こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
エネルギー切れの正体、知っていますか?
「最近トレーニング中にバテるのが早い…」
「なんだか集中力が続かない」
そんな悩みを感じたことはありませんか?
それ、“グリコーゲン不足”が原因かもしれません。
筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲンは、私たちの身体にとって最も重要なエネルギー源のひとつ。
特に、運動時や集中力を要するシーンでは、このグリコーゲンの存在がパフォーマンスを大きく左右します。
しかしグリコーゲンは、使われるのは一瞬でも、回復には時間がかかるという厄介な特徴を持っています。
本記事では、
・グリコーゲンがどこに蓄えられ
・どのように分解・合成され
・どうすれば素早く回復できるのか
を、トレーナー目線で分かりやすく解説していきます。
競技者や運動習慣のある方はもちろん、ダイエット中の方にも役立つ内容です。
グリコーゲンを味方につけて、賢く身体を動かしていきましょう。

グリコーゲンとは?
グリコーゲンとは、グルコース(ブドウ糖)が多数結合してできた多糖類で、体内にエネルギーとして蓄えられます。主に筋肉と肝臓に貯蔵されています。
・筋肉:およそ1500kcal分
・肝臓:およそ500kcal分
肝臓のグリコーゲンは食事をすると増え、空腹時に減少するというサイクルを繰り返しています。
【筋肉と肝臓の違い】
グリコーゲンの「濃度(密度)」だけで見ると肝臓の方が高濃度です。
しかし筋肉は体全体の割合が多いため、全身では筋肉に最も多くのグリコーゲンが蓄えられていることになります。
そのため、筋肉は血中グルコースの取り込み量も多く、血糖値の調整に大きく関与しています。
【グリコーゲンの構造と分解】
グリコーゲンは、直線的に並ぶだけでなく、枝分かれ構造を持つことで素早い分解が可能になっています。
運動時、特に強度の高い運動では、このグリコーゲンの分解がエネルギー供給において重要な役割を果たします。
分解の流れ
- グリコーゲンホスホリラーゼの働きで、グリコーゲンはグルコース1リン酸に分解されます(ここが律速段階)。
- グルコース1リン酸 → グルコース6リン酸に変換。
- 以降は通常の糖代謝(解糖系)へ。
この分解は、運動開始直後から急速に進行します。なぜなら、運動によりADPやリン酸濃度が上昇し、グリコーゲンホスホリラーゼやホスホフルクトキナーゼが活性化されるからです。
しかしこの活性は長時間持続せず、100m走のような短時間の高強度運動では数十秒で低下する傾向にあります。
これは、グリコーゲンを急激に使い切らないようにするための保護的なメカニズムとも考えられます。
筋グリコーゲンの合成と回復の仕組み
【グリコーゲンの合成経路】
筋肉に取り込まれたグルコースは、まずグルコース6リン酸へと変換され、最終的にグリコーゲンシンターゼの働きによってグリコーゲンになります。
この合成も、グリコーゲン代謝の中で律速段階となっています。
【筋グリコーゲンの回復は簡単ではない】
激しい運動後、筋グリコーゲンは大きく減少します。これにより筋収縮力が低下し、疲労感が増すため、素早くグリコーゲンを回復させることがパフォーマンス維持に重要です。
ですが、回復には時間がかかります。
・筋グリコーゲンの総量:約1500kcal
・脳など、安静時でも糖質は1日700kcal程度消費
つまり、単純に1500kcal分の糖質を摂取すれば回復できるわけではなく、食事からの摂取だけでは補いきれないことも多いのです。
【練習中の糖質利用と回復のジレンマ】
トレーニングや合宿が続くと、消費量が増える一方で、回復のために使える糖質が不足します。
1日3食でもグリコーゲンの回復は追いつかない場合がある
回復の前に次の練習が始まってしまうと、慢性的な枯渇状態に陥る可能性も
筋グリコーゲン回復のための実践ポイント
- 運動直後30分以内に糖質を摂取する
→ インスリン感受性が高まり、筋への糖取り込みが促進される - 1日を通して糖質を十分に摂る
→ 特に合宿や連戦の時期には積極的に - 回復には休息も必要
→ 練習を休まずに続けていると、合成より消費が上回り回復できない
まとめ|グリコーゲン代謝を理解してパフォーマンス向上へ
・グリコーゲンは、肝臓と筋肉に貯蔵され、運動時の主要なエネルギー源となる
・分解は素早く行われるが、回復には時間と栄養、休養が不可欠
・トレーニング量が多い時期は、糖質摂取とタイミングに意識を向けよう
グリコーゲン代謝を正しく理解することが、コンディショニングとパフォーマンス維持のカギになります。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
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