こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
100m走は、シンプルで奥深い「陸上競技の王道」。
スタートからゴールまで10秒前後という短い時間の中で、選手たちは加速・トップスピード・減速抑制という複雑なプロセスを正確にこなしています。
実はこの100mという距離、ただ全力で走るだけでは勝てません。
「速く走るためのフォーム作り」こそが、記録更新のカギを握っているのです。
この記事では、100m走における3つの走行フェーズに分けて、走りを効率化し、タイム向上につなげるフォームのポイントを丁寧に解説していきます。

✅ そもそも「良いフォーム」とは?
速いスプリンターに共通するフォームの特徴は以下の3つです。
- 無駄な動きが少なく、推進力をロスしない
- 地面からの反力をうまく利用できている
- 身体の連動性(腕と脚・体幹の協調)が高い
これらはすべて「効率的な動作」に通じています。
効率を高めることが、最終的にスピードへとつながるのです。
🚦 フェーズ①|スタート~加速局面(0〜30m)
100m走の最初の30mは、「最大出力」を使ってスピードを上げる区間です。
このとき、フォームで最も重要なのは重心の角度と力の伝え方です。
✔ フォームのコツ
- スタート直後は体全体を斜めに倒したまま走り出す
- 脚はできるだけ後ろに力強く蹴り出す(前に出すより、後ろに押す)
- 腕の振りは後方に速く・大きくを意識する
- 背中が丸くならないよう、軸を保ちながら前傾をキープ
✔ 意識すべき筋群
- 大臀筋(お尻)とハムストリングス(裏もも)
- 体幹の安定性が、パワーを無駄なく伝えるカギ
❗ よくあるNGフォーム
- 腰が引けて後傾になる → 推進力が逃げやすくなる
- 体をすぐに起こしてしまう → 加速時間が短くなる
🚀 フェーズ②|トップスピード局面(30〜60m)
中盤に差しかかるこの区間では、すでに最高速度に近づいています。
ここで重要なのは、「そのスピードをいかに効率的に維持できるか」です。
✔ フォームのコツ
- 地面への設置時間を短く保つ(スナップの効いた接地)
- 接地はミッドフットで“地面を感じる”ように
- 骨盤を前傾させ、脚の回転(ピッチ)を素早く
- ストライドは無理に広げず、自然な歩幅で伸ばす
✔ 推進力を生み出す要素
- 上半身と下半身の連動(特に「骨盤→膝→足」)
- 腕振りの“引き戻し”動作 → 脚の動きと連動することでリズムを整える
❗ 注意したいポイント
- 脚が流れる(後方に蹴りすぎる) → ブレーキになる
- 骨盤が後傾して背中が丸まる → 推進力が弱くなる
この区間では、速さそのものよりも「安定した速度の維持」が目標です。
🧱 フェーズ③|減速抑制・後半維持(60〜100m)
レース後半、特に80m以降では誰でもスピードが少しずつ落ち始めます。
この“減速”を最小限に抑えるためのフォーム維持が、最終結果に大きく影響します。
✔ フォームのコツ
- 体幹を安定させ、姿勢を崩さない意識
- 腕の振りでテンポを保つ(脚が疲れてもリズムは維持)
- 接地の“雑さ”を防ぐ意識 → 疲れてもミッドフットをキープ
✔ 必要な能力
- ハムストリングスと体幹の持久力・スタビリティ
- メンタル的な集中力(姿勢の崩れは意識の乱れから起きる)
❗ NGフォームの例
- 上半身が左右にブレる → 推進力が逃げる
- 頭が上下に揺れる → 接地タイミングが狂う
後半こそ、**フォームを維持する“技術力”と“意識力”**が試されるフェーズです。
🛠️ フォーム改善のためのドリル・補助練習
フォームを改善するには、日々の練習での意識と補助的なドリルが効果的です。
おすすめのフォームドリル
ドリル名 | 効果 |
---|---|
Aスキップ | 脚の引き上げとリズムの感覚習得 |
ハイニー | 腰を高く保つ意識と回転の強化 |
ドリルスプリント(制約付きラン) | 接地や前傾を意識したスプリント |
メディスンボールスロー | 上半身と下半身の連動性強化 |
補助練習のポイント
- 自分のフォームを動画でチェックして客観視する
- 短い距離(10m, 20m)で意識練習を繰り返す
- 鏡やシャドーで姿勢と角度を可視化する練習も有効
📝 フォーム改善は“意識と習慣”の積み重ね
フォームは一朝一夕では改善しません。
日々の走りの中で「今日はここに集中してみる」「この動画を参考にしてみよう」といった小さな試行錯誤が、確実に自分の走りを変えていきます。
まずは「スタートで腰が落ちてないか?」「中盤で頭が揺れてないか?」といった観点で、チェックしてみるだけでも十分です。
✅ まとめ:速く走るためには“フォームの質”がカギ
100m走のフォームを磨くことで、スピードや加速力が自然と高まり、記録更新にもつながります。
✅ 加速では前傾姿勢と地面反力の使い方
✅ 中盤は上下動を抑え、リズムを保つ
✅ 後半はフォーム維持と集中力が重要
✅ フォーム改善には地道なドリルと動画分析が有効
自分の走りを一つひとつ見直すことで、記録も感覚も変わっていきます。
ぜひこの機会に、“ただ走る”から“考えて走る”フォーム習得を目指してみてください。
※本記事はスプリント技術やトレーニングの一般的な情報提供を目的としており、医学的・治療的アドバイスは含みません。
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