こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
寒い季節になると食べたくなる料理といえば、やはり「ホワイトシチュー」。
湯気の立ちのぼるクリーミーなスープに、柔らかく煮込まれた野菜やお肉。子どもから大人まで安心して楽しめる優しい味わいは、まさに家庭のぬくもりを象徴する一皿です。
しかし、私たちが普段口にしているホワイトシチューには、意外と知られていない歴史や背景があります。
「いつから日本の家庭料理として定着したのか?」
「海外にも同じような料理はあるのか?」
「栄養的な魅力はどこにあるのか?」
本記事では、そんなホワイトシチューの 歴史・豆知識・栄養価・海外との比較 をわかりやすく解説します。
食卓に並ぶ一皿に隠された深いストーリーを知れば、次にホワイトシチューを食べるとき、きっと味わいがさらに広がることでしょう。

ホワイトシチューの歴史
西洋におけるルーツ
ホワイトシチューのもとになったのは、フランス料理の「ベシャメルソース」を使った煮込み料理です。バター、小麦粉、牛乳で作られる白いソースは「ホワイトソース」とも呼ばれ、17世紀にフランス宮廷の料理人ルイ・ド・ベシャメルにちなんで名付けられました。
このソースをベースに鶏肉や野菜を煮込んだ料理がヨーロッパ各地に広まり、日本にも伝わってきました。
日本での普及
明治時代、日本に西洋料理が伝来する中でホワイトソース料理も紹介されましたが、当時の牛乳やバターは高級品で、庶民の食卓には縁遠いものでした。
大きな転機となったのは戦後の高度経済成長期。大手食品メーカーが「シチューの素(ルウ)」を発売し、家庭でも簡単に作れるようになったことで一気に普及しました。これが現在の日本のホワイトシチュー文化の礎となっています。
ホワイトシチューの魅力と分析
味わいの特徴
- まろやかでクリーミー:牛乳やクリームを使ったやさしい味わい。
- 素材のうまみを引き立てる:鶏肉や根菜との相性が抜群。
日本の食文化との相性
- ご飯にもパンにも合わせられる柔軟性。
- 特に「シチューライス」という食べ方は日本独自。
家庭料理としての便利さ
- ルウを使えば失敗しにくく、短時間で完成。
- 一皿で肉・野菜・乳製品が取れるバランス食。
ホワイトシチューの豆知識
日本発祥説
西洋にルーツを持ちながらも、「ルウを使った家庭料理」としてのホワイトシチューは日本独自の発展形。専門家の中には「日本発祥の洋食」と分類する人もいます。
ご飯派 vs パン派
全国調査では「ご飯と食べる」派がやや優勢。地域や世代によって食べ方の傾向が分かれるのも面白い特徴です。
ルウの進化
近年はグルテンフリー、動物性原料不使用、豆乳ベースなど健康志向のルウも増えています。食物アレルギーに対応した製品も登場し、多様化が進んでいます。
季節行事との関係
学校給食や冬の定番メニューとして定着しており、クリスマスや冬休みシーズンに作る家庭も多いです。温かく優しい味が「冬の団らん」を象徴する料理ともいえます。
ホワイトシチューとシチュー文化の違い
世界的には「シチュー=ブラウンシチュー(肉の煮込み)」を指すことが多いですが、日本では「ホワイトシチュー」のほうが先に家庭料理として根付いたのも特徴的です。
栄養と健康効果
主な栄養素
- 乳製品(牛乳・チーズ):カルシウム、ビタミンB2が豊富。
- 鶏肉:高たんぱく・低脂肪で筋肉維持に貢献。
- じゃがいも・にんじん・玉ねぎ:ビタミンCや食物繊維が免疫力を高める。
- ブロッコリー:抗酸化物質が多く、美容や老化予防に効果的。
健康メリット
- 消化が良く、子どもから高齢者まで安心。
- 一皿で栄養バランスが取れる。
- 寒い季節に体を温め、免疫力をサポート。
海外との比較:世界の「ホワイトシチュー」事情
フランス:「ブランケット・ド・ヴォー」
フランスには「ブランケット・ド・ヴォー(Blanquette de veau)」という伝統料理があります。これは仔牛肉を白いソース(クリームと卵黄を使ったソース)でじっくり煮込む料理で、ホワイトシチューに非常に近い存在です。
ただし、日本のホワイトシチューがルウを使って短時間で仕上げるのに対し、フランス料理は出汁をとり、香味野菜で風味を出し、丁寧に煮込むため調理時間も長く、より高級感のある料理とされています。
また、フランスではシチューそのものが「ごちそう」と位置付けられており、家庭料理というよりは特別な日の料理という側面が強いのが特徴です。
アメリカ:「クリームシチュー」と「クラムチャウダー」
アメリカでは「クリームシチュー」という名称で、日本のホワイトシチューに近い料理があります。鶏肉や野菜を牛乳や生クリームで煮込む点は似ていますが、アメリカ版はスパイスやセロリを使うことが多く、より濃厚で風味豊かな仕上がりです。
さらに有名なのが「クラムチャウダー」。特にボストンを中心としたニューイングランド地方では「ニューイングランド・クラムチャウダー」と呼ばれ、あさりやポテトを牛乳で煮込んだ白いスープが伝統料理として親しまれています。一方、西海岸のサンフランシスコでは「パンをくり抜いたサワードウブレッドに入れて提供する」スタイルも有名で、観光名物にもなっています。
このようにアメリカでは、クリーミーな煮込みやスープが広く定着しており、ホワイトシチューの親戚的な料理が豊富です。
イギリスとアイルランド:赤いシチュー文化
イギリスやアイルランドで「シチュー」といえば、多くの場合は「ブラウンシチュー(ビーフシチュー系)」を指します。代表例は「アイリッシュシチュー」で、ラム肉とじゃがいも、玉ねぎ、にんじんを煮込んだシンプルな料理です。
イギリスでは「ホワイトソース」自体は存在しますが、一般家庭でそれをベースに煮込み料理をする習慣は少なく、グレイビーソースをかけた肉料理の方が主流です。
そのため、日本のように「白いシチュー」が家庭料理として広まった背景はなく、ホワイトシチューはむしろ「日本で独自に発展した料理」といえるでしょう。
アジア圏:日本独自の家庭定着
韓国や中国にも西洋料理から取り入れた「クリーム煮」はありますが、いずれもレストランで提供される料理が多く、日本のように「家庭で定番メニュー化」してはいません。
特に韓国では「カルグクス(うどんのような麺料理)」などスープ文化が強く、中国では中華風の白い煮込み(豆乳スープや豆腐煮込み)は存在しますが、西洋式の乳製品を使ったホワイトシチューは一般的ではありません。
そのため、「ホワイトシチューを家族みんなで食べる」という習慣はアジア圏でもほとんどなく、これは日本特有の文化といえます。
海外比較のまとめ
- フランス:高級料理としての位置づけ
- アメリカ:多様なクリーム煮文化
- イギリス・アイルランド:赤いシチューが主流
- アジア:家庭定着は日本独自
まとめ
ホワイトシチューはフランスのベシャメルソースにルーツを持ちながら、日本の家庭文化に根付いた独自の料理です。栄養バランスも良く、子どもから大人まで安心して食べられる「冬の定番」。
さらに海外のシチューと比較すると、日本のホワイトシチューは「ルウ文化」と「家庭料理」とが結びついた特有の進化形であることが分かります。
次にホワイトシチューを作るときには、その歴史や豆知識、そして海外の料理との違いを思い浮かべながら味わってみてください。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
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