こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
「もっと痩せたい」「筋肉をもっと大きくしたい」「二の腕の形が気になる」——こうした外見へのこだわりは、多くの人が少なからず持っています。
しかし、それが過剰になり、日常生活や人間関係に影響を与えるほど強くなると、運動や食事の取り組み方にも偏りが出ることがあります。
このような外見への強いこだわりは、
医療の分野では「身体醜形障害(Body Dysmorphic Disorder:BDD)」と呼ばれることがありますが、パーソナルトレーナーとしては診断や治療を行う立場にはありません。
私たちができるのは、「安全で健康的な運動習慣の提案」と「ポジティブな自己イメージのサポート」です。
本記事では、外見へのこだわりが強い方への運動サポートのポイントを、パーソナルトレーニングの視点から解説します。

外見へのこだわりが強い人の特徴(一般的傾向)
パーソナルトレーニングの現場では、以下のような行動や考え方が見られることがあります。
- 鏡やスマホで体型チェックを頻繁に行う
- 特定の部位(例:腹、太もも、腕)ばかり気にする
- 体型のわずかな変化にも敏感に反応する
- 数値(体重、体脂肪率)へのこだわりが強い
- 過剰な運動や食事制限を繰り返す
これらは誰にでも一時的に起こることがありますが、長期化すると心身の負担が大きくなる可能性があります。
そのため、トレーナーはクライアントの目標や運動の背景をしっかり把握し、「健康面を優先したプラン」を提案することが重要です。
パーソナルトレーナーができるサポートの方向性
1. 健康指標を重視する
体重や体脂肪率だけでなく、体力テストの結果、日常生活の動きやすさ、疲れにくさなど、健康の指標を複数使います。
これにより、「外見だけ」から「機能的な健康」への意識を広げやすくなります。
2. 目的を「見た目」から「できること」に広げる
例:
- 「腹筋を割る」 → 「体幹を強くして姿勢を良くする」
- 「脚を細くする」 → 「下半身の筋力をつけて階段を楽に上がる」
こうした機能面のゴール設定は、モチベーションの方向性を変える効果があります。
3. 数字だけで判断しない習慣づくり
毎日の体重測定をやめ、週単位や月単位で変化を見るよう提案することも有効です。
また、ウエストサイズや服の着心地、運動パフォーマンスなど、多角的な評価方法を導入します。
4. セッション中のポジティブな声かけ
「この動きができるようになった」「持ち上げられる重さが増えた」など、成果を能力や努力にフォーカスして伝えることで、外見以外の価値を感じてもらいやすくなります。
過剰な運動や食事制限を避けるための工夫
運動面
- 休養日をしっかり設ける
- 有酸素運動と筋トレのバランスを取る
- 高強度ばかりではなく低〜中強度のメニューも活用
栄養面(一般的なアドバイスの範囲で)
- 極端な糖質・脂質制限は避ける
- 主食・主菜・副菜をバランスよく
- 水分を十分に摂る
※食事制限の具体的な指示は管理栄養士など専門資格者の領域であるため、トレーナーは「基本的な食事バランス」や「食習慣改善のヒント」を伝える程度にとどめます。
セルフイメージを改善するトレーニングの工夫
- フォーム習得型メニュー
新しい動作を覚える楽しさが、体型以外の達成感につながります。 - 小さな成功体験を積み重ねる
軽い負荷から始めて「できた!」を繰り返す。 - 仲間との交流
セミパーソナルやグループレッスンで、外見ではなく動きやパフォーマンスを評価し合える環境を作る。
トレーナーが避けるべき対応
- 「痩せたらもっと○○に見える」など外見を直接評価する言葉
- 無理な減量や過度な筋肥大を促す指示
- 他人の体型と比較する発言
これらは、外見へのこだわりを強めてしまう可能性があります。
まとめ
パーソナルトレーナーの役割は、単に体型を変えるだけではなく、クライアントが健康的で持続可能なライフスタイルを築く手助けをすることです。
外見に強いこだわりを持つ方には、体型以外の価値に目を向けてもらう運動指導や、数字以外の成果を評価する習慣づくりが効果的です。
最終的には、運動が「体を変える手段」から「生活を豊かにする習慣」へと変わることが、心身の健やかさにつながります。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
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