こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
ビタミンB₁₂(コバラミン)は、赤血球の形成、神経系の維持、DNA合成などに欠かせない必須ビタミンです。
加齢や胃腸の状態、食生活により、不足しがちな栄養素として知られています。
しかし最新の研究では、「正常値であってもギリギリの状態では認知機能に影響する」ことや、「高すぎてもリスクがある」など、“最適範囲”の再検討が進んでいます。
本記事では、以下の観点から最新知見をわかりやすく解説します。
- 認知機能との関連:正常範囲でも低めだとダメージ?
- 死亡リスクとの関係:U字型リスクの可能性
- 上限摂取量に関する提言:安全でも適量を目指す
- その他の最新研究トピック:炎症や神経変性疾患への作用など

認知機能と「正常値でも低いB₁₂」の影響
UCSFの研究(2025年2月、Annals of Neurology掲載)
平均71歳の健康な高齢者231名を対象に、血中の活性型B₁₂濃度と認知機能の関係を調査したところ、いわゆる「正常範囲」でも低いB₁₂の人々は処理速度が遅く、視覚認識にも遅延が見られ、さらにはMRIにて白質病変が多い傾向が分かりました。
このことから「現行の最低推奨基準では十分ではない可能性」「機能的なバイオマーカーも含めた再定義が必要」との指摘がなされています。
この研究は、ただ数値が正常範囲にあるからOK、という考えを見直すきっかけとなっています。
血清B₁₂と死亡リスク:「低すぎ・高すぎ」の双方でリスク上昇?
Frontiers in Nutrition(2025年)
血清B₁₂が140 pmol/L未満だと死亡リスク(全死因・心血管疾患)が若干増加。一方、700 pmol/L以上では心血管死亡のリスクが上昇するという「U字型」の関係が示されました。
NHANESデータやLURIC研究でも同様の傾向が確認され、サプリ摂取自体は死亡リスクと関連性がなかったことから、「適量の範囲であれば安全」とされています。
つまり、少なすぎても多すぎてもリスクがある点が浮き彫りになりました。
上限設定の検討:食品サプリとしての限界は?
レビュー論文(2025年)
ビタミンB₁₂には定められた耐容上限量(UL)が存在せず、サプリメントでの高用量製品が多く市場に出回っている現状です。
「サプリで1日最大25 µg、2食品(サプリ+食品)合わせて約50 µg程度までなら、薬理作用もなく安全と考えられる」と提案されています。
このような提案は、安全な摂取範囲のガイドライン強化に繋がります。
その他の注目研究トピック
ビタミンB₁₂による「エピドラッグ」効果:炎症抑制の可能性
B₁₂がエピジェネティックな薬(エピドラッグ)として、神経炎症を抑制する効果が期待されており、特にlong-COVIDに関連する過剰な炎症に対する応用示唆があります。
パーキンソン病との関連?
血清B₆・B₁₂が高いとパーキンソン病の発症リスクが増加する可能性という結果も報告されています。ただし因果関係を限定的には捉えきれず、今後の追跡研究が必要です。
ガンリスクとの関係
B₁₂摂取量とがんリスクにU字型の関連が示されました。低すぎでも高すぎても一部のがんリスクが増加しています。
骨とB₁₂
B₁₂欠乏と骨密度低下・骨折リスクとの関連も示唆されており、骨の健康維持においてもB₁₂の適切な摂取が重要とされます。
まとめ:最新研究から見える“B₁₂最適値”とは?
項目 | 最新知見 |
---|---|
認知機能 | 正常範囲でも低めのB₁₂は認知低下リスクある |
死亡リスク | 低すぎ/高すぎ、いずれもリスク増(U字型) |
上限設定 | サプリで25 µg/日、安全と見なす提言あり |
炎症・神経疾患 | エピドラッグとしてのB₁₂に期待あり |
パーキンソン・がん・骨 | 関連の可能性あり、要さらなる研究 |
一般読者へのおすすめポイント
- 50〜70歳以上は、B₁₂値「最低ライン」だけで安心せず、やや余裕を持った維持を検討すべき。
- サプリ摂取は、「不足回避」が目的ではなく、「最適な健康維持」のために行うのが理想。
- 高すぎのリスクもあるため、目安は「サプリ約25 µg/日+食事由来」で合計50 µg程度を上限として意識。
- 定期的な検査や医師・管理栄養士との相談が安心です。
終わりに
最新研究は、「ただの正常値」では満足せず、「最適範囲」に焦点を当てたビタミンB₁₂の理解を促しています。特に認知機能、死亡リスク、炎症抑制など多角的な視点から見直しが求められています。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
参考文献
- UCSF研究:低めの正常B₁₂と認知機能の関係(Annals of Neurology, 2025)(Home, ニューヨーク・ポスト)
- Frontiers in Nutrition(2025):「B₁₂血清濃度と死亡リスク:U字型関係」(Frontiers)
- レビュー:B₁₂上限摂取提言(ドイツBfRなど)(SpringerLink)
- Nature系:「B₁₂のエピドラッグとしての炎症抑制効果」(Nature)
- Neurology誌:高B₆・B₁₂とパーキンソン病リスク関連研究(神経学会)
- ベトナムにおけるB₁₂摂取とがんリスク(U字型関連)(PubMed)
- NHANESによる骨健康とB₁₂の関係調査(ウィキペディア)
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