肩関節拘縮と投球障害の関係|しなりと投球フォームが肩に与える影響とは?

こんにちは!
パーソナルトレーナーの井上です。

解剖学の基本的な知識は、すべての運動指導者にとって必要な科目です。

少しでも参考になればと思いますので、是非ご覧ください。

肩関節拘縮とは?

肩関節拘縮(こうしゅく)とは、肩関節まわりの組織が硬くなってしまい、関節の動きが制限された状態を指します。

この拘縮があると、肩の関節内での動きがうまくいかず、上腕骨の骨頭(肩の関節を構成する骨の一部)がずれてしまうことがあります。
特に、他人が肩を動かす「他動運動」の最終域では、この骨頭のズレ(変位)が顕著になります。

自分で動かしたときの動きにも影響

自分自身で肩を動かす「自動運動」の最終域では、関節の可動域が狭くなっていると、骨頭のズレとの関係がより強く見られます。

たとえば:

水平屈曲(腕を前に持っていく動き)に制限があると、骨頭は上方にズレやすくなり、後方へのズレが減少します。

水平伸展(腕を後ろに引く動き)がうまくできないと、肩峰(けんぽう)という骨の前部分が腱板に近づきすぎてしまい、インピンジメント(挟み込み)が起きやすくなります。

拘縮があると肩甲骨の動きにも変化が

肩に拘縮がある場合、肩甲骨の動きが普段と違ってしまうことがあります。

代表的なのが、肩甲骨の「上方回旋」が増えることです。
これは、肩関節(肩甲上腕関節)の可動域が狭くなった分を、肩甲骨の動きで無理に補おうとする代償動作だと考えられます。

投球障害のメカニズム

繰り返しの投球動作によって、肩関節の安定性を保っている靭帯や関節包などに小さなダメージが積み重なることがあります。
このダメージがある一定のレベル(閾値)を超えると、肩の痛み(投球障害)が発生します。

投球時に肩にかかる力は?

投球動作中、肩には非常に大きな力がかかっています。

肩の前方への剪断(せんだん)力:

プロ投手:約390ニュートン(約40kg相当の力)

小中学生でも:約210ニュートン

ボールを離した直後の肩関節への圧迫力:

プロ投手:約1070ニュートン(100kg超の力)

小中学生:約480ニュートン

これだけの負荷が肩にかかっていれば、繰り返すことで障害が生じても不思議ではありません。

投球時のしなり(TER)とフォームの違い

投球フォームには、シングルプレーンとダブルプレーンという2つの型があるとされます。

✅ シングルプレーン(理想的な投球フォーム)

上腕と前腕が同じ平面上でスムーズに動くフォーム。

肩甲骨の後傾、胸椎の伸展、肩の外旋がうまく連動し、「しなり(TER)」が十分に出る。

この場合、投球時の肩の負担が最小限に抑えられるとされます。

❌ ダブルプレーン(障害リスクが高いフォーム)

上腕と前腕が別々の軌道を描くフォーム。

しなりが不十分で、肩の内旋トルクや肘への負担が増えやすく、前方の靭帯や関節包に微細な損傷が生じやすくなる。

結果として、肩の前方不安定性が起こるようになります。

前方不安定性とインピンジメントの関係

前方不安定性があると、加速期の動作でさらに外旋や水平伸展が過剰になりやすくなります。

このとき、後方の関節唇と腱板が接触しやすくなるため、「インターナルインピンジメント(肩の奥での挟み込み)」が発生しやすくなります。

つまり、フォームの崩れ → 前方不安定性 → インピンジメント → 投球障害
という悪循環が生まれる可能性があるのです。

まとめ

肩関節拘縮があると、骨のズレや肩甲骨の異常運動が起き、インピンジメントのリスクが増加します。

投球動作では、肩に非常に大きな力が加わっており、小さな損傷が積み重なることで障害が発生します。

正しい投球フォーム(シングルプレーン)と十分なしなり(TER)の確保が、肩を守る鍵になります。

フォームの乱れや筋肉・靭帯のタイトネスがあると、ダブルプレーン化し、インピンジメントや前方不安定性を招くおそれがあります。

💡こんな人におすすめの記事

・投球時に肩の痛みを感じている方

・子どもの投球障害を心配している親御さん

・野球指導者・トレーナー・理学療法士の方

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