脂質代謝経路について解説してみる①
こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。
生理学の基本的な知識は、すべての運動指導者にとって必要な科目です。
少しでも参考になればと思いますので、是非ご覧ください。
脂質は必要
脂質は単なるエネルギー貯蔵組織というだけではなく、なくてはならない役割を多く持っている。
まず、脂肪の特徴として水に溶けないということ。
脂肪は炭素と水素が主体で、酸素が少なく水に溶けない。
そこで脂肪は多くあっても糖質のように浸透圧に影響しないので、貯めるのに適している。
脂肪のエネルギー貯蔵という役割はもちろん重要であり、糖質よりもはるかに多くの貯蔵量がある。
ただし、溶けないので、血管にたまると詰まることにもなる。
脂肪の水に溶けないという特徴は、細胞を取り囲む細胞膜の成分として最適である。
※断熱材や皮下脂肪の衝撃吸収材としても働く。
近年脂肪細胞は、レプチンやアディポネクチンといったホルモンを分泌することも明らかとなっている。
持久的トレーニングを行ったラットの脂肪を別のラットに移植すると、元のラットはトレーニングの効果でグルコースの取り込みが高まっているが、同様に脂肪を移植されたラットでもグルコースの取り込みの向上がしばらくは起こっていたらしい。
このことから脂肪細胞が運動トレーニングに応じて、グルコースの取り込みをよくするような何かしらのホルモンを出しているのでは?と考えられる。
このように脂肪は無駄な組織ではなく、身体に必要で欠くことのできない重要な組織であることが分かる。
脂肪分解
脂肪の代謝経路についてみていきたい。
糖質に比べると脂質の代謝経路は複雑である。
脂肪は中性脂肪の形で存在するが、中性脂肪の基本形は炭素の長い鎖(脂肪酸)3本がグリセロールにくっついた形をとっている。
この炭素の鎖は炭素数が偶数で16か18であることが多い。
脂肪が代謝されるには、まず脂肪細胞の中性脂肪がグリセロールと脂肪酸に分解される。このことを脂肪分解という。
脂肪分解は例えば、カフェイン摂取で高まることが知られている。運動すれば脂肪分解は高まる。また摂取することで脂肪分解が高まると宣伝する商品は他にもたくさんある。
ただし、脂肪分解を高めればそれで脂肪の代謝全体が高まるかというと、簡単には言い切れない。
安静時には脂肪分解量は脂肪利用量よりも多く、分解されても利用されない脂肪酸は中性脂肪に戻るとされている。
さらに脂肪の代謝経路はこの後さらに続き、いろんな要因による影響を受ける。
したがって、脂肪分解が脂質代謝における1つの決定因子であることは事実ではあるが、一方で脂肪分解だけ高めても必ず脂肪の利用量が上がるとは断定できない。
また脂肪は脂肪細胞にだけ蓄えられているのではなく、筋肉にもある。
そうなると、脂肪細胞から脂肪分解された脂肪酸でなく、筋肉内だけでも脂肪利用がかなり起きている可能性があることになる。
運動中に多くの筋中中性脂肪が使われていると考えている人もいれば、必ずしも運動時とくに強度の高い運動時には多くは使われていないと考える人もいるので、よくわからない…
これは筋中の中性脂肪が強度の低い運動時を中心に、運動時に利用される脂肪であることは間違いないが、その重要性はまだよくわかっていない。
筋中の中性脂肪は、ホルモン感受性リパーゼによって分解されて脂肪酸となる。