こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
健康や運動の話をしているとよく出てくる「コルチゾール」というホルモン。
ストレスホルモンとも呼ばれますが、その本当の役割や仕組みについて正しく理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、コルチゾールの基礎から、分泌の仕組み、生活習慣との関わりまで、科学的な視点でわかりやすく解説します。
「疲れやすい」「朝がつらい」「集中力が続かない」と感じている方にも役立つ内容です。

1. コルチゾールとは?
コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンの一種です。
体内では主に以下のような働きを持ちます。
- エネルギー代謝の調整(糖質・脂質・たんぱく質の分解を促す)
- 炎症反応の抑制
- 血圧の維持
- ストレスに対する適応反応のサポート
「ストレスホルモン」という呼び名は、外的・内的ストレスに対して体を守るために分泌量が増える性質からきています。
2. コルチゾールの分泌リズム(サーカディアンリズム)
コルチゾールの分泌量は、1日の中で大きく変化します。
この変動は「サーカディアンリズム(概日リズム)」と呼ばれ、主に以下のような特徴があります。
- 起床直後に最も高くなる(コルチゾールアウェイクニングレスポンス)
朝、体を活動モードに切り替えるために一気に分泌が増えます。 - 昼から夕方にかけて徐々に低下
日中の活動で消費するエネルギーを補うために安定的に分泌。 - 夜間は最も低くなる
睡眠を促すため、夜は分泌が減ります。
このリズムが崩れると、睡眠の質や日中の集中力にも影響する可能性があります。
3. コルチゾールの主な働き
3-1. エネルギー供給
コルチゾールは、肝臓で糖新生を促進し、血糖値を上昇させます。
これは、ストレスや運動などで瞬間的にエネルギーが必要なときに備えるための反応です。
3-2. 代謝の調節
- 糖質:肝臓でグルコースを合成し血中へ放出
- 脂質:脂肪分解を促して脂肪酸をエネルギー源として利用
- たんぱく質:筋肉などのたんぱく質を分解し、糖新生の材料に
3-3. 炎症・免疫の抑制
コルチゾールには、免疫反応や炎症を抑える作用があります。
これは短期間では有益ですが、長期的に過剰になると免疫力低下や感染症リスクの増加にもつながります。
4. コルチゾールとストレスの関係
コルチゾールは、ストレス反応の中心的なホルモンです。
ストレスを感じると、脳の視床下部→下垂体→副腎というルート(HPA軸)を通じて分泌が増えます。
ストレスの種類
- 物理的ストレス(運動・ケガ・寒暖差)
- 心理的ストレス(プレッシャー・不安)
- 生理的ストレス(病気・睡眠不足)
どのストレスでも、体は「闘争か逃走」反応を起こし、コルチゾールを使って対応します。
5. コルチゾールのバランスが崩れると?
コルチゾールは多すぎても少なすぎても問題が生じます。
過剰状態が続く場合(高コルチゾール状態)
- 睡眠の質低下
- 筋肉量の減少
- 内臓脂肪の増加
- 血圧上昇
- 集中力・記憶力の低下
不足状態(低コルチゾール状態)
- 慢性的な疲労感
- 低血圧
- 集中力低下
- モチベーションの低下
6. コルチゾールと生活習慣
6-1. 睡眠
睡眠不足はコルチゾールリズムを乱し、日中のストレス反応を過剰にします。
就寝・起床時間を一定に保つことが大切です。
6-2. 運動
適度な運動はコルチゾールリズムを整える一方、過度な運動は慢性的な高コルチゾール状態を招くことがあります。
6-3. 食事
急激な血糖変動はコルチゾール分泌を刺激します。
バランスの取れた食事がホルモン安定に役立ちます。
6-4. メンタルケア
瞑想や深呼吸などのリラクゼーション法は、HPA軸の過剰な反応を抑える効果が報告されています。
7. コルチゾールを味方につけるために
- 朝は太陽の光を浴びる(サーカディアンリズムの安定化)
- 睡眠の質を高める
- 運動は「高強度+休養」のメリハリをつける
- ストレスマネジメントの習慣を持つ
- 栄養バランスを意識した食事を心がける
コルチゾールは悪者ではなく、私たちの生命活動に欠かせないホルモンです。
大切なのは、その分泌バランスを保つことです。
まとめ
コルチゾールは、エネルギー供給、代謝調節、炎症抑制、ストレス対応など、私たちの生命維持に不可欠な働きを持つホルモンです。
「ストレスホルモン」という呼び名だけで悪者扱いするのではなく、その役割や仕組みを理解することが大切です。
日々の生活習慣を整えることで、コルチゾールはあなたの健康とパフォーマンスを支える強力な味方になります。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
参考文献・引用
- Sapolsky RM, Romero LM, Munck AU. “How do glucocorticoids influence stress responses? Integrating permissive, suppressive, stimulatory, and preparative actions.” Endocrine Reviews. 2000 Feb;21(1):55-89.
- Gunnar MR, Quevedo KM. “The neurobiology of stress and development.” Annual Review of Psychology. 2007;58:145-173.
- Tsigos C, Chrousos GP. “Hypothalamic–pituitary–adrenal axis, neuroendocrine factors and stress.” Journal of Psychosomatic Research. 2002 Oct;53(4):865-871.
- Kudielka BM, Kirschbaum C. “Sex differences in HPA axis responses to stress: a review.” Biological Psychology. 005 Apr;69(1):113-132.
- 日本内分泌学会「副腎皮質ホルモンと健康」https://www.j-endo.jp/
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