こんにちは!
トレーナー育成講師の井上裕司です。
肩の不調や動きのクセを改善するには、「鎖骨」と「肩甲骨」の動きを知っておくことが大切です。今回は、これらの骨に関わる筋肉や動きについて、わかりやすく解説していきます。

鎖骨の役割と働き
鎖骨は、体幹と腕をつなぐ大切な橋渡しのような骨です。
この鎖骨には次のような筋肉が付着しています。
・僧帽筋(上部繊維)
・大胸筋(上部繊維)
・三角筋(前部繊維)
・鎖骨下筋
・胸鎖乳突筋
この中でも、僧帽筋上部繊維は胸鎖関節(胸骨と鎖骨の関節)を中心に活動し、鎖骨の動きをコントロールしています。
ただし、鎖骨は単独で動くことはできません。
肩甲骨と連動することで、はじめてスムーズな動きが可能になります。
肩甲骨の重要性
肩甲骨には、実に多くの筋肉が付着しています。代表的なものを紹介します。
・僧帽筋(中部・下部)
・前鋸筋(ぜんきょきん)
・小胸筋
・肩甲挙筋
・菱形筋(小・大)
・三角筋(中部・後部)
・大円筋
・棘上筋・棘下筋
・小円筋・肩甲下筋
・上腕二頭筋
・烏口腕筋
・上腕三頭筋(長頭) など
これだけ多くの筋肉が連携して働くため、肩甲骨の動きは非常に繊細で、同時にとても重要です。
肩甲帯の動きをつくる筋肉たち
ここからは、肩甲骨や鎖骨がどのような筋肉で動かされているのかを、動きごとに整理してみましょう。
① 挙上(肩甲骨を持ち上げる)
僧帽筋上部繊維
→ 鎖骨を引き上げ、肩をすくめるような動き
肩甲挙筋
→ 肩甲骨の上角を引き上げる
菱形筋(小・大)
→ 内側から肩甲骨を持ち上げる
② 下制(肩甲骨を下げる)
鎖骨下筋
小胸筋
僧帽筋下部繊維
→ 肩を下げたり、引き下げるような動き
③ 内旋(肩甲骨が外側から内側に回る)
小胸筋
前鋸筋
→ 肋骨に沿って肩甲骨が回り込むような動き
④ 外旋(肩甲骨が内側から外側に回る)
菱形筋
僧帽筋中部繊維
⑤ 前傾(肩甲骨が前に倒れる)
小胸筋
→ 烏口突起(肩の前側の突起)を下に引く
烏口腕筋・上腕二頭筋短頭
→ 烏口突起に付着し、前傾に影響
⑥ 後傾(肩甲骨が後ろに倒れる)
僧帽筋+前鋸筋の協調動作
→ 肩甲骨の下角を前に引き出すことで後傾
⑦ 上方回旋(肩を上に上げる動き)
僧帽筋+前鋸筋の協調収縮
→ フォースカップルと呼ばれる連携で、腕をスムーズに上げるために不可欠
この「フォースカップル」がうまく働かないと、肩の不調につながることがあります。
⑧ 下方回旋(腕を下げる・元に戻す動き)
小胸筋、肩甲挙筋、菱形筋
→ 肩甲骨を下に回す
三角筋中部繊維
→ 実はこの筋肉も下方回旋に関与します。
三角筋中部繊維が単独で働くと、上腕骨を挙上しつつ肩峰が下がるため、結果的に肩甲骨は下方回旋します。
さらに、静的な姿勢で肩甲骨が過度に上方回旋している場合、この三角筋を適切にトレーニングすることで、バランスを整える可能性もあります。
肩の不調につながる「小胸筋の緊張」
肩こりや肩の痛みの原因の一つに、「小胸筋のスパズム(過度な緊張)」があります。
小胸筋が硬くなると、肩甲骨が前傾しやすくなります。その結果、肩を上げたときに肩甲骨の内旋が増え、後傾が減少してしまいます。
この状態は、肩峰下スペース(肩のすき間)が狭くなるため、上腕骨頭と肩峰がぶつかりやすくなり、インピンジメント(衝突障害)のリスクが高くなります。
予防のポイント
・小胸筋を縮めたままの姿勢を避ける(猫背など)
・肩甲骨の動きを意識して動かす
・ストレッチやセルフケアで柔軟性を保つ
まとめ
鎖骨と肩甲骨は、数多くの筋肉と連携しながら動いています。
特に肩甲骨の安定と滑らかな動きは、肩こりや痛みを予防・改善するうえでとても大切です。
どの筋肉がどの動きに関わっているのかを理解しておくと、トレーニングやストレッチも効果的に行えるようになります。
ぜひ、日常の姿勢や動作に活かしてみてくださいね。
※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。
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