【腰痛の原因と安定性の関係】多裂筋・腹横筋が果たす重要な役割とは?
こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上裕司です。
このブログは、パーソナルトレーナー・医療従事者・専門的に学びたい方を対象とした内容を発信しています。
腰痛は多くの人が経験する症状ですが、その原因は実にさまざまです。
中でも、画像検査などで明確な異常が見つからない腰痛は「非特異的腰痛」と呼ばれ、全体の約85%を占めるとされています。
この記事では、非特異的腰痛のメカニズムや、それに深く関わる「腰椎の安定性」「多裂筋」「腹横筋」についてわかりやすく解説します。

非特異的腰痛とは?
「非特異的腰痛」とは、ヘルニアや骨折、感染症など明らかな病変が見られない腰痛のことです。
このような腰痛は、腰周囲の組織にかかる慢性的なストレスによって引き起こされると考えられています。
具体的には次のような組織にストレスがかかります:
・椎間板(ついかんばん)
・椎間関節(ついかんかんせつ)
・靭帯(じんたい)
・背部の筋肉(とくに多裂筋や脊柱起立筋)
これらのストレスの背景には、「腰椎の安定性の低下」が大きく関係しています。
腰椎の安定性とは?鍵を握る2つの筋肉
私たちの腰は、骨や靭帯だけで支えられているわけではありません。
実は、筋肉によって動きながら安定性を保っているのです。
その中でも特に重要なのが以下の2つの筋肉です:
① 多裂筋(たれつきん)
背骨のすぐ近くにある深層筋で、腰椎を縦方向からしっかり圧迫して支える役割があります。
モーメントアーム(回転のてこ)こそ小さいですが、腰を安定させる縁の下の力持ちとも言えます。
② 腹横筋(ふくおうきん)
お腹の一番深い層にある筋肉で、天然のコルセットとも呼ばれます。
腹横筋が働くと腹圧が高まり、胸腰筋膜が緊張し、腰椎の動きを安定化させます。
ただし、近年のシミュレーション研究では「腹横筋の安定性への寄与は限定的」とする見解もあり、現在も議論が続いています。
なぜ筋肉の働きが低下するのか?
多裂筋や腹横筋の働きが低下する要因は、大きく2つに分けられます。
・筋骨格系の要因:筋肉の萎縮や脂肪の沈着(いわゆる筋肉の“質”の低下)
・神経系の要因:動作中に筋肉がうまく働かなくなる(筋活動の不全)
これらの要因が複合的に関与することで、腰椎の安定性が損なわれ、結果として腰痛が慢性化するリスクが高まります。
腰痛の評価:どこが痛いかがカギ
腰痛の原因を探るうえで、画像検査(CTやMRI)だけに頼るのではなく、痛みの場所や特徴の評価も重要です。
● 腰椎の真上が痛い場合
→ 椎間板や関節、靭帯、骨への負担が原因と考えられます。
● 腰の側方ややや離れた部分が痛い場合
→ 背部の筋肉(多裂筋や脊柱起立筋)にストレスがかかっている可能性があります。
実際に圧痛(押すと痛い)があるかどうかを触診で確認することが有効です。
● 腰痛と同時に脚にも痛みがある場合
→ 椎間板ヘルニア、すべり症、脊柱管狭窄症などの神経圧迫が関係する疾患が疑われます。
まとめ:腰痛予防のためにできること
非特異的腰痛は、目に見える異常がないからこそ、筋肉や神経の働きの評価が重要です。
特に「多裂筋」や「腹横筋」は、腰椎の安定性に深く関与しており、普段からこれらの筋肉を正しく使える身体づくりが腰痛予防につながるといえるでしょう。
「原因がわからない腰痛だから…」とあきらめず、自分の体の使い方や筋肉の状態に目を向けてみることが大切です。
※本記事は、NSCA-CPT(全米ストレングス&コンディショニング協会認定パーソナルトレーナー)の資格を有する講師によって、科学的根拠と実務経験に基づいて執筆されています。