走り幅跳び|踏切から着地までの動作分析と改善ポイント

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こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。

走り幅跳びは、助走で得たスピードを踏切動作で垂直方向と水平方向の力に変換し、空中動作でバランスを保ちながら着地で最大距離を稼ぐ競技です。

特に踏切から着地までの技術は、距離の伸びを大きく左右します。

本記事では、踏切動作から着地までの流れを専門的に分析し、改善ポイントやトレーニング方法まで解説します。

1. 踏切動作の重要性とメカニズム

1-1. 踏切の目的

踏切の役割は、助走で得た水平速度を保ちながら、必要なだけの垂直速度を加えることです。
水平方向の速度を失いすぎると距離が伸びず、逆に垂直方向に跳びすぎると滞空時間は増えますが水平方向の移動距離が減ります。

理想的な踏切では、

  • 水平方向速度の 90%以上 を維持
  • 垂直方向速度を 2.5〜3.5 m/s 程度確保
    といったバランスが必要とされています。

1-2. 踏切のバイオメカニクス

踏切時の動作は、以下の3フェーズに分けられます。

  1. 接地準備(踏切足接地前)
    • 最後の2歩で重心をやや低くし、踏切足を前方から地面に向かって素早く下ろします。
    • 膝はやや伸ばし気味で接地することで、ストライドを保ちつつ地面への衝撃を吸収。
  2. 踏切(支持期)
    • 接地後、足関節・膝関節・股関節の順で伸展(トリプルエクステンション)。
    • 踏切足の真上よりやや前で重心を通過させる。
    • 腕のスイングと反対脚の振り上げが、垂直速度と姿勢安定に貢献。
  3. 離地
    • 地面反力を効率よく垂直・水平成分に変換。
    • 重心は踏切足より前方にあり、身体がやや前傾した状態で離れる。

2. 空中動作(滞空中の姿勢制御)

踏切後の空中動作は、距離そのものを大きく変えるわけではありませんが、着地動作の効率に直結します。主な空中フォームは次の3種類です。

2-1. ハングスタイル

  • 踏切後に軽く脚を前後に振り、リラックスして滞空する。
  • 初心者〜中級者向け。
  • メリット:動作が簡単で安定しやすい。
  • デメリット:滞空時間が長い選手には不利。

2-2. スライド(スクワット)スタイル

  • 脚を前方に引きつけ、滞空中に膝を軽く曲げてから着地に移行。
  • 中級〜上級者に多い。
  • 着地のタイミングを取りやすく、腰の位置を保ちやすい。

2-3. 走り越し(ヒッチキック)スタイル

  • 滞空中に走るような脚の動きを続ける。
  • 世界トップ選手が多用。
  • 水平速度を維持しやすく、空中姿勢を長く安定させられる。

3. 着地動作の分析

3-1. 着地の目的

  • 最大限に前方へ足を伸ばし、かつ腰の位置を落とさずに砂場へ入る。
  • 身体が後方に倒れると記録が短くなるため、重心位置とバランスが重要。

3-2. 着地の流れ

  1. 脚の前方伸展
    • 腰を引かずに脚をできるだけ前に出す。
    • 股関節屈曲と膝伸展を組み合わせ、かかとから砂場に入る。
  2. 腰の前進
    • 脚を前に出すだけでなく、腰(重心)を足の真上に近づける。
    • 腰が後ろに残ると尻から先に着地してしまい、距離をロス。
  3. 着地後の姿勢制御
    • 脚が砂に入った瞬間に膝を曲げ、上体を前に倒して尻の接地を防ぐ。

4. 改善ポイントとトレーニング

4-1. 踏切改善のためのポイント

  • 短時間で大きな力を発揮する筋力(RFD)の向上
    → プライオメトリクストレーニング(ボックスジャンプ、バウンディングなど)
  • 踏切足の接地時間短縮
    → 片足ホッピングやスプリントドリルで地面反力を素早く活かす。

4-2. 空中動作の改善

  • 空中姿勢は助走速度と踏切の質でほぼ決まるため、フォーム練習と助走の安定が重要。
  • 動画撮影でフォームチェックを行い、体幹のブレを減らす。

4-3. 着地改善

  • 腰の位置を保ったまま脚を前に出す動作をドリルで反復。
  • 砂場以外でもマットを使った着地練習で恐怖感を減らす。

5. まとめ

走り幅跳びで踏切から着地までの動作を改善するには、

  1. 踏切で水平速度を落とさず必要な垂直速度を生む
  2. 空中で姿勢を安定させ、着地動作にスムーズにつなぐ
  3. 着地で腰を前に運び、後方転倒を防ぐ
    この3点が重要です。

踏切の瞬間から着地の砂煙まで、すべてが一連の動作としてつながっているため、部分的な修正だけでなく全体の流れを意識したトレーニングが効果的です。

※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。

参考文献

  1. Hay, J. G. (1993). The biomechanics of the long jump. Exercise and Sport Sciences Reviews, 21(1), 401–446.
  2. Bridgett, L. A., & Linthorne, N. P. (2006). Changes in long jump take-off technique with increasing run-up speed. Journal of Sports Sciences, 24(8), 889–897.
  3. Lees, A., Graham-Smith, P., & Fowler, N. (1994). A biomechanical analysis of the last stride, touchdown, and takeoff characteristics of the men’s long jump. Journal of Applied Biomechanics, 10(1), 61–78.

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著者
トレーナー育成講師

運動 × 栄養 × 体づくりの専門家
ブログ記事200本以上を執筆し、
正しい知識をわかりやすく発信中。

保有資格
・NESTA-PFT
・NSCA-CPT

経歴・活動
・パーソナルトレーナー
・リラクゼーションセラピスト
・トレーナー養成スクール講師
・トレーナーアカデミー講師
(年間500回以上の講義)
・転職キャリアアドバイザー

実績
・トレーナー300名以上育成
・SNS総フォロワー数 20,000人以上
・新R25に掲載実績あり
https://r25.jp/articles/928885030159646720

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