こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
~ピッチャーにとっての筋トレの重要性とは?~
「筋トレをすると腕が太くなってコントロールが悪くなる」
「投手は走り込み中心で十分」
そう信じている方は、まだ少なくありません。しかし近年、MLBやNPBの現場では、科学的根拠に基づいた「投手専用の筋トレ」が導入され、球速・制球力・肩肘の保護において大きな成果を上げています。
野球のピッチャーに必要なのは、単なる筋力アップではなく、「投球動作に直結する機能的な筋力の向上」です。本記事では、ピッチャーが取り組むべき筋トレの基本から、部位別トレーニング、避けるべき誤解まで、専門的に解説します。

投手に必要な筋力とは?パフォーマンスを支える5つのポイント
投手のパフォーマンスは、筋力だけでは語れません。しかし、適切な筋トレによって次の5つの能力を高めることが可能です。
- 球速の向上(下半身の爆発力・体幹の伝達力)
- 制球力の安定(肩甲骨・股関節の可動性)
- ケガ予防(インナーマッスル・肩周囲筋の強化)
- リカバリー能力(血流促進・関節の安定性)
- スタミナ維持(筋持久力の向上)
これらをバランスよく鍛えることで、「速く、正確に、長く」投げ続ける力を養うことができます。
筋トレにおける重要な原則:投手は“野球の動き”を再現せよ
投手が筋トレを行う際に大切なのは、「野球特有の動作」に基づいた設計です。筋肉を単純に大きくするだけでは、動作が硬くなり、制球を乱す原因にもなりかねません。
そのため、以下の原則が重要になります。
・多関節トレーニング(スクワット・デッドリフト・プッシュプレス)を中心に
・分離と連動を意識(股関節と肩甲骨の協調)
・フォームと可動域を重視した軽中量負荷での高精度反復
投手のための部位別トレーニング
① 下半身(爆発力と安定性の土台)
投球動作は「地面反力」から始まります。下半身の筋力は球速とスタミナに直結します。
・スクワット(ヒップ主導)
・ブルガリアンスクワット(片脚の安定性)
・ジャンプトレーニング(パワー発揮)
② 体幹(パワー伝達と回旋力)
「体幹トレーニング=プランク」だけでは不十分。ピッチャーには回旋動作に耐える・作る体幹が必要です。
・メディシンボール・ツイストスロー
・パラオリフト(アンチローテーション)
・デッドバグやハーフニーストレッチ with ケーブル
③ 肩・肩甲骨周囲(制球力とケガ予防)
投球は高速な肩の外旋・内旋の繰り返し。肩関節を支えるインナーマッスル群(ローテーターカフ)の強化が重要です。
・バンデッド・フェイスプル
・エクスターナルローテーション(ゴムチューブ)
・肩甲骨プッシュアップ
④ 前腕・手首(細かい制御と疲労耐性)
リリースの瞬間を制御するのは、前腕の細かな筋肉群。指や手首の強化はコントロールにも影響します。
・リストカール/リバースカール
・グリップトレーナー使用
・指を使った重り回しトレーニング
トレーニング頻度と年間計画(ピリオダイゼーション)
オフシーズン
高負荷トレーニングで筋力とパワー向上
可動域とフォームの修正
筋量増加フェーズ(3〜4日/週)
プレシーズン
パワー重視(クイックリフト・スプリント)
投球とのバランスを意識(2〜3日/週)
シーズン中
ケガ予防・維持メイン
負荷を軽減しつつ、機能性維持(1〜2日/週)
投手が避けたいNG筋トレ3選
投手のパフォーマンスを下げたり、故障につながる危険な筋トレには注意が必要です。
① ベンチプレスのやりすぎ
胸筋が硬くなり、肩甲骨の可動性が低下。フォームが崩れる原因に。
② 高重量のアームカール
肘や前腕に過度なストレスがかかり、疲労骨折や炎症の原因に。
③ 投球直前の筋肉肥大系トレーニング
プレー直前にパンプアップを狙うような高負荷トレーニングは、可動域を制限し、パフォーマンス低下を招きます。
まとめ:投手の筋トレは「投げる体」をつくる科学
投手にとっての筋トレとは、単にパワーアップを狙うものではなく、
投球動作に必要な可動域と連動性を確保しながら
全身の力を効率的にボールへ伝える「動ける身体」をつくること
が最大の目的です。
現代のトレーニング理論を取り入れ、正しい知識で積み重ねていけば、球速・制球・スタミナのすべてを向上させることができます。
「走って、投げて、壊れる」時代は終わりました。
これからは、科学で鍛える“投げる身体”を手に入れましょう。
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