【糖代謝の鍵酵素まとめ】ヘキソキナーゼ・ホスホフルクトキナーゼ・PDHの役割とATP産生の流れ
こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。
~糖質がエネルギーになるまでの仕組み~
「食べた糖質が、どうやってエネルギーになるのか?」
この疑問を理解するには、代謝経路とその中の“鍵酵素”の働きを知ることがポイントです。
特に筋肉でのエネルギー供給では、グルコース(血糖)が筋細胞に取り込まれた後、いくつもの段階を経てATPを生み出します。
その過程で重要な働きをするのが「鍵酵素(キーレート・エンザイム)」と呼ばれる酵素群です。
今回は、グルコースの分解〜ミトコンドリアでの完全酸化までの流れと、それぞれの鍵酵素を分かりやすく解説していきます。

筋肉に取り込まれたグルコースの最初の変化
筋肉に取り込まれたグルコースは、すぐにエネルギーとして使われるか、またはグリコーゲンとして貯蔵されます。
そして代謝に使われる際には、まずリン酸が付加され「グルコース6リン酸(G6P)」になります。
この段階で働くのが、ヘキソキナーゼ(hexokinase)という酵素です。
✅ ヘキソキナーゼ:解糖系の“最初の鍵酵素”
この反応によりグルコースは細胞外に戻れなくなり、細胞内で利用される運命になります。
解糖系のもう一つの律速点:ホスホフルクトキナーゼ
グルコース6リン酸は形を変えてフルクトース6リン酸(F6P)となり、さらにホスホフルクトキナーゼ(PFK)の作用でフルクトース1,6-ビスリン酸(F1,6BP)へと変化します。
✅ ホスホフルクトキナーゼ:解糖系の“中心的な鍵酵素”
PFKは解糖系全体のスピードを調整する非常に重要な酵素であり、細胞のエネルギー状態(ATP/ADP比など)によって活性がコントロールされています。
ピルビン酸までの解糖系と生成物
その後、炭素6つの構造が炭素3つの構造(G3PとDHAP)に分かれ、さまざまな反応を経てピルビン酸(pyruvate)になります。
この段階で、グルコース1分子から次のようなものが得られます:
✅ ATP:4つ(ただし2つ消費されているので実質+2)
✅ NADH:2つ
✅ ピルビン酸:2つ
ここまでの反応はすべて細胞質(細胞の中でミトコンドリアの外)で行われます。
PDH:ミトコンドリアへの入り口を開く鍵酵素
ピルビン酸がそのままエネルギーになるわけではありません。
次の段階で、ピルビン酸はピルビン酸脱水素酵素(PDH)の働きによってアセチルCoAになります。
✅ PDH:ミトコンドリア内で糖を完全燃焼させるための“鍵酵素”
この変換によって、ピルビン酸はTCA回路(クエン酸回路)に入ることができます。
TCA回路(クエン酸回路)とは?
アセチルCoAはTCA回路に入り、次のような流れで反応が進みます:
クエン酸
→ cis-アコニット酸
→ イソクエン酸
→ 2-オキソグルタル酸
→ スクシニルCoA
→ コハク酸
→ フマル酸
→ リンゴ酸
→ オキザロ酢酸
→ 再びクエン酸
このように反応が一巡するので「回路(サイクル)」と呼ばれます。
ATPを生み出す最終段階:電子伝達系と酸素の役割
TCA回路そのものではATPはごくわずかしか作られません。
本当にATPを生み出すのは、TCA回路で生じたNADHやFADH2が運ぶ電子を使ってATPを合成する“電子伝達系”です。
この反応には酸素が必要です。
✅ 酸素=電子の受け取り役(エネルギーの供給源ではない)
✅ 酸素があることでATP産生が“止まらずに進む”
つまり、エネルギー(ATP)は糖や脂質を分解することで得られ、酸素はその仕上げを助ける存在なのです。
まとめ|糖代謝に関わる鍵酵素を押さえよう
糖質からATPを生み出すまでには、いくつもの段階と重要な酵素が関わっています。
特に以下の3つの酵素は、糖代謝における“鍵”を握っています:
・ヘキソキナーゼ(Hexokinase):グルコースの取り込み初期反応
・ホスホフルクトキナーゼ(PFK):解糖系の律速酵素
・ピルビン酸脱水素酵素(PDH):ミトコンドリアでの糖の活用を決定する酵素
これらを理解することで、「糖質をどう使い、どこで止まり、どうすれば効率よくエネルギーになるのか」が見えてきます。
運動やスポーツ栄養の現場でも、代謝の流れを“構造的に”理解することは非常に重要です。
ぜひ基本の酵素を押さえて、パフォーマンスアップやコンディショニングにも役立ててみてください。