IGF-1(インスリン様成長因子-1)とは? 成長と健康のカギを握るホルモン

生理学
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こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。

IGF-1(Insulin-like Growth Factor-1)は、私たちの体の成長や健康維持に欠かせない重要なタンパク質です。名前の通り「インスリンに似た成長因子」であり、主に肝臓で作られ、成長ホルモン(GH)の働きを仲介する役割を果たします。

この記事では、IGF-1の基本的な役割から最新の研究成果まで幅広く解説し、一般の方にも理解しやすいように丁寧に説明します。

1. IGF-1の基礎知識

1-1. IGF-1とは?

IGF-1は「インスリン様成長因子-1」と呼ばれ、体内の細胞増殖や分化を促進するタンパク質ホルモンの一種です。成長ホルモンの刺激を受けて肝臓で産生され、血流を通じて全身の組織に作用します。

1-2. IGF-1の役割

  • 成長促進
    骨や筋肉の成長を促し、特に子どもや思春期の成長期には不可欠です。骨の長さを伸ばすことで身長の伸びに寄与します。
  • 筋肉の維持・増強
    筋細胞の合成を促進し、筋肉量の増加や維持に関わります。アスリートの筋力トレーニングにも重要な因子です。
  • 細胞の修復・再生
    傷ついた組織の修復や新陳代謝を促進し、健康な体づくりをサポートします。
  • 代謝調節
    インスリンに似た作用も持ち、血糖値や脂質代謝にも影響を与えます。

2. IGF-1と成長ホルモンの関係

成長ホルモン(GH)は脳の下垂体から分泌され、直接体の成長を促すわけではありません。むしろGHは肝臓に作用してIGF-1の分泌を促します。IGF-1が血流に乗って骨や筋肉などの組織に届き、成長を促進する仕組みです。

この「GH → IGF-1 → 成長促進」という流れは「GH/IGF-1軸」と呼ばれ、成長や代謝を支える重要な生体システムです。

3. IGF-1の分泌と年齢変化

IGF-1の分泌は年齢とともに変化します。子どもの成長期には非常に高く、成人になると安定し、さらに高齢になると徐々に減少します。

  • 成長期:IGF-1はピークに達し、身長や体格の伸びを支えます。
  • 成人期:筋肉の維持や代謝の調節に重要な役割を果たします。
  • 高齢期:減少により筋肉量減少や骨密度低下(骨粗鬆症)に影響を与え、老化の一因と考えられています。

4. IGF-1が関わる健康リスクとメリット

4-1. IGF-1のメリット

  • 筋肉量の増加
    筋肉のタンパク質合成を促進し、筋力アップや筋肉の維持に貢献します。
  • 骨密度の維持
    骨形成を促すため、骨粗鬆症の予防に役立ちます。
  • 組織修復促進
    怪我や運動後の回復を早めます。

4-2. IGF-1の過剰とがんリスク

一方で、IGF-1は細胞増殖を促すため、過剰に存在するとがん細胞の増殖を助長する可能性も指摘されています。実際、乳がんや前立腺がんなどのリスク上昇と関連付けられる研究もあります。

そのため、IGF-1のバランスが重要であり、適切なレベルの維持が健康にとって理想的とされます。

5. IGF-1の増やし方・減らし方

5-1. IGF-1を増やす方法

  • 適度な運動
    特に筋トレやレジスタンス運動はIGF-1の分泌を促進します。
  • 十分なタンパク質摂取
    良質なタンパク質は筋肉合成を助け、IGF-1の活性にも関与します。
  • 成長ホルモンの分泌促進
    十分な睡眠やストレスコントロールも成長ホルモンの分泌を促します。
  • 適切な体脂肪率の維持
    極端な肥満や痩せすぎはIGF-1のバランスを崩す可能性があります。

5-2. IGF-1を減らす必要がある場合

  • がんリスクが高い人は医師と相談し、栄養や生活習慣を調整することが重要です。

6. IGF-1とアンチエイジング

近年、IGF-1はアンチエイジング分野でも注目されています。IGF-1は老化に伴う筋肉量減少や骨密度低下を防ぎ、若々しい体の維持に役立つ一方で、長寿研究ではIGF-1の低下が寿命延長に関与するという逆のデータも存在します。

このため、IGF-1の理想的なレベルは個人の健康状態や年齢によって異なり、一律の基準はありません。

7. IGF-1の測定と検査

血液検査でIGF-1の値を測定することができます。医療機関では成長障害の診断やホルモン異常のチェック、がん治療の一環として検査されることがあります。

正常値は年齢や性別で異なるため、検査結果は医師と相談しながら総合的に判断します。

8. まとめ

IGF-1は私たちの成長、筋肉維持、代謝、細胞修復に深く関わる重要なホルモンです。成長ホルモンとの連携で体のさまざまな機能を支え、健康的な生活を維持するうえで欠かせません。

一方で、過剰なIGF-1はがんリスクを高める可能性もあるため、適度なバランスを保つことが大切です。

運動や食事、生活習慣を整え、健康的なIGF-1レベルを目指しましょう。

※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。

参考文献・論文

  1. Juul, A. (2003). Serum levels of insulin-like growth factor I and its binding proteins in health and disease. Growth Hormone & IGF Research, 13(4), 113-170.
  2. Clemmons, D. R. (2007). Modifying IGF1 activity: an approach to treat endocrine disorders, atherosclerosis and cancer. Nature Reviews Drug Discovery, 6(10), 821-833.
  3. Pollak, M. (2008). Insulin and insulin-like growth factor signalling in neoplasia. Nature Reviews Cancer, 8(12), 915-928.
  4. Yakar, S., Rosen, C. J., Beamer, W. G., et al. (2002). Circulating levels of IGF-1 directly regulate bone growth and density. Journal of Clinical Investigation, 110(6), 771-781.
  5. Sonntag, W. E., et al. (2012). Growth hormone and insulin-like growth factor-1 (IGF-1) and their influence on cognitive aging. Ageing Research Reviews, 11(2), 262-271.

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著者
トレーナー育成講師

運動 × 栄養 × 体づくりの専門家
ブログ記事200本以上を執筆し、
正しい知識をわかりやすく発信中。

保有資格
・NESTA-PFT
・NSCA-CPT

経歴・活動
・パーソナルトレーナー
・リラクゼーションセラピスト
・トレーナー養成スクール講師
・トレーナーアカデミー講師
(年間500回以上の講義)
・転職キャリアアドバイザー

実績
・トレーナー300名以上育成
・SNS総フォロワー数 20,000人以上
・新R25に掲載実績あり
https://r25.jp/articles/928885030159646720

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