理法を分散
- 白米だけでなく、海藻・野菜と組み合わせる
- 過剰な摂取を避け、週数回を目安にする
まとめ
マグロは、
- 高品質なタンパク質
- DHA・EPA
- ヘム鉄
- ビタミンB群
- タウリン
をバランス良く含む、極めて完成度の高い食品です。
正しい知識をもとに適量を守れば、マグロは健康・体力・脳機能を支える強力な味方となります。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
参考文献・引用論文
- Calder PC. Omega-3 fatty acids and inflammatory processes. Nutrients. 2010.
- Mozaffarian D, Wu JH. Omega-3 fatty acids and cardiovascular disease. J Am Coll Cardiol. 2011.
- Phillips SM. A brief review of critical processes in exercise-induced muscular hypertrophy. Sports Med. 2014.
- Harris WS et al. Omega-3 fatty acids and coronary heart disease risk. Circulation. 2004.
- EFSA Panel on Contaminants. Scientific opinion on the risk for public health related to the presence of mercury in food. EFSA Journal. 2012.

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