糖質と脂肪の利用による呼吸交換比について

こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。

生理学の基本的な知識は、すべての運動指導者にとって必要な科目です。

少しでも参考になればと思いますので、是非ご覧ください。

呼吸交換比

①息を吸って酸素を身体の中に取り込む量
②息を吐いて二酸化炭素を身体から出す量

この2つの比率のことを呼吸交換比といいます。

ここで、仮に酸素を取り込んだ時に糖質のみでエネルギー化した場合二酸化炭素はどのくらい出るのか?

また、酸素を取り込んだ時に脂質のみでエネルギー化した場合二酸化炭素はどのくらい出るのか?

この2つのパターンを比較してみたいと思います。

酸素摂取量と二酸化炭素排出量の比から求めてみましょう。

糖質であるグルコースはC₆H₁₂O₆で表すことができます。

これを見ると炭素と同じ数だけ酸素があることが分かるでしょう。

続いて脂肪酸で考えてみましょう。

脂肪酸のパルミチン酸はC₁₆H₃₂O₂で表すことができます。

これを見るとどうでしょう?炭素に対して酸素が少ないことが分かると思います。

そこで同じ酸素摂取量でエネルギーを生み出すとき、

酸素を吸ってエネルギーが作られ、二酸化炭素になるのは糖質の方が多い。
ようは脂質からよりも、もともと自分自身に酸素を持っている分だけ、二酸化炭素排出量が多くなることがこれで分かりました。

⇩化学式
グルコース  C₆H₁₂O₆ + 6O₂   = 6CO₂ + 6H₂O
パルミチン酸 C₁₆H₃₂O₂ + 23O₂  = 16CO₂ + 16H₂O

グルコースでは6モルのO₂(酸素)に対して6モルのCO₂(二酸化炭素)ができるのに対して、
パルミチン酸では23モルのO₂(酸素)に対して16モルのCO₂(二酸化炭素)しかできない。

ということで酸素摂取量に対する二酸化炭素の呼吸交換比は、
脂質を多く使っていれば小さくなり、糖質を使えば大きくなるということです。

グルコースは6/6=1.0
パルミチン酸は16/23=0.7

ただし、本来からいえば上のグルコースの化学式のように、糖質のみを使うと呼吸交換比1.0になるはずなのですが、

実際には体内の酸塩基平衡(酸性物質とアルカリ性物質のバランス)は、
H₂O + CO₂ ←→ H⁺ + HCO₃⁻
によって保たれています。

強度が上がると血液中にH⁺(水素イオン)が増えることになるので、この平衡を保つために二酸化炭素を外に排出しようとする反応が生まれます。

このように人間の体内は常に中性に保とうとするわけです。
※性格には弱アルカリ性

ですので強度の非常に高い運動時には、呼吸交換比は通常1.0を超えることになるでしょう。(二酸化炭素の排出量が通常よりも増えるから)

最大酸素摂取量の判定基準として呼吸交換比が1.10を超えることが目安となっているように、強度の高い運動では呼吸交換比で糖質と脂肪の利用を判定することは無理だと思います。

酸素摂取量と二酸化炭素排出量の比のことを呼吸商といわれまずが、この呼吸商は二酸化炭素の過剰排出を含まない概念でありますので、強度の高い運動では酸素摂取量と二酸化炭素排出量の比は呼吸商ではありません。

呼吸交換比という名称が正解になります。

運動強度による呼吸交換比の変化

運動強度に対して呼吸交換比はどのように変化するのでしょうか?

安静時の呼吸交換比は0.75~0.80程度です。

これは、安静時に脂質だけが使われているのであれば、呼吸交換比は0.7程度のはずです。

実際には糖質も一緒に使っていますので、0.7よりも若干多めの数値になっていますね。

安静時の糖質:脂肪の利用比率は1:2程度でありますので、脂質をメインに使っているのですね。

安静時にも脳は基本的には糖質によってエネルギーを得ていますので、脂質だけ使って生活をしているわけではなく、脳を中心に糖質も同時に使われているのです。

そして運動強度(有酸素運動レベル)が上がっていくと、呼吸交換比は徐々に上がっていきます。

ということは、糖質の利用量が上がっている説明になりますね。

ただし、脂質の割合は下がりますが、利用量の絶対値では上昇しています。

そしてさらに強度が上がっていく(無酸素運動レベル)と呼吸交換比が1.0に近づいていき、糖質の利用が過剰に増え、脂質の絶対利用量が下がってしまいます。

さらに強度が上がると呼吸交換比は1.0を超えるというわけなのです。

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