肩の動きを支える「鎖骨」と「肩甲骨」:体幹と上肢をつなぐ連結のメカニズム

解剖学
2026年1月
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こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。

肩関節の自由な動きを支えているのは、腕の付け根だけではありません。体幹と腕を唯一つないでいる「鎖骨」と、その先にある「肩甲骨」の連動こそが、人体最大の可動域を生む鍵となります。

今回は、肩の土台を形作る3つの関節と、その緻密な動きについて解説します。

1. 胸鎖(きょうさ)関節:体幹と腕をつなぐ唯一の接点

胸鎖関節は、鎖骨の内側と胸骨をつなぐ、上肢で唯一の「骨性連結(骨同士の直接的なつながり)」です。

  • 構造の特徴
    形状は「鞍(くら)関節」ですが、内部に関節円板(軟骨のクッション)が存在するため、実際には球関節のように全方向へ動くことができます。
  • 強固なサポート
    前後の胸鎖靭帯や肋鎖(ろくさ)靭帯によって非常に強く固定されており、脱臼しにくい安定した構造をしています。
  • 腕を180°外転させた時の鎖骨の動き
    1. 後退:約30°(後ろへ引ける)
    2. 挙上:約7°(上へ上がる)
    3. 後方回旋:約33°(軸を中心に後ろへ回転する)

2. 肩鎖(けんさ)関節:肩甲骨の微調整を担う

鎖骨の外側と肩甲骨の肩峰(けんぽう)をつなぐ関節です。

  • 構造の特徴
    「平面関節」と呼ばれ、肩甲骨が鎖骨に対して「滑る」ような繊細な動きをします。
  • 腕を180°外転させた時の肩甲骨の動き
    鎖骨の動きに連動して、肩甲骨は鎖骨に対して以下の通り動きます。
    1. 上方回旋:約22°
    2. 後傾(後ろに倒れる):約22°
    3. 内旋(内側にひねる):約15°

3. 肩鎖関節脱臼:スポーツ現場での注意点

コンタクトスポーツや転倒で肩の外側を強く打つと、この関節がダメージを受けます。

  • 分類(重症度)
    • Ⅰ度:肩鎖靭帯の「部分断裂」。
    • Ⅱ度:肩鎖靭帯の「完全断裂」。
    • Ⅲ度:肩鎖靭帯に加え、鎖骨を下に繋ぎ止めている「烏口鎖骨(うこうさこつ)靭帯」まで断裂。鎖骨の端がボコッと浮き上がる「階段状変形」が見られるようになります。

4. 肩甲骨の動き:2つの関節の「足し算」

肩甲骨が胸郭の上を自在に動けるのは、先述した「胸鎖関節」と「肩鎖関節」の両方が同時に動いているからです。

  • 上方回旋(外側が上がる)
    「鎖骨の挙上」+「肩鎖関節での上方回旋」の結果として起こります。
  • 後傾(後ろに倒れる)
    「鎖骨の後方回旋」+「肩鎖関節での後傾」の結果として起こります。
  • 内旋・外旋の切り替わり
    腕を上げる初期には、安定を求めてわずかに「内旋」しますが、挙上角度が90°を超えると、スムーズな動きを確保するために「外旋」へと切り替わります。

5. 肩甲胸郭(きょうかく)関節:機能的な滑走面

厳密には骨同士が連結した関節ではありませんが、肩甲骨が胸郭(肋骨)の上を滑る「機能的な関節」として扱われます。

  • 滑りのメカニズム
    肩甲骨の前面にある「肩甲下筋」と、肋骨側にある「前鋸筋(ぜんきょきん)」、そして「僧帽筋」などの筋肉同士が滑り合うことで、広い可動域を生み出しています。
    ここが癒着したり筋肉が硬くなったりすると、いわゆる「肩甲骨が張り付いた状態」になり、肩全体の動きが著しく制限されます。

まとめ|指導者へのメッセージ

肩の動きが悪いクライアントに対して、肩の付け根(肩甲上腕関節)だけにアプローチしていませんか?

  • 鎖骨はしっかり後方に回旋しているか?
  • 肩甲骨は90°以降で適切に外旋に切り替わっているか?
  • 前鋸筋や肩甲下筋の滑走性は保たれているか?

こうした「土台」の動きを評価できるようになると、指導の質は劇的に向上します。解剖学的な連携を意識して、安全で効果的な運動指導に役立ててください。

※本記事は、新R25に掲載された実績を持ち、トレーナー養成スクールの講師としても活動する井上裕司が監修しています。
健康・栄養・トレーニングに関する一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断や治療を目的としたものではありません。
体調や症状に不安がある方は、必ず医師や専門の医療機関にご相談ください。

【引用文献】

  • Ludewig, P. M., et al. (2009). Three-dimensional clavicular motion during arm elevation: Reliability and descriptive data. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. (鎖骨の3次元的運動データ)
  • Teece, R. M., et al. (2008). Scapular kinematics during arm elevation in hemiparetic and healthy individuals. Clinical Biomechanics.
  • Neumann, D. A. 著「筋骨格系のキネシオロジー」: 胸鎖・肩鎖関節のバイオメカニクスの標準的教科書。
  • Rockwood, C. A., et al. : 肩鎖関節脱臼の分類(Rockwood分類)。

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著者
トレーナー育成講師

運動 × 栄養 × 体づくりの専門家
ブログ記事200本以上を執筆し、
正しい知識をわかりやすく発信中。

保有資格
・NESTA-PFT
・NSCA-CPT

経歴・活動
・Core&Calm(コアカーム)パーソナルジム経営
・パーソナルトレーナー
・リラクゼーションセラピスト
・トレーナー養成スクール講師
・トレーナーアカデミー講師
(年間500回以上の講義)
・転職キャリアアドバイザー

実績
・トレーナー300名以上育成
・SNS総フォロワー数 20,000人以上
・新R25に掲載実績あり
https://r25.jp/articles/928885030159646720

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